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第四章 旅路―赤龍討伐―編
第四十五話 「想い、重ねて」
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「――――ハッ!?」
気絶してたのか?
何があった?
確か、龍にトドメを刺して……
「よかった、意識が戻りましたね……どこか異変はありますか?」
「あっ、シーリアさん……いえ、特には。それより――」
咆哮と打撃音が轟く。
目を向けると、そこには。
身体中から熱気を立ち上げながら大量の血を流し、もうじきその命をも燃やし尽くさんとする龍。
片や、右角を折られ度重なる負傷により限界を迎えても尚立ち上がり続ける山羊の王。
そして、理性という枷から解き放たれた荒れ狂いし暴魔。
「父、さん……?」
何だアレは?
どうして、父さんが暴狂魔に?
「ライル君、俺から説明しよう」
「イラルドさん……」
神妙な面持ちでイラルドが口を開く。
語るイラルドの鎧は傷だらけで、ところどころが強く殴りつけられたかの様に凹んでしまっている。
告げられたのは、グウェスが暴狂魔に陥った経緯。
俺を案じた結果ああなってしまったこと、暴走直後は付近のイラルドやレギンにまで襲いかかったこと、その後はすぐに龍に向かって攻撃を開始したこと。
「ここまで十分と経っていないだろう。
赤龍は理由は不明だが『龍気』を発現してしまった。
特性は熱、近寄るだけで焼けてしまう程の高熱だが、あの傷ではもう長くない……
放っておけば済む話ではあるんだが――」
イラルドがグウェスへと視線を送る。
その瞳に宿るのは憐れみか、哀愁か、それとも。
「グウェスさんがああなってしまった以上、なんとしても連れ戻さなくてはならない。
全員無事に帰るために、な」
「父が……すみません……」
「気にすんなライ坊。闘魔族がどんなもんかってくらい、俺達も分かってる」
「レギンさん、その怪我!」
「あ? 転んだだけだっつの。シーリア、イラルドのダンナの後は俺も頼むぜ!」
俺を励ますレギンの両腕には大きな痣が何個も出来ていた。
理由は恐らく……
「皆は待ってて下さい……俺だけで、父さんを連れ戻します」
「バカを言うな!」
「ライ坊、テメェ……!」
「暴狂魔を解くには、無理矢理にでも意識を奪うしかありません。
俺がやります」
制止は聞かずに駆け出す。
これはもう、俺と、グウェスの問題だ。
誰も巻き込む訳にはいかない。
もう、誰も失う訳には。
「待ってろ……今ッ!」
視界の先では三者が入り乱れてはいるが、最も場を掻き回しているのはグウェスであった。
暴狂魔状態のグウェスの膂力は正に超人的で、殴りつければ龍が怯み、サンガクの踏みつけは受け止めてしまう程だ。
正直言って、あの状態のグウェスに襲われて無事なイラルドとレギンが信じられない。
淡い期待が湧いてしまう。
グウェスはもしかしたら、二人には加減していたのではないかと。
それは、暴狂魔に少しでも理性が飲まれていない事を意味する。
「必ず……! 俺が、必ず取り戻す!」
熱気が増す。
文字通り肌が焼ける程の高熱。
グウェスが龍に触れるほどの近距離で活動出来ているのも、暴狂魔による魔力の増大、身体強化のお陰だろう。
ならばと、こちらも暴狂魔に入る。
感じる温度は格段に低くなるが、それでもサウナに近い暑さだ。
俺の接近に、サンガクが気づく。
邪魔者は要らぬとばかりに、後ろ脚で踏みつけを行ってくる。
「クソッ! こんなときに!」
必死に避けるが、こんな事で体力を消耗してはいられない。
一刻も早くグウェスを!
しかし、再度の踏みつけ。
「ドノア、横だッ!」
「ハッ!」
背後から飛び出した二人の騎士が、それぞれに縦一文字、横一文字の剣閃を放つ。
「「騎士聖十字ッ!!」」
斬撃には魔力が乗せられており、十字を刻むことでより一層勢いを増してサンガクの蹄を穿つ。
「「二兎一刃孤月狩りッ!!」」
衝撃によりよろけるサンガクの横っ腹を、ハルシィとフィネスが駆け上がり斬りつける。
そこは、先刻の龍との闘いにより負傷していた箇所。
傷を裂かれながら痛みに悶え、サンガクはよろよろと後退していく。
「みんな!?」
「一人だけ無茶させるわけねぇだろ。
そら、これ使いな」
「これ……!」
「ベルトで無理矢理締めればお前でも履けるだろ。
使い方は魔力を押し出すように流し込め。後は感覚だ!」
「……、ハハっ! ――行ってきます!」
「「行って来い!!」」
皆が背中を押してくれる。
皆が、道を開いてくれる。
あとは邪魔な龍だけだ。
ヤツを先にどうにかしないと、グウェスどころではない。
大きく息を吸う。
「とうさあぁーーーーん!!」
呼ばれて、グウェスがこちらを振り返る。
怒りに狂い、我を失いながらも、確かに俺の声は届いている。
なら、分かるだろ?
そいつは邪魔だよな。
もう一度駆け出す。
狙うは一点。
黒角の杖が突き刺さったままの、大きく開いた首元の傷口。
ここだッ!
残りの十数メートルを、風飛びの靴に魔力を込めて一気に突き抜ける。
グウェスも俺に並ぶ様に横を走る。
龍の前足が襲い来るが、そんなことには見向きもしない。
何故なら――
バガアァァン!!!!
俺の背後、ずっと後ろから高速で飛来した魔弾が、龍の前足を弾いた。
俺には信頼できる師が付いている。
「さぁ、合わせてよ!」
「イーラ、スレッジ……ダッタ、か?」
「あっ――」
いや集中しろっ!!
魔力を右腕に込めろ!
今までと同じじゃ足りない、もっと、もっと!!
一点集中! 超えろ! 一点極中!!
「「怒り狂うッ!!」」
重なる。
コンマ一秒のズレも無く、完璧に。
親子の想いが。
「「鉄槌ッ!!」」
気絶してたのか?
何があった?
確か、龍にトドメを刺して……
「よかった、意識が戻りましたね……どこか異変はありますか?」
「あっ、シーリアさん……いえ、特には。それより――」
咆哮と打撃音が轟く。
目を向けると、そこには。
身体中から熱気を立ち上げながら大量の血を流し、もうじきその命をも燃やし尽くさんとする龍。
片や、右角を折られ度重なる負傷により限界を迎えても尚立ち上がり続ける山羊の王。
そして、理性という枷から解き放たれた荒れ狂いし暴魔。
「父、さん……?」
何だアレは?
どうして、父さんが暴狂魔に?
「ライル君、俺から説明しよう」
「イラルドさん……」
神妙な面持ちでイラルドが口を開く。
語るイラルドの鎧は傷だらけで、ところどころが強く殴りつけられたかの様に凹んでしまっている。
告げられたのは、グウェスが暴狂魔に陥った経緯。
俺を案じた結果ああなってしまったこと、暴走直後は付近のイラルドやレギンにまで襲いかかったこと、その後はすぐに龍に向かって攻撃を開始したこと。
「ここまで十分と経っていないだろう。
赤龍は理由は不明だが『龍気』を発現してしまった。
特性は熱、近寄るだけで焼けてしまう程の高熱だが、あの傷ではもう長くない……
放っておけば済む話ではあるんだが――」
イラルドがグウェスへと視線を送る。
その瞳に宿るのは憐れみか、哀愁か、それとも。
「グウェスさんがああなってしまった以上、なんとしても連れ戻さなくてはならない。
全員無事に帰るために、な」
「父が……すみません……」
「気にすんなライ坊。闘魔族がどんなもんかってくらい、俺達も分かってる」
「レギンさん、その怪我!」
「あ? 転んだだけだっつの。シーリア、イラルドのダンナの後は俺も頼むぜ!」
俺を励ますレギンの両腕には大きな痣が何個も出来ていた。
理由は恐らく……
「皆は待ってて下さい……俺だけで、父さんを連れ戻します」
「バカを言うな!」
「ライ坊、テメェ……!」
「暴狂魔を解くには、無理矢理にでも意識を奪うしかありません。
俺がやります」
制止は聞かずに駆け出す。
これはもう、俺と、グウェスの問題だ。
誰も巻き込む訳にはいかない。
もう、誰も失う訳には。
「待ってろ……今ッ!」
視界の先では三者が入り乱れてはいるが、最も場を掻き回しているのはグウェスであった。
暴狂魔状態のグウェスの膂力は正に超人的で、殴りつければ龍が怯み、サンガクの踏みつけは受け止めてしまう程だ。
正直言って、あの状態のグウェスに襲われて無事なイラルドとレギンが信じられない。
淡い期待が湧いてしまう。
グウェスはもしかしたら、二人には加減していたのではないかと。
それは、暴狂魔に少しでも理性が飲まれていない事を意味する。
「必ず……! 俺が、必ず取り戻す!」
熱気が増す。
文字通り肌が焼ける程の高熱。
グウェスが龍に触れるほどの近距離で活動出来ているのも、暴狂魔による魔力の増大、身体強化のお陰だろう。
ならばと、こちらも暴狂魔に入る。
感じる温度は格段に低くなるが、それでもサウナに近い暑さだ。
俺の接近に、サンガクが気づく。
邪魔者は要らぬとばかりに、後ろ脚で踏みつけを行ってくる。
「クソッ! こんなときに!」
必死に避けるが、こんな事で体力を消耗してはいられない。
一刻も早くグウェスを!
しかし、再度の踏みつけ。
「ドノア、横だッ!」
「ハッ!」
背後から飛び出した二人の騎士が、それぞれに縦一文字、横一文字の剣閃を放つ。
「「騎士聖十字ッ!!」」
斬撃には魔力が乗せられており、十字を刻むことでより一層勢いを増してサンガクの蹄を穿つ。
「「二兎一刃孤月狩りッ!!」」
衝撃によりよろけるサンガクの横っ腹を、ハルシィとフィネスが駆け上がり斬りつける。
そこは、先刻の龍との闘いにより負傷していた箇所。
傷を裂かれながら痛みに悶え、サンガクはよろよろと後退していく。
「みんな!?」
「一人だけ無茶させるわけねぇだろ。
そら、これ使いな」
「これ……!」
「ベルトで無理矢理締めればお前でも履けるだろ。
使い方は魔力を押し出すように流し込め。後は感覚だ!」
「……、ハハっ! ――行ってきます!」
「「行って来い!!」」
皆が背中を押してくれる。
皆が、道を開いてくれる。
あとは邪魔な龍だけだ。
ヤツを先にどうにかしないと、グウェスどころではない。
大きく息を吸う。
「とうさあぁーーーーん!!」
呼ばれて、グウェスがこちらを振り返る。
怒りに狂い、我を失いながらも、確かに俺の声は届いている。
なら、分かるだろ?
そいつは邪魔だよな。
もう一度駆け出す。
狙うは一点。
黒角の杖が突き刺さったままの、大きく開いた首元の傷口。
ここだッ!
残りの十数メートルを、風飛びの靴に魔力を込めて一気に突き抜ける。
グウェスも俺に並ぶ様に横を走る。
龍の前足が襲い来るが、そんなことには見向きもしない。
何故なら――
バガアァァン!!!!
俺の背後、ずっと後ろから高速で飛来した魔弾が、龍の前足を弾いた。
俺には信頼できる師が付いている。
「さぁ、合わせてよ!」
「イーラ、スレッジ……ダッタ、か?」
「あっ――」
いや集中しろっ!!
魔力を右腕に込めろ!
今までと同じじゃ足りない、もっと、もっと!!
一点集中! 超えろ! 一点極中!!
「「怒り狂うッ!!」」
重なる。
コンマ一秒のズレも無く、完璧に。
親子の想いが。
「「鉄槌ッ!!」」
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