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第2話 ニート誕生
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「なるほどなるほど。死んで魂だけの存在になっていた俺に君が体をくれたのか」
「最初からそう言っていたのだけどね」
俺とリティスリティアは草原で座って話を続けていた。
どうやら会社という名の戦場で戦い続けた俺は心身共に取り返しのつかないダメージを受けていたようである。
まさかあのまま死んでしまうとは……。
そして、そんな可哀想な俺に体を与えて転生の機会を与えてくれたのが目の前に座る絶世の美少女リティスリティア。
美少女な上に性格までいいとは反則レベルだ。
あの禿げ上がった上に頭のアレなクソ上司も見習ってほしいものだ。
「いや、君、最初は美少女なのにイカレてる残念な女だ。と思っていたよね?」
そう言ってリティスリティアは頬を小さく膨らませた。
オマケに心まで読むことができるらしい。なんたる無双少女。
「それでティアちゃん、俺を転生させてくれると言ったけどその件で頼みがあるんだ」
「心の声ダダ洩れだけど一応聞くよ」
流石はティアちゃん。なんでもお見通しのようだ。
「俺を一生働かなくてもいいそんな夢の世界に転生させてくれないか?」
欲望をそのまま口にした俺をリティスリティアは残念そうなものを見るような目で見る。
「残念だけどそんな世界は存在しないよ」
「なに! そんな馬鹿な!」
「そんな馬鹿な! は君の頭の方だよ。……でも君の力なら豪遊生活ってのも夢じゃないかもしれないよ」
「いや、そういうのはもういいから。とにかく俺は絶対に働きたくないんだ」
よく考えてみて欲しい。
俺は文字通り死ぬまで働き抜いた。
もう一生分の労働は済ませたはずなのだ。
これからは一生何もしないでゆっくりと暮らすそんな生活を夢見て何が悪いというのだろうか。
そんな俺の願いとは裏腹にリティスリティアは非常な宣告を俺に下した。
「まぁ君の気持ちも分からないでもないけど残念ながら君がこれから行くところは決まっているんだよね。これが」
そう言ってリティスリティアは立ち上がると1つの魔法を行使した。
「異界転移門!」
リティスリティアの発声とともに俺の視線の先に虹色の円形の靄のようなものが形成され、リティスリティアは俺を見つめた。
「この先に通じる世界は魔人と人間が戦いと繰り広げている世界。ここで君には勇者になってもらいたいんだ」
「絶対嫌だ」
「……努力次第じゃ名誉と君の大好きなお金がいくらでも手にできる世界だよ。ワクワクしない?」
「全然しない。俺が好きなのは労せず得られる金であって労働の対価として得られる金ではない。あと名誉なんてクソの役にも立たない物はこれからの俺には必要ない」
俺は過労死したと知ったついさっき誓いを立てたのだ。
絶対にもう働かないと。
だからいくら金をもらえようがもう会社になど勤めないし、もちろん魔王退治など絶対にやらない。
「だから君が無労働で生活できる夢の世界に送ってくれるまで俺はここを動かない」
そう俺が不退転の決意を固めたその時、背中から凄まじい衝撃を受けた。
「いいからさっさと行けぷよ!」
俺が吹き飛ばされながらも後ろを振り返るとアクアエレメントと呼ばれていたスライムがそう叫びながらこっちを見ているのが見えた。
(クソッ! あのクソスライムが! ……ってちょっと待て! この先は!)
凄い勢いで吹き飛ばされた先にあるのは今しがたリティスリティアが作り出した異界転移門。
必死に止まろうと試みるが、そもそも現在、俺の足は地についていないので抵抗らしい抵抗もできないまま俺は異界転移門の中へと飛び込んでいくしかないのだった。
「じゃあね、名も知らない勇者。君があの世界で活躍するのをこの地で楽しみにしておくよ」
そんな異世界転生モノとしてはありきたりなセリフがリティスリティアの俺が聞いた最後の言葉になった。
そんな事感じで異世界へと飛ばされた俺には頼る人もいなければ引き籠る家もあるはずもなかった。
絶対に働かないと誓いを立てたばかりの俺だったがとりあえず嫌でも働くしかなかった。仕方なく初めて立ち寄った町でリティスリティアの言う通り冒険者となり、3日間にもわたる終わりの見えない労働に耐え続けたのである。
そしてリティスリティアが期待していた通り俺には戦士としての才能があったのか周りの冒険者から「あいつ、もしかしてやばくね?」と噂が立ち始めていた。
そんな冒険者生活4日目に事件は起きる。
突如として魔人達による人間界侵攻作戦始まったのである。
人類側の苦戦が予想された戦いだったが、すぐにその戦いは集結する事となる。
理由は簡単。
先鋒隊として自信満々でやってきた魔王軍四天王の一人を俺がさっくりと倒してしまったのである。
初戦でボロ負けして怖気づいたのかそれから数日間はぱたりと魔人の活動は収まった。
そして魔人達による人間界侵攻の数日後、王都に呼ばれた俺は王から直々に莫大な報奨金を与えられた。
その後も四天王討伐祝勝パレードを行おうと提案されたり、王国騎士団長になってくれないかと勧誘を受けたりもしたが俺はその全てを断った。
なぜなら目立ちたくなかったからである。
俺が欲しかったのは名誉などいう生きる上でまったくクソの役にも立たないものではなくニート暮らしに必要な金だったのだ。
そんな俺に王は「殊勝な奴じゃ。そうか、お前は冒険者として生きる事を決めているのじゃな」と意味不明な事を言ったが、もちろんその後に会った冒険者協会の偉い人に言われた勇者昇格の打診もすべて断った。
そして莫大なニート支度金を得た俺は夢のニート生活を送るため、誰にも気づかれないように王都を脱して、今住む超田舎村の外れに引っ越したのだった。
「最初からそう言っていたのだけどね」
俺とリティスリティアは草原で座って話を続けていた。
どうやら会社という名の戦場で戦い続けた俺は心身共に取り返しのつかないダメージを受けていたようである。
まさかあのまま死んでしまうとは……。
そして、そんな可哀想な俺に体を与えて転生の機会を与えてくれたのが目の前に座る絶世の美少女リティスリティア。
美少女な上に性格までいいとは反則レベルだ。
あの禿げ上がった上に頭のアレなクソ上司も見習ってほしいものだ。
「いや、君、最初は美少女なのにイカレてる残念な女だ。と思っていたよね?」
そう言ってリティスリティアは頬を小さく膨らませた。
オマケに心まで読むことができるらしい。なんたる無双少女。
「それでティアちゃん、俺を転生させてくれると言ったけどその件で頼みがあるんだ」
「心の声ダダ洩れだけど一応聞くよ」
流石はティアちゃん。なんでもお見通しのようだ。
「俺を一生働かなくてもいいそんな夢の世界に転生させてくれないか?」
欲望をそのまま口にした俺をリティスリティアは残念そうなものを見るような目で見る。
「残念だけどそんな世界は存在しないよ」
「なに! そんな馬鹿な!」
「そんな馬鹿な! は君の頭の方だよ。……でも君の力なら豪遊生活ってのも夢じゃないかもしれないよ」
「いや、そういうのはもういいから。とにかく俺は絶対に働きたくないんだ」
よく考えてみて欲しい。
俺は文字通り死ぬまで働き抜いた。
もう一生分の労働は済ませたはずなのだ。
これからは一生何もしないでゆっくりと暮らすそんな生活を夢見て何が悪いというのだろうか。
そんな俺の願いとは裏腹にリティスリティアは非常な宣告を俺に下した。
「まぁ君の気持ちも分からないでもないけど残念ながら君がこれから行くところは決まっているんだよね。これが」
そう言ってリティスリティアは立ち上がると1つの魔法を行使した。
「異界転移門!」
リティスリティアの発声とともに俺の視線の先に虹色の円形の靄のようなものが形成され、リティスリティアは俺を見つめた。
「この先に通じる世界は魔人と人間が戦いと繰り広げている世界。ここで君には勇者になってもらいたいんだ」
「絶対嫌だ」
「……努力次第じゃ名誉と君の大好きなお金がいくらでも手にできる世界だよ。ワクワクしない?」
「全然しない。俺が好きなのは労せず得られる金であって労働の対価として得られる金ではない。あと名誉なんてクソの役にも立たない物はこれからの俺には必要ない」
俺は過労死したと知ったついさっき誓いを立てたのだ。
絶対にもう働かないと。
だからいくら金をもらえようがもう会社になど勤めないし、もちろん魔王退治など絶対にやらない。
「だから君が無労働で生活できる夢の世界に送ってくれるまで俺はここを動かない」
そう俺が不退転の決意を固めたその時、背中から凄まじい衝撃を受けた。
「いいからさっさと行けぷよ!」
俺が吹き飛ばされながらも後ろを振り返るとアクアエレメントと呼ばれていたスライムがそう叫びながらこっちを見ているのが見えた。
(クソッ! あのクソスライムが! ……ってちょっと待て! この先は!)
凄い勢いで吹き飛ばされた先にあるのは今しがたリティスリティアが作り出した異界転移門。
必死に止まろうと試みるが、そもそも現在、俺の足は地についていないので抵抗らしい抵抗もできないまま俺は異界転移門の中へと飛び込んでいくしかないのだった。
「じゃあね、名も知らない勇者。君があの世界で活躍するのをこの地で楽しみにしておくよ」
そんな異世界転生モノとしてはありきたりなセリフがリティスリティアの俺が聞いた最後の言葉になった。
そんな事感じで異世界へと飛ばされた俺には頼る人もいなければ引き籠る家もあるはずもなかった。
絶対に働かないと誓いを立てたばかりの俺だったがとりあえず嫌でも働くしかなかった。仕方なく初めて立ち寄った町でリティスリティアの言う通り冒険者となり、3日間にもわたる終わりの見えない労働に耐え続けたのである。
そしてリティスリティアが期待していた通り俺には戦士としての才能があったのか周りの冒険者から「あいつ、もしかしてやばくね?」と噂が立ち始めていた。
そんな冒険者生活4日目に事件は起きる。
突如として魔人達による人間界侵攻作戦始まったのである。
人類側の苦戦が予想された戦いだったが、すぐにその戦いは集結する事となる。
理由は簡単。
先鋒隊として自信満々でやってきた魔王軍四天王の一人を俺がさっくりと倒してしまったのである。
初戦でボロ負けして怖気づいたのかそれから数日間はぱたりと魔人の活動は収まった。
そして魔人達による人間界侵攻の数日後、王都に呼ばれた俺は王から直々に莫大な報奨金を与えられた。
その後も四天王討伐祝勝パレードを行おうと提案されたり、王国騎士団長になってくれないかと勧誘を受けたりもしたが俺はその全てを断った。
なぜなら目立ちたくなかったからである。
俺が欲しかったのは名誉などいう生きる上でまったくクソの役にも立たないものではなくニート暮らしに必要な金だったのだ。
そんな俺に王は「殊勝な奴じゃ。そうか、お前は冒険者として生きる事を決めているのじゃな」と意味不明な事を言ったが、もちろんその後に会った冒険者協会の偉い人に言われた勇者昇格の打診もすべて断った。
そして莫大なニート支度金を得た俺は夢のニート生活を送るため、誰にも気づかれないように王都を脱して、今住む超田舎村の外れに引っ越したのだった。
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