灰に堕ちるその日まで

こりゃりゃ

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序章

灰に沈む声

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 ──煙草に火を点けると、その煙を浅く肺に吸い込んだ。

 薄暗い喫煙所。コンクリの壁、換気の悪い天井。灰皿の中には、消えかけた言い訳が幾つも転がっていた。

 「また新しいのが来るって?」

 同僚の小川が口を開いた。灰色のスーツに、よれたネクタイ。声には疲れと興味の半々が混ざっていた。

 鴉は黙ったまま煙を吸い込む。

 「軍上がりだってさ。若いけど、素性はガチガチに機密。上の思惑、相当強いみたいだ」

 「へえ」

 他人事のように応える鴉の口元は笑っていたが、目だけはどこか遠くを見ていた。

 「お前、また潰すなよ。前のやつ、お前のその態度に耐えかねて、三ヶ月で転属だ」

 「俺は何もしてねぇよ。ただ、あいつらが勝手に潰れていくだけだ」

 小川は鼻で笑い、缶コーヒーを煽った。

 「お前なぁ、もうちょっとバディってもん大事にしろよ?」

 「わかってるって。次はもうちょっと可愛がってやるよ」

 静かに、タバコの灰が落ちた。

 「そろそろ行くか。例の新入り、来る頃だろ」

 「また“バディ”か……気が重いな」

 煙草を指で弾いて、鴉は立ち上がった。

 「ま、どうせまた、俺には似合わない肩書きだ」
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