灰に堕ちるその日まで

こりゃりゃ

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静寂にしのぶ影

裏道に沈む声

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翌朝。
空は薄く曇り、街全体がくすんで見えた。

蓮は、公安のデータベースで押収品の処理履歴を洗っていた。
その中に、ある不自然な空白を見つけたのだ。

「保管室Cから消えた帳簿……記録上は“処分済み”か」

処分担当者の名前を確認する。
見慣れた名前。
──真壁。

蓮は上着を羽織り、PCを閉じた。

(データが消されているなら、紙か現場で拾うしかない)

向かったのは、半年前に公安の強制捜査が入った旧倉庫。
人身売買の拠点と目されていたが、途中で証拠不十分となり処理が中断されていた場所だった。

倉庫は既に封鎖されていたが、裏手の柵は錆び、鍵は切られていた。
誰かが、最近もここに出入りしている──。

中は埃とカビの匂い。
だが、そこに“新しい足跡”があった。

「やっぱり……まだ何かあるな」

蓮は薄暗い通路を奥へ進む。
崩れた壁の向こう、鉄製のキャビネットをこじ開けると──

そこには、焼け焦げかけた一冊の帳簿があった。

「……消されたはずの、証拠」

ページをめくると、受け渡し日時、関係者の符号。

「……内通者が、関わってる」

その瞬間、背後でわずかに床が軋む音。

「──誰かいるのか」

銃に手を伸ばしかけた瞬間、何者かの影が通路の先を横切った。

蓮は息を殺す。

まずは持ち帰る。

帳簿を内ポケットに収め、音も立てずに後退。
そのまま倉庫を離れ、路地の奥に身をひそめる。

相談していたら、鴉はついてきただろう。無理してでも

……けどこれは、俺の選択だ。

静かな決意のもと、蓮は情報の一片を握りしめたまま、再び夜の街へと身を隠すように溶けていった。
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