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交差点の記憶
共有される影
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本部の作戦室。夜の静けさの中、モニターにだけ青白い光が揺れている。
鴉は、壁に背を預けながら、無言で資料ファイルを蓮に差し出した。中には、今まで公安でも扱われてこなかった“未登録の”資料が並んでいる。
「…宵宮の拠点、動き、接触者一覧。それと、あいつが裏でつながってる可能性のある組織名」
「おい、それ…どこから手に入れた?」
「真壁との“取引”。俺の居場所と引き換えに、情報を出させた。…本当はお前には黙ってるつもりだった。巻き込む気は、なかったから」
蓮は資料をざっと目を通してから、鴉をまっすぐ見た。
「…バカか、お前は」
「……」
「巻き込む気はなかった? そんなもん、もうとっくに巻き込まれてんだよ。オレはお前のバディだろ」
鴉は一瞬だけ口をつぐみ、静かに目を伏せた。
「宵宮は今、港の外れに新しい仮拠点を構えてる。そこには元傭兵、元情報屋、国家クラスのハッカー…様々な裏の人間が集まってる。“無差別ではない正義”を掲げてな」
「無差別じゃない正義、か…」
蓮は眉をひそめる。
「本当にそれがあいつの“意志”だと思ってんのか?」
鴉は答えない。ただ、苦しそうに視線を泳がせる。
「だから、行くんだな。直接、話をしに」
「……ああ。逃げねぇ。もう、あいつを“敵”だと決めつけて終わらせることはできない」
「ああ、それでこそ鴉だ」
蓮は資料を閉じて、立ち上がった。
「で、次の行き先は?」
「港湾地区。あの拠点に潜入するなら、今夜が最後のチャンスだ」
「じゃあ行こう。“バディ”でな」
鴉は、壁に背を預けながら、無言で資料ファイルを蓮に差し出した。中には、今まで公安でも扱われてこなかった“未登録の”資料が並んでいる。
「…宵宮の拠点、動き、接触者一覧。それと、あいつが裏でつながってる可能性のある組織名」
「おい、それ…どこから手に入れた?」
「真壁との“取引”。俺の居場所と引き換えに、情報を出させた。…本当はお前には黙ってるつもりだった。巻き込む気は、なかったから」
蓮は資料をざっと目を通してから、鴉をまっすぐ見た。
「…バカか、お前は」
「……」
「巻き込む気はなかった? そんなもん、もうとっくに巻き込まれてんだよ。オレはお前のバディだろ」
鴉は一瞬だけ口をつぐみ、静かに目を伏せた。
「宵宮は今、港の外れに新しい仮拠点を構えてる。そこには元傭兵、元情報屋、国家クラスのハッカー…様々な裏の人間が集まってる。“無差別ではない正義”を掲げてな」
「無差別じゃない正義、か…」
蓮は眉をひそめる。
「本当にそれがあいつの“意志”だと思ってんのか?」
鴉は答えない。ただ、苦しそうに視線を泳がせる。
「だから、行くんだな。直接、話をしに」
「……ああ。逃げねぇ。もう、あいつを“敵”だと決めつけて終わらせることはできない」
「ああ、それでこそ鴉だ」
蓮は資料を閉じて、立ち上がった。
「で、次の行き先は?」
「港湾地区。あの拠点に潜入するなら、今夜が最後のチャンスだ」
「じゃあ行こう。“バディ”でな」
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