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交差点の記憶
双光
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風が、吹き抜ける。
剥き出しの窓から差し込む月の光が、ふたりの影を長く引き伸ばす。
宵宮は膝をついたまま、しばらく動かなかった。
鴉は静かに、隣にしゃがみ込む。
その手には、まだあの古びたペンダントが握られている。
「……まだ、俺を憎んでていい。疑っててもいい。けど……」
小さく、鴉の声が揺れる。
「俺は、お前を見捨てたことなんて、一度もない。たとえ言葉で届かなくても、ずっと――ここにいた」
とん、と鴉は自分の胸を指す。
宵宮の指が、ペンダントに触れる。
ひんやりとした金属が、掌に落ちた。
「……嘘じゃないんだな」
「嘘なんて、つけるわけないだろ。お前にだけは」
その瞬間だった。
宵宮の腕が、鴉の首にまわった。
衝動的に。
無言で。
涙を、見せまいとするように顔を隠しながら。
「兄さん……」
「……ああ」
「……ずっと、ずっと、迎えに来てほしかったんだ」
「迎えに来た。どれだけ遠回りしても、ここにたどり着くためだった」
しばらく、何も言葉が交わされなかった。
ただ、過去の時間を埋めるように、兄と弟が抱き合っていた。
鴉はそっと宵宮の背を撫でながら、目を閉じる。
やっと、間に合った。
やっと、言葉が届いた。
やっと……家族に、戻れた。
剥き出しの窓から差し込む月の光が、ふたりの影を長く引き伸ばす。
宵宮は膝をついたまま、しばらく動かなかった。
鴉は静かに、隣にしゃがみ込む。
その手には、まだあの古びたペンダントが握られている。
「……まだ、俺を憎んでていい。疑っててもいい。けど……」
小さく、鴉の声が揺れる。
「俺は、お前を見捨てたことなんて、一度もない。たとえ言葉で届かなくても、ずっと――ここにいた」
とん、と鴉は自分の胸を指す。
宵宮の指が、ペンダントに触れる。
ひんやりとした金属が、掌に落ちた。
「……嘘じゃないんだな」
「嘘なんて、つけるわけないだろ。お前にだけは」
その瞬間だった。
宵宮の腕が、鴉の首にまわった。
衝動的に。
無言で。
涙を、見せまいとするように顔を隠しながら。
「兄さん……」
「……ああ」
「……ずっと、ずっと、迎えに来てほしかったんだ」
「迎えに来た。どれだけ遠回りしても、ここにたどり着くためだった」
しばらく、何も言葉が交わされなかった。
ただ、過去の時間を埋めるように、兄と弟が抱き合っていた。
鴉はそっと宵宮の背を撫でながら、目を閉じる。
やっと、間に合った。
やっと、言葉が届いた。
やっと……家族に、戻れた。
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