Festival in Crime -犯罪の祭典-

柿の種

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第四章 天使にレクイエムを

Episode 27

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私とソーマ、そしてギリースーツのような装備を取り出した神酒を先頭に、複数人がネースから中億区画へと走って移動していた。
様々な服装や武装をしたプレイヤー達が着いてきている。

「一応聞くけれど、ネースはかなり組織立ってるのね」
「答えんぞ」
「いいわ。そっちの神酒さんは偵察がメイン……じゃないわね。メインは別にあって、サブとして偵察もこなせるタイプの【犯罪者】。うーん、アレかしらね。所謂暗殺部隊って奴かしら」
「はッはッは、私も答えられないよー?」
「それも分かってるわ」

速度は出来るだけ早く。
デスペナがまだ明けていない私は無理矢理バフを掛ける事で速度を上げているものの、バフを掛けた様子のない神酒やソーマが着いてきているのは素直に驚いた。
偵察のような事をしていて私に接触をしてきた神酒はまだわかる。
しかしながら、明らかに病人のような姿をしているソーマがバフ無しで着いてくるとは思ってなかったため、少しだけ認識を改めた。

元々、彼らネース所属のプレイヤー達とは同盟を組んだわけでもリアルで知り合いというわけでもない。
それに、直接私が関わったのも決闘イベント以来これが初めてだ。
情報は出来る限り欲しいし、それは今後役に立つものだろう。

「……まぁ、こちらから質問することはあるがな。ハロウ、中央区画の現在の状況は?」
「あら、見てたんじゃないの?」
「見て分かる事と、実際に現場で行動している者の主観では相違が発生するものだろう。当然、今も現場自体は観測しているが」
「成程ねぇ……まぁ見た通りよ。基本的には天使が多すぎてそれを狩るのに手いっぱい。CNVLや酔鴉なんかのアタッカーが神父を倒そうとしても、他に邪魔されて辿り着けないし、後衛に関しては威力の高いものをインベントリから取り出すだけでもヘイトが溜まる。ホントに手数が足りてないのよ」

嘘を言っても仕方ないため、そのまま私が見た通りに話す。

「その点、ソーマなら色々出来るから1人でも結構何とかなるでしょう?」
「はぁ……次からはそっちの、マギだったか?を連れてこい。お前は色々とその場で考えて行動しすぎだ」
「あら、そんなことないわよ。きちんと考えてるわ」

溜息で返されたものの、実際の所彼が天使との戦いに適しているというのは本当の事だ。
決闘イベントの決勝で見た彼の実力スキル
酔鴉が負けた理由も想像がつくし、私も苦戦したそれは、機会さえあれば私も使えるようになりたいと思ったものだ。

「そろそろね。入った瞬間戦闘開始よ」
「分かってる。……全員聞こえたな!中央に入ったら天使を殲滅していけ!」
「「「了解!」」」

プレイヤー達の返事を聞きながら、入る前から天使が空を舞っているのが分かる中央区画へと私達は足を進めた。



--浮遊監獄都市 カテナ 中央区画 メディウス

中央へと入った私達を待ち受けていたのは、複数のこちらへ向かって飛んでくる光の槍だった。
私はインベントリから双剣を取り出し、タイミングを合わせ槍を弾く。
横を見れば、飛んできている槍に似たような2本の槍を手に持ったソーマが器用に防いでいた。
神酒の方もどこからか取り出した複数のナイフを器用に使って、自分の方へと飛んできた槍を防いでいる。【リッパー】系統だろうか?

「皆器用ねぇ」
「これくらいは元を知ってればすぐに出来る。どうせなら反撃といこう、【複製ペースト】」

攻撃が止んだ瞬間、ソーマの手に光が集まり巨大な弓のような形となった。
所謂コンポジットボウと呼ばれる類のものだろう。
私はその様子を見て移動を開始した。
ここは彼、というよりはネース所属の彼らに任せて問題ないと判断したからだ。

「じゃ、この辺で暴れててくれればいいわ!頼んだ!」
「あっ、おい!ハロウ!」

デンス、オリエンス所属プレイヤー達が戦っている場所。
探すまでもなく、中央区画内で天使達の密度が異様に高い場所があった。
時折そこから見覚えのある肉の腕が見えている事からほぼ確定だろう。

走り出した私を迎撃しようとする天使達の攻撃を、双剣から【土精の鎚】に持ち替えながら避けていく。
こちらに近い攻撃を避け、遠くからの攻撃は天使の身体を盾にするように進むことで防ぎ。
そして走る勢いのままその場で回転し、【衝撃】の印章を天使の背中に当てるようにして発動させる。
発生した衝撃波の反動によって、私の身体は更に前へと進む。

目的地まで、あと少し。
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