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気配
気配5
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窓の外にぶら下がるそれに近付くのが嫌で、前に進むのを躊躇する空良だったが、この道しか進む道は無い。
空良はできるだけ窓の外を見ないようにしながら、てるてる坊主のところを通過していく。
空良がてるてる坊主の横を通ると、てるてる坊主を吊るしていたロープが切れたらしく、音も無くてるてる坊主は落下していった。
空良は二つのてるてる坊主が落下したのに気付き、早足でその通路から離れていく。
(なんなんだ、あれは)
混乱する頭の中で、あのてるてる坊主の中には人が入っていたかも知れないという妄想が頭を支配する。
あれだけ体を失っているのだから、生きているはずはないのだが、助ける方法はなかったのかと頭の中で自分を責める。
無理な事を考え、無理な事を強要する自分自身に苛立ちすら感じ、空良は歯を食い縛った。
急いで歩いていると、とうとう階段が見えてくる。
階段は下の階に続いていて、空良はその階段を見つめた。
もう恐ろしい物を見たくも無いし、怪物とも出会いたく無い。
何より、無力な自分を痛いほどに知り、逃げ出したい気持ちだった。
空良はこの階で起きた事柄から逃げたくて、階段をかけ降りる。
白く汚れひとつ無い階段を降りきると、そこにはまた分かれ道があった。
「どこに行けば、シトリーに会えるんだ?」
呟きながら空良は左右に伸びる通路を見回す。
先ほどの階と比べると、この階層の壁や天井は汚れていて、所々に赤黒い汚れがついていた。
その汚れが一体なんの汚れなのかなど、想像もしたくないと思いながら、空良はどちらに進むかを考える。
そして、少しでも汚れが少ない道を選ぶことにした。
(左の方が少し綺麗だな、汚れがひどい方には行きたくないし、左に進もう)
そう考え、空良は左側の通路へと歩きだす。
歩きだして二分ほどで、突き当たりにつき、その横には扉があった。
空良は迷わず扉に近付き、開ける。
扉を開いた瞬間、空良は恐ろしい光景に小さく声を漏らした。
部屋はそんなに広くない部屋で、窓も無い薄暗い部屋だった。
壁にはぎっしりと黒い線で描かれた『目』があり、その眼差しは扉を開いた空良へと向けられている。
(落ち着け、落ち着くんだ、ただの絵じゃないか)
心の中で自分に言い聞かせ、空良は室内に台座がないかを確認する。
部屋の中心にも、壁際にも、台座らしき物は無かった。
(この部屋はハズレだ、他の部屋を探そう)
空良がそう思いながら扉を閉めようとした時。
描かれた目がまばたきをしたのが見えて、空良の体に力が入る。
気を付けて室内を見回すと、他の目たちもまばたきをしていた。
「うわぁっ!」
叫び声を上げ、空良は慌てて扉から離れて、駆け出す。
階段の場所まで走った空良はしゃがみ、震える両手で頭を抱えた。
(もう嫌だ、早くここから出たい)
そう空良が思っていると、何処からか何者かの足音が聞こえた。
「これは、足音?」
顔を上げ、空良は立ち上がる。
一体どこからこの足音が聞こえているのか、音が反響しすぎていて、見当がつかない。
次第に足音は遠退いていき、聞こえなくなった。
「誰か、いるんだ」
きっとこの階層に誰か他の人がいるのだと、空良はそう思って早足で歩きだす。
左側は行き止まりだったため、今度は汚れのひどい右側の道に進む。
他の人と出会える事を期待して、歩く速度を上げていく。
進んでいくにつれて、どんどんと汚れは増えていった。
暫く歩くと、二つの扉が並ぶ場所につく。
どちらの扉もこの汚れだらけの空間には似合わない、美しい白い扉だったが、片方だけが少しだけ開いていた。
(さっきの足音の主が通ったのか?)
人と合流したいと思っていた空良は、迷わず少し開いている方の扉に近付く。
空良が扉に手を伸ばすと、扉は勢いよく音を立てて閉まった。
驚いた空良は、体を一瞬跳ねさせてから、扉を見つめる。
手も触れていない扉が動いたことに、空良は戸惑ったが、ごくりと喉を鳴らして恐る恐る扉を開けた。
空良はできるだけ窓の外を見ないようにしながら、てるてる坊主のところを通過していく。
空良がてるてる坊主の横を通ると、てるてる坊主を吊るしていたロープが切れたらしく、音も無くてるてる坊主は落下していった。
空良は二つのてるてる坊主が落下したのに気付き、早足でその通路から離れていく。
(なんなんだ、あれは)
混乱する頭の中で、あのてるてる坊主の中には人が入っていたかも知れないという妄想が頭を支配する。
あれだけ体を失っているのだから、生きているはずはないのだが、助ける方法はなかったのかと頭の中で自分を責める。
無理な事を考え、無理な事を強要する自分自身に苛立ちすら感じ、空良は歯を食い縛った。
急いで歩いていると、とうとう階段が見えてくる。
階段は下の階に続いていて、空良はその階段を見つめた。
もう恐ろしい物を見たくも無いし、怪物とも出会いたく無い。
何より、無力な自分を痛いほどに知り、逃げ出したい気持ちだった。
空良はこの階で起きた事柄から逃げたくて、階段をかけ降りる。
白く汚れひとつ無い階段を降りきると、そこにはまた分かれ道があった。
「どこに行けば、シトリーに会えるんだ?」
呟きながら空良は左右に伸びる通路を見回す。
先ほどの階と比べると、この階層の壁や天井は汚れていて、所々に赤黒い汚れがついていた。
その汚れが一体なんの汚れなのかなど、想像もしたくないと思いながら、空良はどちらに進むかを考える。
そして、少しでも汚れが少ない道を選ぶことにした。
(左の方が少し綺麗だな、汚れがひどい方には行きたくないし、左に進もう)
そう考え、空良は左側の通路へと歩きだす。
歩きだして二分ほどで、突き当たりにつき、その横には扉があった。
空良は迷わず扉に近付き、開ける。
扉を開いた瞬間、空良は恐ろしい光景に小さく声を漏らした。
部屋はそんなに広くない部屋で、窓も無い薄暗い部屋だった。
壁にはぎっしりと黒い線で描かれた『目』があり、その眼差しは扉を開いた空良へと向けられている。
(落ち着け、落ち着くんだ、ただの絵じゃないか)
心の中で自分に言い聞かせ、空良は室内に台座がないかを確認する。
部屋の中心にも、壁際にも、台座らしき物は無かった。
(この部屋はハズレだ、他の部屋を探そう)
空良がそう思いながら扉を閉めようとした時。
描かれた目がまばたきをしたのが見えて、空良の体に力が入る。
気を付けて室内を見回すと、他の目たちもまばたきをしていた。
「うわぁっ!」
叫び声を上げ、空良は慌てて扉から離れて、駆け出す。
階段の場所まで走った空良はしゃがみ、震える両手で頭を抱えた。
(もう嫌だ、早くここから出たい)
そう空良が思っていると、何処からか何者かの足音が聞こえた。
「これは、足音?」
顔を上げ、空良は立ち上がる。
一体どこからこの足音が聞こえているのか、音が反響しすぎていて、見当がつかない。
次第に足音は遠退いていき、聞こえなくなった。
「誰か、いるんだ」
きっとこの階層に誰か他の人がいるのだと、空良はそう思って早足で歩きだす。
左側は行き止まりだったため、今度は汚れのひどい右側の道に進む。
他の人と出会える事を期待して、歩く速度を上げていく。
進んでいくにつれて、どんどんと汚れは増えていった。
暫く歩くと、二つの扉が並ぶ場所につく。
どちらの扉もこの汚れだらけの空間には似合わない、美しい白い扉だったが、片方だけが少しだけ開いていた。
(さっきの足音の主が通ったのか?)
人と合流したいと思っていた空良は、迷わず少し開いている方の扉に近付く。
空良が扉に手を伸ばすと、扉は勢いよく音を立てて閉まった。
驚いた空良は、体を一瞬跳ねさせてから、扉を見つめる。
手も触れていない扉が動いたことに、空良は戸惑ったが、ごくりと喉を鳴らして恐る恐る扉を開けた。
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