浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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パーフェクトブラック

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「ずいぶんとまたお疲れのようですね」
「疲れたよ、愚痴こぼせないところだと特にね」
久しぶりに来店してくれたお客様である。
「今日は何にしますか?」
「耳掃除しっかりやってほしいかな、昨日やっとゆっくりできると思って、耳掃除したんだけどもさ、奥の方にいるんだよね」
耳かきで奥まで入れると、音はする、音はするから引き抜くも、垢は取れず、また奥まで入れて音を確かめが、垢はとれてない。
「痛くなる前にあきらめた、もうどうせなら浜薔薇行くからいいやって」
そんな話もあったので、まずは耳掃除からである。
しばらく忙しかった、きちんと耳掃除できてなかった耳である。堆積し、少し固くなっているところも見受けられた。
パリ…
そこを剥がすと転がり落ちるので、それを丁寧に繰り返して綺麗にしていく。
手前がある程度綺麗になれば次は奥だ、ああこれだな、音の正体はと思われるものが、カサカサぶら下がっていた。
それはなかなかしつこく、耳かきで千切るには少々やっかいとも言える。
耳掃除をされて気持ちのいい耳垢の溜まっている耳が、時間と共にリラックスをしていくのがわかると、やはり耳掃除の腕を磨いて良かった、耳掃除する側もにっこり。
奥の方まで耳を掃除するとなると、されている方はもう何もやることはない、動かぬようにただ黙って、これもまたストレスにはよく効く、考えすぎの頭が強制的にオフになっているし、なかなかそのオフになれない頭も、これは耳掃除なので、オフらなければ失礼であると、このときだけでも耳掃除愛好家の考えになってくれる。
いや、ずっと耳掃除愛好家でいいのよ!
耳垢をあらかた取り終えると、カミソリを使って綺麗に毛を剃っていく、最後にクリーナー液を塗布した綿棒で皮脂まですっきりさせて片耳は終了!
「大分まだ疲れてますね」
「疲れているよ」
そういうと何としても癒してやろうと腕が鳴るのが蘆根である。
(疲れ目、肩こり)
デスクワークが続いたせいか。
クレンジングで頭を洗ったあと、トリートメントを髪に塗布し、マッサージとなるが。
(ツボを探られている)
蘆根の親指は効くであろうツボを探している、いくつか候補は絞られるのだが。
(やっぱり目か)
そのままギュッと押してはいけないぐらい疲れているので、ツボの周りをくるくるほぐしていく。こちらは蘆根の特別メニューとなっている、本来のスタンダードのメニューでは押して終わりだが、それだと疲れが取れないんだよなという不満から、時間があり、そして蘆根の自由にさせてくれるお客様限定だとこうなる。
くるくる
力はいれない、指の腹、それで縁をくるくると揉み、徐々に徐々にほぐしていく。
(後で温かい飲み物もいくらか飲んでもらわないと)
せっかくマッサージしても、老廃物が外にでなければ意味がないので。
このマッサージをされている方は、これまたやることはないので、目がトローンとしてきて、そのまま呼吸が静かになっていく。
「疲れというのは一ヶ所じゃない、全身が疲れていて一ヶ所に出る、だから疲れをとるときは全身からどうにかしていかなきゃいけない」
マッサージを習った先生のうちの一人、その言葉を思い出した。
(このお客さんの場合はKCJの炊き出し、食事も食べているから、疲れが落ちやすいんだよな)
特にみんな考えもなく、ウメーウメーと食べているKCJの食事は、栄養バランスなどもかなり考えられているものなので、1日2食ほどそちらに切り替えてもらい生活をすると、体重が勝手に落ち出してくる。
そういう体になっているので、疲れにくいし、疲れても回復しやすいような状態に、浜薔薇に来る前に比べたらなっていた。
そう、浜薔薇にならば何されてもいいのよの成果がこれである。
KCJは食生活が与える影響などもノウハウがあった、それこそ好き嫌いの多いケットシーから河川ザメが絶句するパーフェクトブラックの…おおっとその話はしたことがなかったか。
河川ザメは人間と同じ量の食事では足りない、栄養面で足りないので、バクバクと食べる必要があったりもするのだが、それでは食費が大変なことになるということで、その昔軍の研究で、完璧なる飼料が開発された。サメせんべい、サメ饅頭とも呼ばれたが、これ一つで様々な栄養素が取れ、色も黒だからパーフェクトブラックと後に正式名称がつけられる、しかしこれには難点がある、美味しくなく、食べると食欲が完璧に満たされて、消化されるまで食べたいという気持ちが消えるのであった。それではサメが可哀想だ、うちのサメちゃんに何をするということで、必要なぶんだけ食べてもらうという方針に変わっていった。
サメ達を何とかするためにいろいろと工夫したが、食べた瞬間目から光、いや感情までが消えるパーフェクトブラックを美味しく食べるというのはなかなか解決されない。
しかしたまたまそれなら、KCJのケットシーにお薬を飲んでもらうためのカワハギの肝ソースコーティング技術というのがあった。
それを応用し、その無に繋がる味を包んでしまうことに成功、そちらはさきイカマヨネーズコーティングという。
分量としてはパーフェクトブラックが30%にマヨネーズコーティング、その上から編みこんださきイカというものであり。
河川ザメの成体で、陸上でも生活するものはこちらのお世話になっていた。
旨い旨い、おかわり!と言えるまでにはそんなマズイとの戦いがあったのである。
「お疲れ様でした」
「ありがとう、蘆根さん気持ち良かった」
「今日はそのまま寝てくださいね」
「うん、もちろんだよ」
ここで遊んじゃう人はいないわけでもないのだが、その場合は蘆根に説教を食らったりするので、そういうお客はだんだん浜薔薇から疎遠になるそうだ。
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