浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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口説き文句は使い回さない方がいい

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戦闘許可証持ちが、いつもより多く集まる支部である。
(なんか大きな事件でもあったのかな)
そう思われてもしょうがないが、ある意味今日を狙って襲撃者たちが押し掛ける可能性はあった。
ヨボヨボ…
(なんかサメ達も一杯いるけども疲れているし)
「次の方どうぞ」
呼ばれたサメが中に入っていくが。
(ん?)
ちょっと待って、あっ、このサメってそういうことか。
サメが向かったのは健康診断などでお馴染みの内部処置室、そう!本日この河川ザメのグループは健康診断なのである。
つまりご飯を夜九時以降から検査が終わるまで食べてはいけない。
(それでここまでになっちゃうのか)
よたよた
歩き方も弱ってるのがよくわかる。
しかし、これもサメが人の世界で上手くやっていくための決まりなのであった。
ただ健康診断前のサメを他のサメが護衛をした場合、サメ達がこっそりご飯を渡す可能性も考えられるため、護衛は人間と決められている。
次々と検査が終わっていくのだが、残りわずかなというサメと目があった。
それは笑顔であったが。
(食われそう)
本能的な恐怖を感じた。
有識者いわく、とびかかわるまえの顔に似てるので、怖く感じるのではないかとのこと。
「ひぃ」
たまたまその笑顔を向けられた人が飛び退いたので、やはり怖いと感じるようだ。


「それぐらいじゃ人は死なないから」
及び腰の部下たちに男は指示をした。
ここでこの台詞を言えてしまうことに、部下たちは寒気を覚える。
「じゃあ、後はやっておけよ」
「は、はい、わかりました」
「それじゃあ、お疲れさん」 
いつものように仕事して、これから飯を食って寝るだけだ。
しかしその途中。
(チッ)
こんな生き方をしている、そりゃあもう敵は多い。
「はっ、かかって来いや!」
死ねば何も残らない、だからこそ、前へ前へ、襲ってきたやつを後悔させるぐらい前へである。
!?
その相手が一瞬だけ見えた。
(おもしれぇ)
何故かそう思ってしまった。
「お前はやり過ぎたんだよ」
暗闇の中から聞こえる声は水芭(みずば)という男。
「ああ、知ってる」
染まってしまった男と…
「そうか」
哀れむ男。


会話はこれまで、後は実力勝負となる。


「はっはっはっ」
負けた方が勝ったように笑っていた。
「お前に同情しないわけじゃないよ」
ガチン
水芭は男を拘束した。
「やっぱり勝てなかったか」
「何を言ってるんだ、お前は俺を殺せるぐらい強いだろう」
「オレはあんたを知っていた、あんたが何でそこにいるか、運だけじゃないことを他のやつよりよく知ってるからな、それが証明されただけさ」
「理解されても嬉しくはない」
「そうだろうな、それでいいさ、オレもろくでもない人生だし、終わるのならばいきなりだと思ってた、しばらく生きるということはでも考えてその日までおとなしくしているさ」
「もういいか」
「ああ」
その後連行されるのだが、とんでもないことがわかる。


「あの時、逃げようと思えば逃げれただろう」
「なんだよ、そんなことを聞きにきたのかよ」
「面会者への、言葉遣いに気を付けなさい」
「へいへい」
「知りたいことが悪いことなのか?」
「それはそれだと飲み込めばいい、ほら、あれだ、あそこでオレがおとなしくしていれば、心証がよくなるかもしれないだろう?」
「多少、評価がよくなったところで、お前の罪が軽くなるわけじゃないさ」
「本当にどうでもいいこと気になってるね、まっ、悪党には悪党の美学があるってこと、ただの坊っちゃんじゃない、泥の味を知ってる同胞には敬意を払うべきだろう?オレはなあんたみたいな生き方ができなかったんだよ、その負い目があの時あった、だからおとなしく白旗をあげることにしたの」
「時間だ」
「良かったら、また来てくれよ、差し入れは大歓迎だぜ」
「もう少しお前は反省しておけ!」


「お疲れ様です」
「ミツさん、待たせてしまったね」
「大丈夫です、お仕事ですから…あの水芭さん、大丈夫ですか?良ければ私は一人で帰りますが」
「それなら少し付き合ってくれ」
しばらく車中には言葉もなく、どんどん街から離れていく、ミツはどうしようかなと思っていたときに、窓から夕陽が見えて、綺麗だなと表情を変えたとき。
「あいつの人生には同情してしまう」
水芭がしゃべりだした。
「個人的にはだ、でもやってきたことが酷すぎるんだ」
ミツは今回の件については書類を読んである程度は知っていた。
「人は生まれた場所は選べないが、生き方は選べるんじゃないかと思ってる、難しいとは思うけどもね」
「それは…」
「ん?何かあったの?」
「一度向こうに戻ったじゃないですか、その時に私はやっぱり厄介者扱いされていたんだなってわかりましてですね」

ねぇ、ねぇ、さっきさあの子見かけたんだけども。

部長室に呼ばれたんだって?またいい子ちゃんのことだから点数稼ぎだよ。

「う~ん、でも、ミツさんの前の職場に関してはこっちも話は聞いてはいるんだけども、あそこでやる気のある人ってミツさんぐらいだったんだよね」
河川部長から内密にあの事件解決のための人員候補者リストを見せてもらい、そこから螺殻(らがら)ミツが選ばれた。
「逆にミツさんじゃなかったら、あの作戦はできなかったもと思う」
「そこまでですか?」
「他の人だと、瀬旭さんに負担がかかって、瀬旭さんのことだからそれでもお姫様扱いはしてくれるだろうけども、こっちが求めているのはお姫様じゃないんだ、きちんと依頼を達成するために必要な人材なんだよね」
ミツはなんだかんだで資格類や研修にも真面目に参加していたので、実践経験は少ないが最低限以上の働きはするだろうと見られていた。
「それでいてこっちの都合で動ける、ノーマークの人員なんてね、そんなに転がってはいないんだよね」
「でもあそこまで飛び回ったり、クルーザーから飛び降りるとは思いませんでした」
「たぶんこれからもたまにあるから」
「もうお腹いっぱいですよ」
そんなことをいいながらも、少しミツはワクワクしているような顔をしていた。
「俺は君よりも若いときに先輩方にあった、何も出来ない子供の俺をあの二人は信じてくれたんだよ」
そして少年は成長する。
「感謝してもしきれないよ、あっ、でもあの二人には言わないでね、照れたり、茶化したりするのはわかるから」
「はい、それは目に浮かびますから、ここだけの秘密にしておきますね」
「そうしてくれると助かる」

「遅かったじゃないの?何かあったの?」
「ミツさんが夕焼けが綺麗だっていったので、少し遠回りしてドライブして帰ってきました、はい、これはお土産です」
「柔らかくて美味しい夕陽のさきイカだけども、ドライブってデートじゃないのか?」
「今日は準備は中途半端ですから、お客さんは入れませんから、好きなもの飲めますよ」
「あ~ごまかして、じゃあ、12年ものの」
「18年ものを奥から出せますが」
「出します、出します、出してください、じゃあそれで」
ミツも少しだけいただいたが。
「これは確かに美味しいですね」
「そうだよ、ミツ、人生を楽しみなさい、君の知らない、素晴らしいものがこの世の中にはたくさんあるんだからね」
「覆木(おおうき)さん、口説き文句は使い回さない方がいいですよ」
「お前はそういうところがあるからな」
「えっ?俺はそういうつもりは…」
瀬旭さんが後でこっそり教えてくれた、その言葉はその昔覆木さんが水芭さんに言った台詞なんだそうだ。
「ミツさんはそういう男には気を付けてくださいよ」
「はい、わかりました」
「そうそう、男はね、真面目だけども、たまにジョークが出るぐらいがちょうどいいの」
「それってお前じゃん」
人が作った傷は、人にしか癒せないものもある。
この和やかな空気は、薄暗い午後の出来事を忘れ去れるには十分であった。



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