浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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利き足塚

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ホラー注意

先日の事が少しばかり気になっていたこともあって。
「というわけで見に行こうと思ってるの、何も見つからないかもしれないけどもね」
白万(はくまん)がそう彼氏に伝えると。
「ちょうど休みもとれるし、俺も行くよ」
「あら、いいの?」
「俺が必要にならなきゃいいけどもさ」
「こんなにスムーズになるだなんて、危険がなきゃいいけども」
「もしもそうなら、俺は同行できないと思うよ」
人智を越えた存在に迫るのではないか?そんな魔法使いの域に入ってきている男がいうと、言葉の重みが違うのである。
「私はあなたがいてくれたらどこでもいいわ」
「地獄とかはごめんだ、君は連れていかないからね」
「…」
「バカね」
「なんだよ、そういうもんだろ?」
(もしもそうなら追いかけるからね)
「はいはい、機嫌直してくれよ」
というわけで、先日の傘目(かさめ)先生の生徒、そのかかっている呪い、いきなり吹き込んだ風について調べるために、二人はその風の始まり、または終わりの地について赴くことになる。
恋人同士なので、デート気分もあのかと思いきや。
「この辺のはずなんだけどもね」
「観光地でもないのよね」
他の土地からやってきた人間である二人は、服装でよそから来たということがわかるぐらい、地元の人たちしかいない、昔からの町並みを歩いていた。
「特にここまで妨害なんかもないから、本当に、生徒さんに起きたことは善意だったんだろうな」
「でしょうね、でもなんで?はどうしても残るわよ」
「そして来る途中のサービスの良さ」
旅行のかた?珍しいから、これも食べる?
「これはあまり見かけぬ観光客だからなのか、それともなのかすごく迷うやつ」
でも海産物は美味しかったです。
「エビが甘かったわ」
「もう少し食べても良かったのに」
「二人で旅行しに来たわけじゃないのよ、あら?」
この時は感染症が流行しているので、神仏の力に祷りを捧げるものが見受けられても、おかしなことではないのだが。
「どうしたの?」
「これはそうじゃないわね」
そりゃあそうだ、『利き足塚』などと書かれていたら、それは病気のものではないだろう。
「しかもこれは新しいね」
塚がしっかりと固まるように、支えがまだつけられていた。
「これかしらね」
「もしかしたらね」
「おや、どうなされましたか?」
「ああ、いえ」
「何か、風もないのに外が騒がしいと思いましたが」
ああ、この人はこちら側の関係者だなというのはよくわかった。
「こちらに掘られている名前が少々気になりまして」
「言葉からこちらの人では…ああ、そういうことですか」
「それは何か?」
「○○日にそれは強い風が吹いたんですが、その夜に、夢枕に立たれた方がおりましてね、この足を預けたいと」
「足ですか」
「はい」
「日付もたぶんあっているので、私たちがたぶんその関係者ですわね」
「では軽く、何しろこの足を戻してはいけないそうなんで」
「でしょうね」
「それで戻らぬようにこの塚を拵えることになりました、その後のことは知っておられますか?」
「後ですか?いいえ、風が吹き、何かしら持ち去られたまでしか」
「それがこちらにありまして、その先も私は昨晩聞きました、足がこちらにあるのは、なければそっちに行けないだろうということで、しかしですな、戻ろうとしたようで、さらなる怒りをかったようです」
「それはどのような?」
「目がどちらも今はないようです」
「それはどちらに」
「こことは真逆の、おそらく…」
地図で見ると、あの時風が吹き、こちらまでとんだ地点が南西だとすると、逆に今度は北東の同じ距離だけ離された場所にあるらしい。
「そして別々に分けられたたと」
「一体何が理由でこんなことが?」
「こちらの場合は縁です、あちらの場合は怒りだそうです」
「わかりづらいですね」
「だってそれしか言わないんですもん」
少し感情的になると、上の高い木の枝、そこがガサッと音をたてた。
「いるんですね」
「最近姿がお見えにならないなと思いましたが、あの風が吹いた日に戻られました」
「しかし、これだと大変ですね」
「そうです、慣れる必要はあります」
あっ、これは大変なやつだ。
「全部ご自分で、いや、確かにお力は借りてますから、ある程度はやりますけどもね、いきなり戻ってきて、夢とは足見せられたならね、悲鳴あげそうになりましたからね」
飛び起きました。
「昔から突拍子もないところはありましたが…出来れば先方さんにもちゃんと理由は話してくださいよ、話していると思って、それでこういう感じで訪ねてこられる方がいたらね!」
「そこまで熱くならなくても、私たちも慣れておりますから」
「すいませんね、私はその…まだ慣れてません」
こういう世界で大事なのはあるがままに物事を見て、しょうがないことは諦めるという姿勢である。
「では、この塚のことはお任せしてもよろしいのでしょうか?」
「はい、お任せください、逆に私が放棄したら何が起きるかわからないでしょうから」
「わかりました、では」
そういって別れた。


「わりととんでもなかったわね」
「そうだね、君は何か気になったことある?」
「そうね、本当に好きなのはわかったけども、それでも気持ちを伝えるわけでもなく、ただ彼女を困らせていたものを減らしただけだと、彼女も不思議がるだけよ」
「それもわかるけどもさ、男としては、守りたかったけども、守りきれないからこそ、こういう決断だったんじゃないかなって思うよ、本当は全部あそこで終わらせたかったのだろうし」
「そうなの?」
「そうだよ、好きならそこまでしたかったんだと思うよ」
「それなら、本当にバカね。その気持ちを無下にする子じゃないってわかっているから、こんなことしたのね。その子と一緒にいるだろうifもあったからこそなんだろうけども、なんかこうモヤモヤするわね」
「強い力があっても、物事がみんな解決するわけじゃないさ…」
「どうしたの?」
「俺らは話はまとめるけども、彼女には言わない」
「?」
そこで彼氏が誰に聞かせたいかわかった。
「出来ればだけども、それはあなたの口から伝えてほしいし、おそらく守られた彼女はその話をあなたから聞いたら、めちゃくちゃ怒るかもしれない、どうなるかは部外者からはわからないが、その…ただ守られてそれを良しとする子ではないんじゃないかと思う、自力で呪いを解こうともがいているような子だから、折り合いのつけ方、そこは考えてほしい」
ガサッと相槌のように音がした。
「ただね…それ泣き叫ばれることもありうるからね、そこだから、いい?好きな子に自分としては良かれとしてやったことで、泣いて怒られるのはめっちゃ来る、でもそこが勝手にやっちゃったってことだから、その時は自分が全面的に悪いから、いい!許されようとしちゃダメ、その気持ちが少しでもあると、それこそ、そこで終わるんだからな!」
彼氏の実感がこもった、こんな時はこうだからという、先輩からのお言葉で、散策はしめられることになった。

「そしてそこからの情報を得て、北東を探した結果、右目塚と左目塚というものが建立中であることがわかりました」
「うわ~い、うちの生徒、呪いも重いが、祝福もかなり重いぞ」
傘目は報告を受けて、できるだけ軽く答えたが、それで内容が変わるわけではなかった。


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