浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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形の悪いマントラゴラ

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「サッ」
兄弟子、姉弟子、お疲れ様です。
真中(ただなか)のところのサメくんが挨拶をする。
「何か食べられますか?」
真中が聞くと。
「サッ」
そうだな、少し食べようかな。
そういった兄弟子がいたので、兄弟子のために真中は準備をしてくれる。
「何がいいですか?」
「サッ」
卵かけご飯だな。
「わかりました」
その隣でサメくんは、うんうん、わかってるみたいな顔をしてた。
忍ジャメの街中拠点に戻ってきたサメたちは思い思いに寛ぐ中で、真中は丼にご飯を持って、黄身と白身を分けた。
「お待たせしました」
「サッ」
ありがとう、やっぱり美味しそうだね。なんというか、真中くんの卵かけご飯は使っている卵が違うのかな?いつも美味しくて好きなんだ。
「卵はスーパーで売っているものですよ」
「サッ」
なんだと…
「サッ」
でもいつも食べている卵かけご飯より白いんだよ。
「ああ、これですか、作り方がちょっと違うんで、白身をまずメレンゲ一歩手前ぐらいにします」
「サッ」
なんだと…
「本当は教えてもらった水芭(みずば)さん風に、黄身を割った状態で出した方がいいんでしょうが、やっぱりその…黄身って自分で割りたいじゃないですか」
「サッ」
くっ
やはり山のサメには街中の文化はプライドに来る。
「でもこれは、家でも作れると思うんですよね」
卵かけご飯はそのままご飯に卵をかければ完成ではないのか、メレンゲというカタカナ言葉なんて自分達の卵かけご飯には存在しない言葉だ。
「今の時期だと、海藻類も乗せるとね、その場合は醤油じゃなくて、生姜か、お酢で食べると美味しいかな」
忍ジャメ達にとっては街中は誘惑の塊、まだまだ食べたことがないものがたくさんある。
(あっ、そうだ、さっきもらったマントラゴラも帰ったら使いきらないとな)
マントラゴラは高級素材と言われてますが、忍ジャメたちはそれを山から見つけていたりする。野菜のように、マントラゴラにも規格があり、形が悪いマントラゴラは真中はたまにもらっていた。
もちろん、マントラゴラはあの声で死者がでるので、そこは兄姉弟子が処理したものだ。
具体的には地表に出ている部分から、地中の顎にあたる部分をカットします。
そのために日持ちが悪いのです。
(日光に当てるとダメだし、冷凍庫に入れても再生するよとか言われるから、早めに食べた方がいいんだよな)
マントラゴラは寒冷地でもすくすく伸びるもの、それこそ他の植物がない時期だからこそ、見つけやすいともいう。
雑に生きている人なんかが、マントラゴラをもらって、冷凍庫に入れたまま忘れたら。
「冷凍庫の中から遭難者みたいな声が聞こえて…」
そのまま自分で冷凍庫を開けると、声を直接聞いてしまうので、KCJに連絡が来たことがある。
「その時はサメいないから、冷蔵庫ごと買い換えでマントラゴラ処分費払った、もうかなりかかったから、マントラゴラは冷凍庫に入れたままにしないって決めている」
「普通はそういうことはないから」
おそらく一般的な生活をしている場合は、マントラゴラがいっぱい採れたのでお裾分けに来ましたとかもない。
「そうなんだ、うちの田舎は、畑の作物を盗難防止のために植えてたわ」
人参に似ているマントラゴラがあります。
「お父さんに、そことそこはマントラゴラだからなって」
実際にそれで盗難防止になったんですか? 
「マントラゴラが良く採れるようなところだったから、それを知らないどっかから来た人が夜中に盗もうとして」
まずうちの犬が吠えて教えてくれました。
「前に飼ってたトトちゃんは、そういうの教えてないのにさ、覚えてくれててさ」
トトが吠えたので、父親が畑の様子を見に行くと、ライトがついたまま無人の軽トラックがまずは見え、どこかにいるのかと、手元の明かりで、畑を照らすとひっくり返っている三人と、大きな袋に入れられたニンジンが…
「まだ大きくなる前のマントラゴラだったから良かった、収穫時期のマントラゴラだったらあいつらの命はなかったぞ」
ただここから搬送先の病院が遠かったので、後遺症が残った模様。
「耳でマントラゴラの声を聞いちゃうから、耳に負担がかかるんだよ」
マントラゴラを人間が扱う場合は、もしもマントラゴラの声を間違って聞いてしまったときのように、キャンセリング機能がある耳栓を使いますが、これがあると、マントラゴラの乱獲とかも用意なので、一般販売はされてないし。
「今の技術だと何回かで壊れるんだよ」
正規のマントラゴラ取扱業者はそれを知っているので、一度使ったらすぐに交換し、破棄となりますが。
それでも…そういったものはどこからか外に流れたりするので。
「メッ」
たまにうちの山にもそれつけてくるのよ。
しかし、そこは忍ジャメの本拠地。
マントラゴラを盗んだとしても、サメに追いかけられる。
「大丈夫だ、本当に強い忍ジャメはヒグマの爪をヒレにつけている」
奇数の奴には特に気を付けろ!
その言葉に、忍ジャメは、じゃあつけるわといってヒレにつけた。
「三本爪!!」
「メッ」
しかもオスじゃない!


「あれ?今日休み?」
「メッ!」
美容室とネイルのお店に、姉弟子が箱を持って訪ねてきた。
「あら?こんにちは」
「メッ」
「何かしら?」
「長いも?」
「これは自然薯よ、長芋より高いやつ、いいの?」
先日はヒグマの爪をデコってもらったので、そのお返しにってことらしいが。
「ご飯にそのままかけていいのかしらね?」
「なんかこういうのがいきなり来ても困るもんだね」
そういうと、姉弟子はおすすめ簡単レシピをスマホから見せてくれる。
「あっ、これなら作れそうじゃん、っていうか、一緒に食べようよ」
「メッ?」
「そうね、せっかく美味しいならみんなで食べた方がいいものね、茄子の煮浸しとか好きかしら?さっき暑い中がんばって作ったんだけども」
「お母さんの美味しいよ」
そういって娘と一緒にサメは奥に消えていった。

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