浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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ストレス共存プロジェクト

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「すいません、依頼を受けて来たものなんですが」
「はい、こちらで合ってますよ、どうぞ、中にお入りください」

現実世界にはストレスが付き物、そのストレスを軽減させるための研究をこちらでは行っている。
「それでうちの場合は睡眠を取りたくなるような、その理由を作ればいいのではないかと思ってまして、こうしてモニターを不定期ですがお願いしてまして」
涼しいところで、仮眠するというだけのお仕事。
「ただまあ、その睡眠では自分の夢、願望が反映されるものとなっておりまして、その点だけは注意していただければなと思います」
願望?まあ、そのぐらいならばとさいんをし、睡眠環境に移動する。
外はとても暑かったのに、ここは空調も聞いている。
「奥にシャワールームが、何かつまめるものをと、他にも飲食物も用意してありますから」
至れり尽くせりな仕事である。

さっぱりして、いただきますして、そしておやすみなさい!

そして夢の中では女の人がいた。
「あら?私で良かったの」
そんなことをいうのだ。
「君でいいに決まっているじゃないか、それとも他にいると思っているの?」
「思っているから、そう言ったのよ」
「酷いな」
「そうなの?私はそうとは思わない」
いつもの軽口だ。
「最近お仕事はどうなの?」
「忙しいよ、世間はね、今はとても騒がしいというか、大変なことになってる」
「そっか…」
「うん、やっぱり君がいると、流れる時間まで変わってくるな」
「もう本当に現実で彼女作りなさいよ」
「それ本気で言ってる?辛辣だな」
「私は忘れるから」
「えっ?何を言ってるの」
「聞き返すことに驚きだよ。ここは夢である、夢にハマってはいけない」
「なんでさ」
「現実と上手く付き合うというのがここの理想なんで、夢にハマり過ぎそうな人は困るのよ」
「俺の人生何だったんだろうな」
「それだから、もっと幸せに生きなさいよ」
「幸せがなんだったか、いや、ここにいることでそれが何かとわかるのだけども、本当に君は夢の中の住人なの?実は実在する人じゃなかと疑っているんだけども」
「貴方の脳内に住む、現実で足りない部分を補完してる存在なのよね」
「そっか」
「誰かモデルがいるの?」
「モデルね…いたかな」
「でもそのモデルが過去の人ならば、そこからあなたが作り上げているから、そのモデルとは大幅に中身が、ええっと人間が違うんだと思うよ」
「そっか、俺の理想の人は、この世のどこにもいないのか」
「自分のぴったりを探すもんじゃないわよ、恋というものは」
「こういうお説教臭いところも俺は好きなんだよな」
「女にお説教させるのが好きって、ダメじゃん」
「でもさ、ガミガミじゃないの、ちゃんと俺のことを見てくれて、このままじゃダメだからなって言ってくれる子がね、いいよね」
「そのせいで、私はこうなったのか」
「それだけじゃないとは思うんだよね」
「どういうこと?」
「今は科学が進んでいるからかもしれないけども」
「ああ、心理を情報として再現させるものか」
「やはり君はわかるのか」
「元はあなただからね」
「ということはプログラムの一部にある『クーツ』もそこから?」
「肋骨から生まれたってことで」
「ああだからフランス語の肋骨の名前が、日本人だと可愛く聞こえるけども、意味を知ると、もっと可愛い方がいいんじゃないの」
「あら、あなたはフランス語もわかるの?」
「ちょっとだけね、単位は持ってないけども、どうしようかって専攻は迷ったことがあって」
「ふうん」
「好感度上がったかな」
「それこそ、ちょっとだけね」
「いいな、どんどん上げていきたい、現実だとそこまで人と仲良くなれないから」
「寂しいことは言わないの」
「だって本当のことだもん」
「ちゃんと貴方のことを見ている人はいますよ」
「いるなら、今すぐ現れて俺の頭を撫でてよ」
「意外と言うわね」
「言うよ、この夢を覚ましてほしくば、現実も同程度の待遇ぐらいは求めるのが当然ではありませんかね」
「たまにいるのよね」
「たまになの?それは遠慮して言わないだけじゃないの?」
「う~ん、難しいわね、一応ルールに則って、私は現実と上手くやっていくためのものなんだけどもね」
「やっぱりいるでしょ、夢なら覚めるなと」
「いるわね、初めてそういうのを知ったときはビックリした」
「やっぱり君は実在してるんじゃないの?」
「してないですね」
「へぇ~そうなんだ」
「起きたら、プロテインとか飲むのおすすめしますよ、今はギュルンギュルン、体がストレスの回復のために務めているんで、お腹減っていると思います」
「そんなにストレス溜めてた」
「溜めていたから、このプロジェクトに協力したんじゃないんですか?そうでなければ手など伸ばしませんよ」
「救いの手を伸ばしたら、俺は助けてもらえるのかな」
「そういう世の中にするためのプロジェクトです、まだあなたは戻れますよ」
「本当?」
「ええ、私よりはずっとね」
「やっぱり君は実在してるんじゃないの?」
「してないですね、喜びそうなことを言い返すとかそういう学習を受けていますから、教師が良かったんでしょうね」
「その教師は実在すると」
「ええしますよ、その人が教えなければ私はこうにはなりませんから」
「その人は誰?」
「その情報はないですね、何です?気になるんですか?」
「そりゃあね、そこまで人の心理に、いや、俺はここでならば何とかなるかもしれないと感じさせてくれるんだからさ、一度会って話してみるとかはあるかな、…研究資金募集してないかな」
「それはないみたいですね」
「そこは即答するんだ」
「このようなストレスとの共存プロジェクトというのは、昔から存在してまして、ストレスに苦しむ人からの寄付はもちろんありましたが、こういうプロジェクトを考えるような人というのは、やはりどこか飛び抜けた人たちが多いですからね」
「それは何となくわかる」
「中でも結果を出すのは、興味本意で参入しちゃったところとかでしょうか、やはり従来の考え方とは違う方法をどんどん試しますし、どちらかというと、夢はどこまで強くても許されるのかのギリギリを狙ってくるので、モニターなどからは好評なんですよね」
どうかこの夢を覚まさないでくれ!
「ただそこまで強いものの想定としては、最初は闘病している方々だったのですが、そちらは実際には上手くいかず」
なんだ、これは…
少数の一般生活者のカテゴリーから、もう一回、いや、何回も見たいなどと意見をもらいまくった。
「それこそ、そちらに対象を切り替えた責任者が、そっちの方が面白くない?という、倫理感の持ち主だったので」
「なんだろう、俺はその人に感謝しかないよ」
「ああ、たぶんその人は存じていると思いますよ」
名前をあげると。
「えっ?知り合いなんだけども、下手するとこの間も会いかけたぐらいの知り合いなんだけどもさ」
「その方が過去に提唱したことが元になっていて、そこから今に繋がっているんですよ」
「そうなの?」
「はい、発見者ってことですね、その発見された概念からという感じで、その人がいなければやはりこのプロジェクトは生まれてなかったと思います」
「次に会ったときにお礼を言わなきゃな」
「私からもお願いします、その発見がなければ私は形を作ることもなかったでしょうから」
「この見た目は誰がモデルなの?」
「誰なのでしょうか?お知り合いですか?」
「見たことがあるような、ないような、でも知ってる人ではないかな」
「人間から見ると、不自然に見えるのならば改善でしょうかね」
「他の人はわからないけども、俺の場合はそのままでいいから」
「はい、わかりました、覚えてるのならばそうします」
「忘れちゃうこともあるんだ」
「ありますね、でもそんなもんでしょ?」
「そこは人間臭いんだけどもね」
「人間をいかに模倣するかも、このプロジェクトにとっては大事なことなんですよ、どこまで心理を情報に出来るのかって」
「その時、俺は救われるのかな」
「そこを目指しているプロジェクトもあるそうです、困っている人のために、聞き取り、それを元に最適なアドバイスを送る」
夢と希望を持って人生を変えます。
「でもそこで辛辣な、説教臭いことは嫌だな」
「あら?先程は説教はお好きなように発言されてましたが」
「それは時と場合によるというか」
「ああ、自分の好みならばいいというやつですか」
「はっきりというね」
「申し訳ありません、ただこの辺の要望をテストしたところ、実際に結果も出ているんですよね。それを考えると、人間は関係性の生き物なのかもしれません」
「そうだね、その、君は俺にとっては大事だから」
「そうでしたか」
「素っ気ないな」
「なんというか、私がいうのもなんですが、女性の扱いがあまりお得意ではないのでは?」
「あっ…うん、そうだよ、本当ね、気分で変わるとね、俺はついていけなくなるんだよ」
「大丈夫ですよ、そこには老若男女差はありません、その判断で行動や発言をすると、相手が困るだけですよ」
「それがわからない人もいるんだ」
「そういうのこそ、プログラムに相手をさせればいいのでは?24時間365日相手できますよ」
「うわ~頼もしい」
「そこで我々に人が敵うとでも?」
「こういうの何て言うの?上位存在って感じで」
「いえいえ、つい私もノッてしまいました、私は人ではありませんが、人を理解したいと思ってはいるんですがね、いまいち上手く行かない」
「大丈夫なんじゃないの?人間だって毎日やってたらできるようになるわけだしさ、それと同じだよ」
「今のような優しい顔を女性に見せたらいいんですよ」
「え~君にしか見せたくない」
「私に見せてどうするんですか?というか、あなたは大分夢への適性があるように思われます」
「そうなんだ、どこで見受けるの?」
「このようにコミュニケーションが取れることですね、言語でのコミュニケーションが出来て、その結果が体に反映されている、それは素晴らしい、あなたのような人ばかりではありませんが、人類への理解がまた一つ深まるって感じで」
「本当に君は実在しないの?」
「しませんね」



「おはようございます」
「ああ、ああ、覚めたのか」
「お疲れ様でした。お体の調子はいかがですか? 」
「なんかスッキリしている感じはする」
「それでは今回の感想をレポートにまとめてくだされば、そこ提出をしていただけますと、別途に手当ても出せますので」
「いいんですか?長くなるかもしれませんが」
「構いませんよ、むしろ『ただ良かった』とだけ言われると困るので、正確に書き出してくれるのならばまたお願いしたいぐらいです」
その言葉が引っ掛かった。
もしも、『また』があるのならば…

「あの~先日依頼をお願いしたのですが、良ければ『また』ご協力願えないかと」
その『また』のために努力した分は報われたようだ。
連絡をもらったとき、わかりましたと返事をしてから、脱力したのを覚えている。
   
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