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『かえ』と『楓』
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運命というのはわりとおかしなものというか、ほんの少しの掛け違いで始まらなかったりするのだ。
「『かえ』さんとの出会いもそうですかね」
ご飯を食べているときに、濡島(ぬれしま)はそういった。
「そうなんですか?」
「最初は転職の話の中に出てきましたから」
そこで思わず。
「最後の人は、かえさんのことね、大丈夫なんですか?って自然に出てしまったんですよ。その時に話していた人が覚えていてね」
濡島さん、よろしければなんですが、宿泊費は無料になるんで、こちらで一週間過ごしたりしてみませんか?
それはずいぶん太っ腹な話ですが、どういうことなんですか?
いわゆる稼働率が悪い民泊というやつなんですよ、管理してくれる人の仕事にもってことで。
へぇ~
その管理人さんっていうのが、前に濡島さんが心配していた最後の人ってやつで。
ああ、なるほど。
まあ、ご興味あれば、こちらに連絡してみてくださいよ。
そういって連絡先は渡された。
「自分でも調べたんですが、やっぱり真夏に涼しいというのが、一番の魅力ってやつでしたね」
ゴロゴロできる気温最高!
「これも本当に寸前にそうなったといいますか」
「あっ、その竜のお姉さんは見ましたよ」
ゴンゴンゴン~
「なんというか、モテるんだなってはわかりました」
「そうなんですよ、モテることはモテるといいますか」
「あれは大変だ、言い寄られてる側の困った顔がわかってない」
「もうちょっと皆さま方も、男女間の機微をわかってくれたらな…とは思いますけどもね」
「新しい恋をするには遠いことになるのかな」
「そうかもしれませんね。なんで前の方と上手く行ってたのかわかったような気がします」
「あれだと、仕事とプライベート、一線引いてません?」
「引いてるみたいですね。そういえば私とは結構喋ってくださる、ほら、私の名前が『かえ』でしょ」
私の名前の一つ、気に入っている名前の一つが「楓」でもあるんだよ。
「えっ?名前をお教えに」
「本当のお名前はあるのでしょうけども、ええ、教えてくださいましたよ」
風という字、意味ならばどこかにそのまま流される、風の強い日にお前さんは流されているぐらいだから、木がついていた方がいいだろう。
「その言い方だと名前をつけた人はまるで親のようだ」
「実際にそうみたいですよ、保護者の方が名付けたみたいです」
「竜のお姉さんじゃないですが、あなたと話すと俺も癒されるから」
「何をいってるですか?濡島さん」
「いや、だってこれは事実ですから、事実は伝えたいし」
「もう…」
「あなたの過去、色んなことがあって、前に進めていないのだろうけども、どうか一歩でも歩み始めてほしいとは思ってます」
「ありがとう」
「でもちょっと今日は嬉しくて」
「なんでです?」
「こうしてあなたと食事ができるからですよ」
そう、ここは避暑地ではない。
「実は会議に行くことになりまして、濡島さんはこの会場のそばは詳しいにではないかと」
「それこそ、前職では大変お世話になりました、人生とは苦いもの、その味を教えてもらいましたっていう思い出がたくさんつまっているので詳しいですね」
「それは思い出さない方がいいのでは?」
「いいえ、いいえ、それで結構詳しいですよ。早朝から営業している美味しいところとか、待ち時間に便利なお店とか」
そこで会議の時間を聞いて、それならばとおすすめを紹介してもらった。
「でもそれならば会議の後、お食事でも行きませんか?」
「えっ?」
「一人だとなかなか行けないお店があるんですよ、そこは美味しいのですが、その~男性一人ではね。あっ、前は取引先の人たちと行きましたよ、デートなんかじゃありませんよ!」
「そこは信じてますが、なんですか?いきなり…」
「いえ、疑わしい行動は、誠実な愛を遠ざけるものも思ってますので」
「それは…確かに、そういう人とは縁がない方がいいかもしれません」
「本当ですよ!で、どうしましょうか?」
「でもそれだと、濡島さんもわざわざ会場近くまでお越しになると」
「ちょっと参加者の顔ぶれは気になるところではあるんですよね」
少し裏があるようで。
「わかりました、それでしたら…ラウンジで待ってくださればいいと思います」
「はい、お待ちしてます」
会議は報告がメインのもので、色んな地域から参加者たちが集まってくる。
その中で、かえは少しばかり目を引いた。
(あれ?あの人って)
(前もいたことはいたけども、なんかこういうタイプだったかな)
神経質そうなイメージがあったようだが、そのトゲを何故か感じなかった。
会議が終わると、どこかに飲みに行こうかなんて話の中。
「あの良ければ、俺たち飲みに行くんですけども、ご一緒に」
などと誘われる。
一番最初に誘った男を見ながら、後ろで何人かがお前もか!みたいな顔をしていて。
「ごめんなさい、約束がありますので」
そういって笑顔で断ると、エレベーターに乗った。そのエレベーターは何故かこみ合ったが、かえはあまり気にしないようだった。
一階に到着すると。
「かえさん!」
「濡島さん」
そこで濡島の姿を見た、エレベーターに一緒に乗った客たちは、えっ?お前なの?という顔をしたり、ため息ついて帰るものもいた。
「えっ?濡島?」
そことは全然関係ないところが、その名前を聞いて反応した。
「濡島じゃん!こんなところで会うなんて久しぶり」
「そっちこそ、元気か?」
「濡島さん、こちらの方は?」
「ああ、かえさん、紹介しますよ、こっちは学友というやつです」
「どうも、結構付き合いが長い学友です。それで…こちらの方、濡島の…」
「まだ付き合ってはいないが、これからお食事に行く」
「あっ、そういうのなのね。うん、濡島なら問題ない」
「そう?」
「そうだよ」
そこで声を落として。
(悪いが二人ともさっさとこっから離れろ、詳しいに話は後でするから)
(じゃあ、任せたぜ)
(今度奢れよ)
そういってホテルを後にして、予約していたれすにやって来たというやつである。
「やっぱり美味しいんですけどもね、かえさんと一緒だからさらに四倍ぐらい楽しい」
「もう大袈裟ですよ」
「最近人材不足だから、かえさんみたいなタイプは、あちこちで引く手数多になってると思うんですよ」
「それで気を付けるようにですか」
「はい、まあ、直接来るかと言われると確率は低いですけどもね、経験積んでいるというのは思った以上に貴重になってきてますから」
「それは濡島さんもでは?」
「俺はまだ代わりが利きますよ。でもかえさんは性格に難しかないような地域でも務め上げてきてしまったため、任せる、投げるにはちょうどいいんですよ」
「…それは…そういう手口はありますもんね」
「そうだから、ここで俺がいれば、同じ業界の人間ですからね、牽制にはなる。このバリアは強固だ」
普通の相手だとここが弱かったりする。
無理矢理やれば決まってしまうとか、強引な手段にでがち。
「私はあなたの騎士役を務めることは光栄なことだと思ってますから」
胸に手を当てて、大袈裟に述べる。
「もう…でも本当に付き合い方はどうするのか考えなければね」
「何も考えてないと流されてしまいますから、それは怖いことだし、大抵の人は考えないまま動くから、気づいたときには手遅れになったりするんですよ」
そういうことをするような人たちもたくさんいるアットホームな業界です。
「染まりたくはありませんね」
「それはね、そう思います」
「濡島さんは不思議な人ね」
「そうですかね?」
「ええ、とても不思議よ」
この時に気を許した顔をするのが、濡島にとってはたまらない。
そのたまらなさが、驚きという表情になってしまうので。
「どうしましたか?」
「いえ、そうですね、はい、その…、なんでもありません」
「本当になんでもないのですか?私は変なことを言ってしまいましたか?」
「あなたは何も悪くない、ただ…ね…」
その目で見つめられると、ゾクゾクっとしたものが自分の中を駆け抜け続けてしまって、困るんだ。
これが一人ならば、「好き!」と絶叫してゴロゴロンできるが、そういう喜びの表現をここでやったら、全てを台無しにする自信はある。
(頑張れ俺、我慢しろ、できる子でしょ!)
「本当に大丈夫ですか?」
(いつもと違う、よそ行きのかえさんはとても可愛い、本当に可愛い。いや、これさ可愛いすぎでしょ)
会議のためにいつもとは違う、お仕事な格好になるのだが、フォーマルが微妙に慣れてないので、可愛さ、甘さ、油断が見えてくる。
(これが連勤になると疲れが目立つんだよ)
やはり労働はしすぎてはいけない。
「すいませんね、俺はあなたのことが好きなので、いつものお姿でもドキドキするのに、今日はしっかりな感じなんですもん」
「似合わないですよね」
「いえいえ」
それがいい。それが仕事を感じさせないからとでいい
仕事を感じさせるものなんて、何も見たくないときだってあるが…これは違うのです。
「エレベーターから降りたときに、俺の名前を呼んでくれたのがもう幸せで」
あそこにいた奴等よりも自分を選んでくれた、もうそれで満足なのである。
「あれは勘違いされましたね」
「いいじゃないですか、それは幸せな勘違いというやつですよ」
次の日の昼には、またのんびりとした避暑地に戻ってきた。
「濡島さん、スイカをいただいてきたので、食べませんか?」
「いいですね、食べましょう」
濡島はそういって仕事の手を休めることにした。
「お仕事の方は?」
「予定より早く終わってしまって、他の作業を渡されてて、こちらはできるときにやってくれればというやつですね」
これができる人間というやつである。
元々そういうところがあったのだが、前職の環境でやる気というのがどこかにいなくなってしまった。
しかしだ、かえさんがいる、一緒に過ごせるとなったら、そのやる気が長々と留守にしておりましたが、戻ることにいたしましたと挨拶でもしたのか、仕事の処理能力がババッと上がったのである。
「さすがにこれは予定外だし、その予定外の力を存分に発揮してもらうならば、今のままでいいんじゃないな」
との評価で、濡島はリモートがメインになった。
濡島も途中で、そこが評価されているのがわかったのと、都会にある自宅の空調が壊れてまだ決着がついてないこともあり、当面はこちらにいることに決める。
「美味しそうだ」
そういって濡島は座ろうとするのだが、こちらに当初よりも、近い距離に変わってきてた。
まあ、これは実際に濡島がそういう場所に位置を変えてきてるのも大きな理由なのだが、かえの方も受けていれるので、そこまで大きな問題にはならないだろう。
「台風、どうなるんでしょうね」
「お米も心配だわ」
このまま何事もなく日々が過ごせていけますように、たぶんそれで幸せなのだ。
「『かえ』さんとの出会いもそうですかね」
ご飯を食べているときに、濡島(ぬれしま)はそういった。
「そうなんですか?」
「最初は転職の話の中に出てきましたから」
そこで思わず。
「最後の人は、かえさんのことね、大丈夫なんですか?って自然に出てしまったんですよ。その時に話していた人が覚えていてね」
濡島さん、よろしければなんですが、宿泊費は無料になるんで、こちらで一週間過ごしたりしてみませんか?
それはずいぶん太っ腹な話ですが、どういうことなんですか?
いわゆる稼働率が悪い民泊というやつなんですよ、管理してくれる人の仕事にもってことで。
へぇ~
その管理人さんっていうのが、前に濡島さんが心配していた最後の人ってやつで。
ああ、なるほど。
まあ、ご興味あれば、こちらに連絡してみてくださいよ。
そういって連絡先は渡された。
「自分でも調べたんですが、やっぱり真夏に涼しいというのが、一番の魅力ってやつでしたね」
ゴロゴロできる気温最高!
「これも本当に寸前にそうなったといいますか」
「あっ、その竜のお姉さんは見ましたよ」
ゴンゴンゴン~
「なんというか、モテるんだなってはわかりました」
「そうなんですよ、モテることはモテるといいますか」
「あれは大変だ、言い寄られてる側の困った顔がわかってない」
「もうちょっと皆さま方も、男女間の機微をわかってくれたらな…とは思いますけどもね」
「新しい恋をするには遠いことになるのかな」
「そうかもしれませんね。なんで前の方と上手く行ってたのかわかったような気がします」
「あれだと、仕事とプライベート、一線引いてません?」
「引いてるみたいですね。そういえば私とは結構喋ってくださる、ほら、私の名前が『かえ』でしょ」
私の名前の一つ、気に入っている名前の一つが「楓」でもあるんだよ。
「えっ?名前をお教えに」
「本当のお名前はあるのでしょうけども、ええ、教えてくださいましたよ」
風という字、意味ならばどこかにそのまま流される、風の強い日にお前さんは流されているぐらいだから、木がついていた方がいいだろう。
「その言い方だと名前をつけた人はまるで親のようだ」
「実際にそうみたいですよ、保護者の方が名付けたみたいです」
「竜のお姉さんじゃないですが、あなたと話すと俺も癒されるから」
「何をいってるですか?濡島さん」
「いや、だってこれは事実ですから、事実は伝えたいし」
「もう…」
「あなたの過去、色んなことがあって、前に進めていないのだろうけども、どうか一歩でも歩み始めてほしいとは思ってます」
「ありがとう」
「でもちょっと今日は嬉しくて」
「なんでです?」
「こうしてあなたと食事ができるからですよ」
そう、ここは避暑地ではない。
「実は会議に行くことになりまして、濡島さんはこの会場のそばは詳しいにではないかと」
「それこそ、前職では大変お世話になりました、人生とは苦いもの、その味を教えてもらいましたっていう思い出がたくさんつまっているので詳しいですね」
「それは思い出さない方がいいのでは?」
「いいえ、いいえ、それで結構詳しいですよ。早朝から営業している美味しいところとか、待ち時間に便利なお店とか」
そこで会議の時間を聞いて、それならばとおすすめを紹介してもらった。
「でもそれならば会議の後、お食事でも行きませんか?」
「えっ?」
「一人だとなかなか行けないお店があるんですよ、そこは美味しいのですが、その~男性一人ではね。あっ、前は取引先の人たちと行きましたよ、デートなんかじゃありませんよ!」
「そこは信じてますが、なんですか?いきなり…」
「いえ、疑わしい行動は、誠実な愛を遠ざけるものも思ってますので」
「それは…確かに、そういう人とは縁がない方がいいかもしれません」
「本当ですよ!で、どうしましょうか?」
「でもそれだと、濡島さんもわざわざ会場近くまでお越しになると」
「ちょっと参加者の顔ぶれは気になるところではあるんですよね」
少し裏があるようで。
「わかりました、それでしたら…ラウンジで待ってくださればいいと思います」
「はい、お待ちしてます」
会議は報告がメインのもので、色んな地域から参加者たちが集まってくる。
その中で、かえは少しばかり目を引いた。
(あれ?あの人って)
(前もいたことはいたけども、なんかこういうタイプだったかな)
神経質そうなイメージがあったようだが、そのトゲを何故か感じなかった。
会議が終わると、どこかに飲みに行こうかなんて話の中。
「あの良ければ、俺たち飲みに行くんですけども、ご一緒に」
などと誘われる。
一番最初に誘った男を見ながら、後ろで何人かがお前もか!みたいな顔をしていて。
「ごめんなさい、約束がありますので」
そういって笑顔で断ると、エレベーターに乗った。そのエレベーターは何故かこみ合ったが、かえはあまり気にしないようだった。
一階に到着すると。
「かえさん!」
「濡島さん」
そこで濡島の姿を見た、エレベーターに一緒に乗った客たちは、えっ?お前なの?という顔をしたり、ため息ついて帰るものもいた。
「えっ?濡島?」
そことは全然関係ないところが、その名前を聞いて反応した。
「濡島じゃん!こんなところで会うなんて久しぶり」
「そっちこそ、元気か?」
「濡島さん、こちらの方は?」
「ああ、かえさん、紹介しますよ、こっちは学友というやつです」
「どうも、結構付き合いが長い学友です。それで…こちらの方、濡島の…」
「まだ付き合ってはいないが、これからお食事に行く」
「あっ、そういうのなのね。うん、濡島なら問題ない」
「そう?」
「そうだよ」
そこで声を落として。
(悪いが二人ともさっさとこっから離れろ、詳しいに話は後でするから)
(じゃあ、任せたぜ)
(今度奢れよ)
そういってホテルを後にして、予約していたれすにやって来たというやつである。
「やっぱり美味しいんですけどもね、かえさんと一緒だからさらに四倍ぐらい楽しい」
「もう大袈裟ですよ」
「最近人材不足だから、かえさんみたいなタイプは、あちこちで引く手数多になってると思うんですよ」
「それで気を付けるようにですか」
「はい、まあ、直接来るかと言われると確率は低いですけどもね、経験積んでいるというのは思った以上に貴重になってきてますから」
「それは濡島さんもでは?」
「俺はまだ代わりが利きますよ。でもかえさんは性格に難しかないような地域でも務め上げてきてしまったため、任せる、投げるにはちょうどいいんですよ」
「…それは…そういう手口はありますもんね」
「そうだから、ここで俺がいれば、同じ業界の人間ですからね、牽制にはなる。このバリアは強固だ」
普通の相手だとここが弱かったりする。
無理矢理やれば決まってしまうとか、強引な手段にでがち。
「私はあなたの騎士役を務めることは光栄なことだと思ってますから」
胸に手を当てて、大袈裟に述べる。
「もう…でも本当に付き合い方はどうするのか考えなければね」
「何も考えてないと流されてしまいますから、それは怖いことだし、大抵の人は考えないまま動くから、気づいたときには手遅れになったりするんですよ」
そういうことをするような人たちもたくさんいるアットホームな業界です。
「染まりたくはありませんね」
「それはね、そう思います」
「濡島さんは不思議な人ね」
「そうですかね?」
「ええ、とても不思議よ」
この時に気を許した顔をするのが、濡島にとってはたまらない。
そのたまらなさが、驚きという表情になってしまうので。
「どうしましたか?」
「いえ、そうですね、はい、その…、なんでもありません」
「本当になんでもないのですか?私は変なことを言ってしまいましたか?」
「あなたは何も悪くない、ただ…ね…」
その目で見つめられると、ゾクゾクっとしたものが自分の中を駆け抜け続けてしまって、困るんだ。
これが一人ならば、「好き!」と絶叫してゴロゴロンできるが、そういう喜びの表現をここでやったら、全てを台無しにする自信はある。
(頑張れ俺、我慢しろ、できる子でしょ!)
「本当に大丈夫ですか?」
(いつもと違う、よそ行きのかえさんはとても可愛い、本当に可愛い。いや、これさ可愛いすぎでしょ)
会議のためにいつもとは違う、お仕事な格好になるのだが、フォーマルが微妙に慣れてないので、可愛さ、甘さ、油断が見えてくる。
(これが連勤になると疲れが目立つんだよ)
やはり労働はしすぎてはいけない。
「すいませんね、俺はあなたのことが好きなので、いつものお姿でもドキドキするのに、今日はしっかりな感じなんですもん」
「似合わないですよね」
「いえいえ」
それがいい。それが仕事を感じさせないからとでいい
仕事を感じさせるものなんて、何も見たくないときだってあるが…これは違うのです。
「エレベーターから降りたときに、俺の名前を呼んでくれたのがもう幸せで」
あそこにいた奴等よりも自分を選んでくれた、もうそれで満足なのである。
「あれは勘違いされましたね」
「いいじゃないですか、それは幸せな勘違いというやつですよ」
次の日の昼には、またのんびりとした避暑地に戻ってきた。
「濡島さん、スイカをいただいてきたので、食べませんか?」
「いいですね、食べましょう」
濡島はそういって仕事の手を休めることにした。
「お仕事の方は?」
「予定より早く終わってしまって、他の作業を渡されてて、こちらはできるときにやってくれればというやつですね」
これができる人間というやつである。
元々そういうところがあったのだが、前職の環境でやる気というのがどこかにいなくなってしまった。
しかしだ、かえさんがいる、一緒に過ごせるとなったら、そのやる気が長々と留守にしておりましたが、戻ることにいたしましたと挨拶でもしたのか、仕事の処理能力がババッと上がったのである。
「さすがにこれは予定外だし、その予定外の力を存分に発揮してもらうならば、今のままでいいんじゃないな」
との評価で、濡島はリモートがメインになった。
濡島も途中で、そこが評価されているのがわかったのと、都会にある自宅の空調が壊れてまだ決着がついてないこともあり、当面はこちらにいることに決める。
「美味しそうだ」
そういって濡島は座ろうとするのだが、こちらに当初よりも、近い距離に変わってきてた。
まあ、これは実際に濡島がそういう場所に位置を変えてきてるのも大きな理由なのだが、かえの方も受けていれるので、そこまで大きな問題にはならないだろう。
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