浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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お父さんとパパとダディ

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その瞬間、空気が凍ったというか。
「ご意見はわかりました」
幹部は冷静に対処をする。
「ただ、言葉をお選びになった方がよろしいかと、あなたのそれはご自分では誉め言葉と思われているのでしょうが、そうだと聞いている方は取れませんよ。では疲れましたし、みなさん、休憩にしましょうか」
そういうときはさすがと皆に思わせる何かがあった。
「お疲れ様でした」
「ありがとう」
「それでは休憩の方は…」
「私には必要はない」
「ですが…」
「先程のあの言動で、のんきに出来るのならば、どうにかしてる」
「わかりました、出すぎたことを言いましたことを謝罪いたします」
「そんなものは不要だ」
「ですが…」
「君が気を使うことではないし、それならば何か本でも読め、その方が人生は有意義だろ」
冷静に勤めてるだけであって、全然冷静じゃないことがよくわかった。
「何かあればすぐにおっしゃってください」
「ああ、そうするよ」


「ミツさんは大丈夫ですか?」
螺殻(らがら)ミツに対して、水芭(みずば)は気を使う。
「少しビックリはしました」
ただ顔には疲れが見て取れる。
「今日はbarも休みですから、一度戻って美味しいものでも食べましょうか」
「いいですね」
声のトーンが明るくなったのでホッとする。
帰りの車中において。
「組合の会合は武装も可能と聞いていたので、ずいぶん物騒だなと思いましたけど、今日初めてその理由がわかった気がします」
「俺は大人げないなとは思ってるよ」
「それはそうですが」
クスッとした仕草を見せたあと。
「でも本当にいきなりなんですね」
話し合いは、いきなり険悪な雰囲気になっていくのが、そのスピードがあっという間過ぎた。
「抑止力として武装しててもあれなんだよね、でも知ってる?あの幹部の人はね、丸腰なんだよ」
「えっ?」
「それは有名な話、自分でも公言してるよ」
人というのは納得しなければ、その時は言うことを聞いたとしても、結局は上手くいかないものですから。
「確かに前に襲撃されたときも、こう…落ち着いてましたね」
ミツは前職で要人の警護も遠巻きだが参加したことがある、わがままな人が多く、事が起きると、危ない行動を取りがちになるというイメージがあるが。
「幹部さんはそういうのがなかったかな、それこそ誰を狙ってるのかとか、すごく考えてた気はします」
「むしろそこに頭使ってる人だよ、誰か敵で味方でどっちでもないのかを、まず分けている感じ」
「うちの事務所はどう見えているんですかね」
「虎の尾さえ踏まなければ敵対しないっていうわかりやすさはあるなら、それなら踏んでこないと思う」
「うちの虎の尾」
「それこそ、うちらしくないっていうのかな」
「美学ですね」
「そうそう、なんかうちはあるよね。まあ、それがあるおかげで生きやすいところはあるよ、覆木(おおうき)さんや瀬旭(せきょく)さんがこれはうちはやらないって決めたことは、確かに手を出さない方がいいかなって思うしね」
「それはわかるような気がします、他の人たちからすればなんでそんなことするの?って言われるようなこともありますが、そんなうちの事務所は好きですね」
お節介を焼いたことで、とんでもないことが起きたとしても、まっ、そういうこともあるでしょうよ。ぐらいで終わらせるこの事務所。
「古臭いやり方を踏襲しているとは言われるけどもね、悪いけども、それがうちなんでって」
水芭のその言い方でこの間barの出禁を言い渡したお客さんを思い出した。
「そんなに古いことを守り続けるということがダメというか、忌避されることなんですかね」
「どうしたの?急に…ああ、この間のことね。う~ん、それは俺にはわからないよ、俺は多少たりとも守ってるからかもしれないけどもさ」
「私も守ってる方だからかな」
「わからないものはわからなくてもいいんじゃないかな、わかろうとするぐらいでさ」
「それでいいんでしょうか?」
「とりあえずはね、いいとは思う。ただいきなり否定から入られると、どうしようもないんだけど…」
「ああ、それは…」
「ごめん、やっぱり俺もよくわからないや」
「なんかモヤモヤしますね」
「そうだね」
それでも何とか言葉を探すが見つからないまま事務所へ。
「あれ?どうしたの?」
瀬旭である。
「ああ、ちょっと会合で怒声が」
「それならばやっぱり俺がついていけば良かった」
「それだと会合は円滑に進行はするでしょうが、中味があるのかな?」
「ちょっとそれはひどいと思う」
「世間話に夢中になったことあるじゃないですか」
「だってあそこで久しぶりに会うから、こんにちはしてただけじゃないか」
「壇上からそこはうるさいですよって言われたの忘れたんですか」
「あっ」
「忘れたんですか?」
「言われたら思い出した。そうだったなって」
「もう少し反省してくださいよ、これだから」
「ごめん~それでそのまま、その後はどうしたの?さすがにすぐに帰ってきたから、すぐに終わったんだと思うが」
「幹部さんが怒って終わりました」
「あいつは怒るのが仕事みたいなもんだからね、本当によく怒ってると思うよ」
他人事である。
「帰ってきたのならば仲間はずれにしないでよ」
覆木がやってくる。
帰ってきた二人の顔を見て。
「ちょっと何があったか報告もらえる」
「わかりました」
「ミツは温かいものとった方がいいかな?顔が少し青いから」
「そうさせてもらいます」
「ミツさん、紅茶でいい?」
「お願いします」
「それで何があったの?」
会合の話になり。
「俺が行けば良かったな」
「覆木さんがいつも行ってたら、本当に覆木さんの手が埋まったときに、誰も代わりが務まらなくなるからダメです」
「でも話を聞くと心配になる」
にこやかなパパの顔である。
「パパったらズルい!お父さんも」
お父さんこと瀬旭も追加である。
「人というのはいきなり変わるんですね」
「怖かっただろう?」
「でも私も一人前目指してますから、そこでビビってはいけませんから」
「あらやだうちの子強すぎ」
「オレの教育の賜物ね!」
「いや、それは俺でしょうよ」
おおっとどっちがミツの親かで張り合い始めたぞ。
「ミツさんうちに来る前から立派なレディですよ」
「そうなんだけどもさ、それでもさ」
「水芭、そこは親心なわけよ」
「すいません」
「いいの、いいの、水芭はそういうところがあるっていうのは、長い付き合いで十分わかってるし。クール気取ってるけども、心配性なとのろは十分うちの事務所の子って感じだよ」
「そうね、最初は面倒くさいなって顔をしたのに、今ではこんなに立派になって」
水芭に対しては二人は母属性になるのかもしれない。
「やめてくださいよ」
「思春期だ、思春期!」
「俺を一体何歳だと思ってるんですか」
「悪いな、やっぱり初めて会ったぐらいの年のままで見ちゃうもんなんだよ」
しかも術の関係で見た目もそう変わらないこともあるから。
「最近はこのままみんなで仲良く事務所やっていけたらいいなっていう、悟りの境地に入ってきたから」
「わかる、うちの事務所は最強ってことよね!」
絶賛しだしたら、ちょっとギャルが入ってきた。
「水芭さん、お二人ってずっとこんな調子なんですか?」
「俺が事務所に来たときにはそうだったかな、ただそのときはふざけた二人をお前らなって止める人はいたから」
「その人はどちらに?」
「いないということはそういうことだよ」
「すいません、変なことを聞きました」
「いいの、いいの、ただ今もいたら、もちろん会ってもらっていたさ」
「そしたらあいつ何て言うと思う?」
「そうだな…」
なんて悩んでいると。


「またお前ら、勝手に決めてきたの?」


「えっ?」
「どうしたの?ミツさん」
「いえ…」
知らない男の人の声が聞こえた。
「なんだよ、あいつが来てたのかよ」
覆木は笑っていた。
そこに電話が鳴り、水芭が取ると、覆木関係の問い合わせだったために、二人は離席することになる。
瀬旭とミツが二人だけになると。
「あの~瀬旭さん」
「どうしたんだい?ミツ?わかった、お化けが怖くなったのかな?大丈夫だよ、あいつはそんな奴じゃない」
「ああ、やっぱりさっきの瀬旭には聞こえてたんですね」
「どうしてそう思ったの?」
「私が振り替えってからみなさんを見たとき、瀬旭さんだけ目が少し小さく、驚いてたのかなって」
「やっぱり細かいところをミツは見てるな、隠すつもりはなかったんだけどもね、なんかこう言い出しにくいって奴で…」
「大事なお友達だったんですね」
「そうね、もっと長生きしてほしかったよ、そしたらミツにはお父さんとパパとダディがいたかもしれない」
「ダディですか」
「ダディじゃないかな?元々はそいつがbarの責任者だったんだ、だから水芭が二代目ってことだね」
「たまに水芭さんがいう、先代の味っていうのはその人のことですか」
「そう、オレと覆木とそいつ、そこからうちの事務所の前身は始まったからね、懐かしい、昨日のことのようだ、でも昨日にはミツがいないのは悩ましい、だから昨日に連れていきたくなるよ、そして見せたいね、この子はオレの娘で、あいつはオレの友達って」
「いいな」
「えっ?何が」
「私には友達はいますけども、背中を預けるってタイプではないから」
「そこはやっぱり違うよね。でもミツもそのうち会えると思うよ、自分の命を託せる、または逆に相手に命を託されるって関係性の相手がさ」
「全然想像がつかないな」
「いや~そんなもんよ、オレだってさ、射撃場で張り合ってたやつとか、口うるさいやつがそうなるとは本当に思ってなかったんだもん。お父さんとしては、この世界は危険ではあるから、安全なところにいてほしいという気持ちもあるんだけどもさ。KCJの戦闘資格取るって話になったときぐらいからかな、嬉しかったよ。やっぱりオレはこんなだから、この中でしか感じることがない関係性や喜びを、ミツが知ることになるんだろうなって、やっぱりこれは経験しないと、言葉でいっても伝わらないことがあるから…」
「瀬旭さん」
「そういうときはお父さんっていってよ」
「すいません」
「いいって、いいって。でもオレの技術をミツに残せるのはどんな形でさえ嬉しかったんだ」
「そうなんですか?」
「ああ、ミツも誰かに教えるようになったらわかると思うよ、そのうち可愛い…いや、それはお父さんとしては許せないな、うん、許せるもんじゃない」
「?」
「瀬旭さん、何やってるんですか?」
「その日のために、訓練は欠かせないかなって」
「蜂の巣にするつまりですか」
「いいね、それ、うん、言い訳も聞いてやれないとオレは思うんだ」
ミツにはそこまで言ってもピンと来ないようだ。


ぶっちゃけミツはモテるかっていうと、モテる。
が、後ろに怖い顔した3人がいるから、それを越えてまで彼女に話しかける男がいないだけという話であった。
「メッ」
おおっと申し訳ない貴女のことを忘れてた。
3人という高い壁を越えても、彼女がいる。彼女がいるうちは、この世を変えるぐらいの良縁でもなければ、サメの群れが試練となり相手を襲うことだろう。
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