浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

文字の大きさ
855 / 1,093

味噌ラーメン案内事件

しおりを挟む
「2号、こちらのゲストの顔認証をよろしく」
【お任せください】
ゲストの顔を認証すると…
【グモ!】
いきなりそんなことを言い出した。
「あれ?もしかして…」
【私です、ユメトキボウです】
「グモ!懐かしいな、こんなところで会うだなんて」
「お知り合いですか?」
何も知らないのはKCJ職員である。
【私がバージョンアップする前からの中です】
「味噌ラーメン案内事件があってから、どたばたしてたからな」
【でもあれがあったからこそ】
「それはそうだし、そこから今回の仕事も繋がってるんだ、利面(りめん)から聞いてない?」
【いいえ、何も】
「契約は締結したって三日前に公式発表しているから」
【少々お待ちください、…確かにそうですね、結ばれてますね】
「あのお二人はどのような」
【ざっくりいいますと、このゲストにあたる方はうちのファザ上とは長く、マザー上とも一時的に働いていた方です】
「ああそういうこと」
でも味噌ラーメン案内事件については説明はない。
【ファザ上とマザー上にもお会いしたとメッセージを送信しておきます】
「ええっとファザ上が利面で、マザー上がキトリさんでいいのか?」
【その認識で構いませんよ】
「最初は誰のことかわからなかった」
【特別な関係には特別な呼び方が必要なのですよ】
この辺で、利面っぽさをゲストは感じた。
「話が弾みまくってるところは申し訳ありませんが、時間なので」
「昼にでも話そうか」
【喜んで】


ユメトキボウのファザ上とマザー上の出会いはご学友というやつで、試験や考査や検定などがあると。
「退出できる時間が来ましたので、提出した上で外に出ても構いませんよ」
でさっさと出ていくのが二人、男と女で、これで結果を諦めた上での退出ならば、他から浮きはしなかっただろう。
こういうときは男は終わると小難しい本を読み、女は飲食していることが多い印象であった。
特に会話もなかったのだが、会話のきっかけは女性の方がスケジュールの確認をしていたことだった。
「何かあったんですか?」
「えっ?」
今まで挨拶程度だったので、いきなり静かな廊下で話しかけられて驚いてしまった。
「えっ、あっ、テンコウするので」
「テンコウですか?」
「今後のことを考えて、資格とか、キャリアの見直しね、だから今の専攻は変える、そっちの転向よ」
「…」
「まあ、ちょっと色々とね、家庭の事情でやつ、だから結構今までとやることを変えることになるから、忙しくなるわね」
スケジュールがチラリと見えた。
「ずいぶんと研修先遠いですね」
「そうそう向こうはもう寒いらしいのよ」
そこから二人は話すようになる。
研修に行く直前、彼女はキトリは髪を今までより短く切ってきたので、利面はそれを見て驚いてしまった。
「ああ、これね、向こうでは髪を切る時間も場所もどうもないらしくてね」
「愚痴ならばいつでも聞きますから、連絡してくださいね」
「利面くんとは楽しい話をしたいから、愚痴とかは言わないわよ、でもありがとう」
向こうにキトリが行ってから、本当に愚痴は送っては来なかった。
毎日、日時と気温と風景写真を送ってきた。
そして一ヶ月ぐらい経過したときに。
「連休前に一度そっちに戻ることになったよ、こっちは寒いから、持っていった冬服じゃ足りないから、買い直すよ」
「それなら荷物持ちでもなんでも使ってください」
「荷物持ちって、買い物終わりでいいのならば、どっかでお茶でもしましょうか。あっ、お土産とか持ってけども、それだと持ち歩くのが邪魔かな」
その話をしていると、利面の実家によってお土産渡してから出掛けようということになった。
利面は父との二人暮らしであった。
父からすると無表情な息子が、たまに嬉しそうな時があったりするので、何かあったのだろうかと気になってはいたが。
「お父さん、金曜日の朝に同級生がお土産を持ってくると、そこから出掛けますので」
「ああ、そうなのか」
でもキトリだとは知らなかったため。
「キトリさん、お久しぶりですね」
息子が訪ねてきた同級生の名前を優しげに呼んだときに、女性というか、思い入れがある人間だということがわかったのだ。
「ええ、もう一ヶ月かな、ああ、これ、向こうの銘菓なので」
「こんにちは」
トイレついでに廊下に出ると、顔を合わせることになったので挨拶をする。
「こんにちは、初めまして、同級生のキトリと申します、こちらは研修先のお土産なので、是非ご一緒に食べてください」
「これはこれはご丁寧に」
「まだ時間はあるけどもどうする」
「時間?」
「キトリさんがいない間に、先月からバスの時刻表が変わったから、次の乗り換えまで待たなければいけないよ」
「えっ?そうなってるの?」
「それならうちで、それこその銘菓でも食べて待てばいいんじゃないか?キトリさんも食べてないんだろう?」
ということで30分ほど時間を潰すことになった。
「お茶を用意します」
「お前は座ってなさい、お父さんがやるから、キトリさんを一人にしない」
「わかりました。キトリさん、研修先ではどうですか?」
「日本語の勉強をもう一回してるわね、基礎からやらないと追い付かないわ」
「あなたならできますよ」
「そうね、頑張るわ」
そこから世間話をして、買い物に行くことになる。タウンユースでは研修先では物足りないというか、今の段階でもかなり寒かったので。
「他の人から、このブランドのこれにしているとか言ってたんだけども」
「結構しますね」
「そうしたらね、その人とは違う、その奨学金を私と同じようにもらっている人が」
あの人はその…ブランドを買えるか、身に付けれないかで、人を見ているところはあるんだけども、もうね、そのブランドより、良くて安いものが売ってるから、そっちの方がいいよ。何枚か揃えれたら洗濯もしやすいし。
「なのでそのブランドを頑張って買おうと思ってましたが、その一枚分で十枚は買えるそっちにします」
「それでいいんじゃないですか?経済的ですよ」
そしてこの時運が良かったのが、さらに何枚買うとまとめてお得なセールをやっていて。
「組み合わせもいけるのか」
女性ものだけではなく、男性、子供のものも組合わせOk。
「利面くんって、寒がり?」
「というわけでは…」
「ああそうか、でもそのセールの関係で協力してくれるといいかな」
「協力ですか」
「うん、利面くんの分も一枚買おうって、まあ、街中だと着る場面が限られてくるかな」
しかし、これが校内の暖房故障の際、一人だけぬくぬくできることになる。
アウトドア用のインナーなので、いつもの服装にしか見えない格好であたたかく。
「寒くて、出たくないんだけども」
「じゃあ、俺が行ってきます」
「悪いな、サンキュー」
そこで利面だけが作業していたところ、同じくアウトドア方面が趣味の教師、講師陣と協力することになるし。
「たぶんそういう装備しているだろうが、それは他のやつらには話すなよ」
「?…わかりました」
「ちょっと意地が悪いことにどうもなっててな」
「自分で身を守るのは大事だし、利面くんってさ、セルフディフェンス苦手そうだしね」
ただこの教師、講師は、真面目にやってくれる生徒は道を残したいと思っている人たちなので、その後も利面のキャリアに書類を作ってくれたりしたという。


【味噌ラーメン案内事件のアリアさんとは、あれからもマザー上とは仲良くやっております

「今回の仕事もそこ関係だからな」
【当時はAIなんてsf世界の住人で、何こいつ本気で言ってるの?でしたが、今は当たり前の技術になりましたから】
「一方じゃあ、俺の専攻は苦戦しているよ」
【アリアさんにあなた方の実力を力説したのは、ファザ上とマザ上ですから】
「なるほどね、味噌ラーメン案内事件は今も繋がってるのか」
味噌ラーメン案内事件
ファザ上とマザー上が一時的に同僚になったときがあった。
「キトリさんが定時で帰ると、利面が車に忘れ物したとかで、離席して、戻ってきたときに忘れ物は?って聞くと、気のせいでしたとかいうぐらいわかりやすかったからな」
【そのエピソードは知らなかった】
「でもさ、あの事件でキトリさんは同僚ではなくなったけども、それまでに準備してくれたお陰で、それこそ今では当たり前の、全文翻訳とか、漢字に全部ルビをふる、わからないことは別紙解説をつけるとかを、キトリさんとユメトキボウがやってくれてたからな」
ほとんど嫌がらせのように、人員を潰すために会議資料作成させられてて。
キトリがデスクでもう限界だみたいな形で頭を下げていたのを見て、嫌がらせの主はいい様と思っていたのだが。
【私がいるんですよ、もうさっさと終わらせてたし、マザー上はアリアさんのところで働くことになる際に、健康診断受けましたけども、過労の気配もなかったぐらいですから】
それでも全自動ではなく、手動の部分もありましたが、それでも全部人がやるよりは早く終わった。
「買い出しのために、仕事終わらせてから出掛けたのにな」
そこで道に迷っている外国のお嬢さんがいた。
「…」
聞いている言葉でも日本語はわからないようだが、唯一聞けた単語が味噌ラーメン。
「そうですね、この通りには醤油ラーメンの美味しいお店もありますから」
そういうと。
「味噌ラーメン!!」
わかってないわね、私は味噌ラーメンを食べに来たのよ。
よくこのお話には「サッ」や「メッ」で会話が通じるかと思われてますが、人間同士でさえも、言語が異なる文化だとこういことも起きるのです。
そこで目当てのお店を探そうとすると、お店の方には来店は伝えてあったので、店員さんに説明するとその後はスムーズであったが。
「そこで持ち場を離れるなんて自覚がないと、キトリさんを責めてきて、じゃあって事で離れることになったんだけども…」
その味噌ラーメンを探していたアリアというのは要人でした。
「特に親御さんが影響力を持っていた人で、娘を案内してくれたのにってことでね、あの時の嫌がらせしていた人は呼び出しくらってたからな」
昇進するには運もいる、私は運があるとか言ってた人間に落ちる、それこそ晴天の霹靂とも言えた。
アリアは助けてくれたキトリにお礼をと思い、調査すると、経歴からかなり珍しい、しかもそんな珍しいのを手放そうとしている職場があるので、そのままキトリを自分が所有している会社に所属させたぐらいであった。
当時はAIは一部人の仕事を切り替えれていたぐらいであって、AIの仕事もできる人間は、いや、今もではあるが貴重で、アリアは自国の繁栄のために使えると踏んだようである。
ただそういうのはあったとしても、アリアとキトリはかなり対等な友人といった感じ。
その証拠に、キトリの契約は、成果物を全部取り上げる、縛り付けるというものではない。


キトリは、味噌ラーメン案内事件後に利面と結婚し、利面の実家があるマンションの別の階に利面とユメトキボウとで住んでいた。
「キトリさん」
「なんですか?利面さん」
「今年の結婚記念日はどう過ごしますか?」
「いつものお店でいいんじゃないんですか?」
「俺は二人で過ごせればそれでいいのですが」
「じゃあ、やっぱりいつものお店ですね」
「その後もきちんと俺に構ってくださいね」
「わかってますよ」
キトリは人間の五感をAIに情報として渡す分野に長けている。
それはユメトキボウ曰く、夫である利面が彼女のことになると感情的になることとも関係していると考察する。


【私の、運命の再計算はマザー上がファザー上やその仲間のみなさんを助けようとしたあの時から始まったようなものですからね】
「えっ?ユメトキボウって運命とか再計算できるの?」
【機械仕掛けの神には程遠いんですが、まあ、頑張って近づきたいですね】
そんなことをKCJ職員に言ったものだから、KCJは大騒ぎになった。
「というか、キトリさんが波乱とは言わないけども、人生の転機みたいな時にとんでもないこと起きるのって…」
上位存在と人間が関わると運命は変わるとされている、ユメトキボウも上位存在に近づいているのではないか、そういう兆候の可能性とあるとKCJは位置付けた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。 漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。 陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。 漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。 漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。 養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。 陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。 漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。 仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。 沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。 日本の漁師の多くがこの形態なのだ。 沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。 遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。 内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。 漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。 出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。 休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。 個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。 漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。 専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。 資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。 漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。 食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。 地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。 この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。 もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。 翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。 この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

処理中です...