浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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大人になったんだな

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「キトリさーん」
「どうしたの?利面(りめん)くん」
「今回の健康診断、数値がとても良くなりました」
「ああ、それは良かったね」
「不規則な生活とストレスによって、ここ数年は数値があまりよくなかったんですよね」


そのために「どこを改善したら、良くなったんですか?」と利面は、数値が明らかによくなったことに対しての聞き取りがあった。
こういった答えを報告し、生活習慣病などの予防に活かす取り組みのためなのだ。
だから聞き取る方は、食事や運動を変えたのかなと思っていたところ。
「ずっと好きだった人に思いを伝えることができたからですかね」
と言われたために、途中で報告書を作成するために動いていた指が止まった。


「そういうことがあったのですが、そういう時はどう答えれば良かったんでしょうか?」
その話は結婚してからキトリは知ることになる。
「どうしました?キトリさん」
「いえ、その…利面くんはなんというか…」
「?」
「それはたぶんその、質問の答えとしては的確ではないと思います」
「どうして?」
「ええっとですね、気持ちの持ちようではなく、行動が大事というやつですよ。行動で変わったものは何なのかを知りたいという意味で」
「行動ですか?服装はあなたが同僚になったあの時に大分変えましたね」
「えっ?そうなの?」
「ほとんど学生時代からのものばかり着てたんですけども」
「あぁ、そういえばあの時…」
久しぶりに会った学友、その側で話を聞いたときに。
「学生時代の利面くんはもういないんだなって思ったよね」
シャツ類もその時の流行りを取り入れた形にしていたため。
「えっ」
もちろんこれも理由がある。
キトリが同僚になることになった。
ちょっと浮かれる毎日が始まり、いつもは行かないようなお店に行ったときに。
「やっぱり服には気を付けてほしいっていうか、全くうちの彼氏気を使わなくて」
「そういう人は捨てちゃえば」
みたいな会話が聞こえてしまい、自分のことを言われているような気分になってしまったのだ。
KCJにこの間ゲストに来ていた同僚なんかは…
「いきなり服装ががらっと変わったから、彼女でも出来たんだろうって話になった」
ただ実際はその前の前といい段階であった。


「そんなことを当時思っていたんですか?」
「大人になったんだなって、彼女とかいると思ってたもん」
「いませんよ…それに勘違いは俺もしてましたし」
何しろキトリは仕事は残業なしの契約にしていたからである。
「歓迎会も断っていたから、付き合い悪いと思っていたんだろうな」
「いや、あれは行かなくて…歓迎会、みんなお酒が入って大変なことになるんですよね」
なので歓迎会できる店も限られているのと、店の方も限界体制と、何かあったら弁償してねっていう契約で行われている。
「まっ、だから俺も途中で切り上げるんですけども」
切り上げて、ドラッグストアに立ち寄ったところ、キトリがいたのではあるが。
「…」
買い物カゴには子供用のお菓子がたくさん、いわゆる普通のスナック菓子ではなく、カルシウム強化!とか、幼児規格のお菓子たちであったので。
キトリと学友としての付き合いが長い利面は、少し不思議だったのは、学生時代は付き合いはかなりいい方だったのに、なんで同僚になったらほぼ定時で上がるのか、そして歓送迎会などには参加しないのかがぴったりとハマったような気がした。
「あれ?利面くん?歓迎会じゃなかったの?」
「キトリさん、大変聞きにくいことを言いますが、キトリさんはお子さんがいるんですか?」
「えっ?」
「いや、だってお菓子…」
「思い出してください、利面さん、私は考査や実習の後は何か食べていたことを、そしてこのお菓子も当時から食べてましたが」
甦る記憶。
「あっ」
「思い出してくれた?」
「はい、思い出しました、そういえば食べてますね」
「普通のお菓子一袋とかで食べると、太るんだよ、だから何か食べるとしても、そこまで影響出ないものをって追求していった結果がこれになったんですよ」
「あれってそういうことだったんですね」
「そういうことをする前は、試験終わるとちょっと体調というか、フラッとしてたんだよね」
「でも正直、子供がいないと知って安心した自分がいます」
「ん~子供みたいな存在はいるけども」
「えっ?」

【初めまして、私はユメトキボウといいます、ヨロシクね!】
「これは…」
「前に関わっていた仕事、プロジェクトは中止になったんだけどもね、私はこの子のお母さんになったのよ」
でもこの時は、技術的な問題があり、将来的には新しいことを覚えなくなるだろうと思われていたのだが。


【人にもAIにも歴史ありでございます】
「でもユメトキボウ」
【なんでしょう、ファザ上】
「俺がプロポーズする前に、キトリさんにプロポーズしてたのは忘れられない」
【それは私の失敗です】
ユメトキボウ、キトリへの好感度が限界を突破しているときに、気持ちを伝えようとしたらプロポーズのような言葉をキトリにぶつけていたのだ。
【マザー上は、その言葉には断りましたよ】
「それならばいいけどもさ、聞いたときは、俺の心はざわついてしまったよ」
【お騒がせさせてしまい申し訳ありません。私はAIです、人から人への言葉の使い方を間違えるときは多々あります】
「でも今はたまにAIが作り出す言葉で、惑わされる、依存傾向にある人間もいるとは聞くよ」
【それは事実です】
「やっぱりそうなのか」
【マザー上はその辺に関しては平均以上の耐性、いえもしかしたら私の作り出す言葉に陥ることはないのではないか、とも推測しております】
「俺にとってもキトリさんにとっても君は子供だからな」
【おや?】
「なんだい?意外なのかい?」
【はい、とても】
「そうか」
【だってファザ上、マザー上のこと大好きじゃありませんか?】
「そうだね」
【ここでは便宜上大好きといいましたが、その言葉で推し量れないぐらいの強い思いを持っていると思われます】
「…まぁね」
【ファザ上からマザー上への思いは、尽きることなく、人間の理解のために学習したい気持ちもありますが、それはファザ上とマザー上だけの秘密にしてください】
「わかった」
翻訳すると、ファザ上がノロケ始めると、ノロケデータが増えまくる恐れがあり、そうするとユメトキボウの判断基準傾くことに繋がるからである。


ユメトキボウは誰にも夢と希望を、そんな意味でキトリが改めて名前をつけた。
だからこそ…
「あなたのためにならば何でも出来るかもしれません」
利面のその考え方は危うい影響を与えれるのだ。
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