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今日はすんごいラッキデー
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「過去と未来と現在、どれか一つ選べ」
「何さ、いきなり」
「大事なことなんだよ、君にとってはさ」
知らない女はそういって席につかせる。
あれ?ここはどこだっけ?
「これから大変なことになるんだ、だからその前に君には選んでもらおうと思って」
「意味がわからないよ」
「わかるだろう?君にとっては何が大事かってことだし」
「選ばなかったものは?」
「さぁ、どうなるか、基本的には諦めた方がいいね」
「とんでもない話だな、あっ、これ飲んでいい?結構お酒には詳しいんだけども、このラベルは始めてみたな…セトゥ、フリュイ?」
「ちょっと向こうに借りがあってね、毎年一本こうして贈ってくる、今年も贈られてきたんだ」
「えっ?そんなの僕が手をつけていいわけ?」
「飲みたければ飲むといいよ」
「じゃあ、グラスは…君も飲むでしょ?」
「いや、私は…」
「せっかく君のためにと贈られてきたんだから、それは味わわないと、メゾンに申し訳はないよ」
「ああ、ではいただくよ」
なんか調子を、男の方に主導権をとられて困ってるようだった。
「あなたはいつもそうなの?」
「僕?そういえばそうだけども、そうじゃないといえばそうじゃない」
「優柔不断?」
「そう見えるらしいよ」
「そう」
「で?君はそんな僕に何か用?さっきの言い方だと、まるで僕の身にこれから何かが起こるみたいじゃないか」
「起こるんだよ」
その時ナイフで栓を抜いた。
「見た?結構きれいにやれたと思う。格好つけると上手く行かないから、今日は百点だね」
「あなたはいつもこうなの?」
「マイペースだね、いや君が焦っているみたいだから、僕のペースに合わせてもらっているって感じ」
「もう他人事のように」
「僕の身に何かが起きる、それは人生でよくあることだから、起こる前にどうする?って聞いてくれる君は優しいと思うよ、さぁ、どうぞ、いや~葡萄が薫るね、素晴らしい」
「ここで飲まないなら持って帰ってもらおうと思ってたの」
「なんで?」
「それなら忠告も信じるでしょ」
「では乾杯しよう」
チン!
「今日という出会いに」
「ええ、そうね」
「あれ?なんかご機嫌ナナメさんだね」
「いや、女性に優しすぎではないかと」
「そうかな」
「怖いわね」
「どういうところが」
「この姿で来るのは不味かったか」
「じゃあ、本当はどういう姿なの?」
「君の目じゃ、肉眼じゃわからない形をしているよ」
「想像がつかないし、逆に気になる」
「人の姿の方が話しやすいだろうと、いや、女性の姿を取ったのは失敗だった」
「ワインを分かち合うなら、その姿の方が僕は好き」
「もう酔ってない?」
「これ美味しいね、さっ、君も飲んでよ。このワインって何か逸話とかあるの?」
「あるわよ」
「教えてよ」
「特別なっていったでしょ、メゾンにとって、歴史に関わることに関わったからこそ、贈られる」
「へぇ、それってなに?」
「私の場合は単純に売り上げよ、面白くもない話よ」
「人でないもの、なんだっけこういうのを現す四字熟語があったと」
「森羅万象ね、まあ、ここには人以外がみんなってことだから、上も下も右も左もあるってことね」
ただ下といっても人間より下の存在というわけでもない。
「いや~美味しいね、圧倒間に僕の分は無くなっちゃった」
「ああ、それなら…」
「ダメ、それは君の分だ、きっちりボトルを半分づつにしよう」
「わかったわ」
そういって女性は飲み干す。
「ごちそうさまでした」
「良い飲みっぷりだ」
「普段は飲まないのよ」
「いつぶり?」
「結婚式以来かしら」
「友達の?」
「いえ自分の」
「えっ?既婚者!」
「別れたわよ」
「そうか」
「なんでホッとしているのよ」
「いや、なんか、なんかわからないけども、そうか~ってなった」
「なんで話をしに来たのに、全くといっていいほど進まないのよ」
「僕が君との時間を終わらせたくないからかもしれない」
「?」
「なんかそんな気がする」
「もう酔ってる?」
「いや、これそこまで度数が高くないというか…?」
「ああ、二日酔いはしないみたいよ、そういうのが従来のものよりかなり少ない作りで」
「へぇ~それはいいな」
「ただ作るのがその分大変ってやつよ」
「やっぱりそういうものなのか」
「話進めていい?」
「ちょっと嫌だけども」
「なんで嫌なの?」
「君との話が終わるのがね、久しぶりに誰かと話したというか、気を許せたというか、そんな感じの時間だからかもしれない」
「寂しい人ね」
「それは間違いなく」
「誰か共に生きる人を作りなさいよ」
「作らないままここに来て、もういないんじゃないかって」
「…」
「逆に君は?誰かと共に歩みたいとかはないの?」
「ないわね」
「じゃあ、そういうもの同士、こうしてたまに会わない?」
「会わないわよ」
「どうして?」
「役回り終わったら、お役ごめんにさっさとするわ」
「せっかく会ったのに」
「だってあなたの事は何も知らないもの」
「これから知っていけばいいよ、ワインはこういう感じで好き」
「そうなんだ、私は日本酒の方が好きかな、ただ日本酒でもワインよりというか、香りがあるものが好きだから」
「それはいいね、一緒に飲んでみたいな」
「あなたは人懐こい笑顔を見せているけども、私は人じゃないから、そんな顔を見せるのはやめなさいよ、他のにそれ見せたら、連れてかれるわよ」
「そしたら君が助けてくれそうだ」
「まあね」
「やっぱり」
「そういう意味では幸せものだと思うよ」
「なんかもう調子が…」
「はっはっ、お前も話しているとそうなるんだよとか、そういうやつなんだよなとか言われる、で?何が起きるの?」
「色々とよ、あなたが中心ではないけども、十中八九危ないから、だから三つのうちどれかは選んでねって」
「その一つを君が守ると」
「約束するわ、でないと私の身にも災難が振りかかってくるから、選んでくれないと私も動きようがない」
「君のおすすめは?」
「あなたにとって何が一番大事?」
「それは…」
「今思い浮かんだことでいいのよ」
「でもさ、そうじゃない、答えもあるんじゃないの?」
「あるわよ、でも失敗する確率が、いえ、出来ればそれは私は選びたくない」
「なんで」
「選択する前から血の味がするから、そのまま進めない方がいいかなって」
「君の血の味はどんな味がするの?」
「滴り落ちたら、苦い薬草でも芽吹くんじゃない」
「滋養強壮は間違いないね」
「あなたは本当に変わってる、そんなにずれているんじゃ、人の中では生きづらいんじゃないの」
「かもしれないけども、それでも生きてこれたよ」
「良い人生ね」
「ああ、たまらなくね」
「少しだけ頑張ってあげる」
「えっ?」
「選択をあなたがする前に頑張ってあげる、そうしたら選択肢もたぶん変わるから」
「また君に会える?」
「えっ?会わないわよ、私の好みの男ではないから」
「それは残念だな」
「じゃあね」
「でもこの夜の事は忘れないよ」
ピリッ
「なんであなたの方が干渉できるのよ」
「君に忘れてほしくはないからさ、なるほど君の男性の好みは、僕とはえらい違うんだな」
「そうよ」
「でも君って考え方で男に惚れるんだね」
「見えているのが怖い」
「なんでかな、ワインの力かな、君のことを知りたいと思ったら、少しわかるというか、なるほどね…」
「ちょっとどこまで見えているのよ」
「いや、それは色々と、なるほど、なるほど、これは女心の勉強になる」
「嘘でしょ」
「僕ってそんなおかしなことをしてる?」
「してるわよ、なんで一時的に場だけじゃなくて、能力の主導権も取ってるのよ」
「それは君が力があってもあまり使わないタイプだし、守護者なんだね、強すぎる力のブレーキを役割りを持ってる、酔いもちょうどよくなってるからこそ、わかる」
星の巡りが指し示したからこそやって来た。
「本来の姿というか、星天の下で、正装している姿は実際に見てみたいんですが」
「そこまで見えるのって、本当に人かしら」
「お酒の力ってすごいね」
「そのお酒にそこまではないはず…新しい命を宿す手伝いはできるけども」
「いいじゃないですか、それ、僕があなたと結婚して生まれる子には七果(ななか)とつけましょう」
さっきボトルを読んでいたが、セトゥフリュイはワイン名ではなく、使われている葡萄のことで、 7つ、果実から、七果らしい。
「呆れましたか?」
「少し」
「なんで?」
「人ってすごいなって、大抵は忠告に耳を貸さないで破滅するとか、がっかりすることになるのに」
役目的に言わなければならないので、またそうなるんだと思ったら、自分の意見言いまくる人間だった。
「あなたは幸せになりなさいよ」
「君がいれば幸せになれるよ」
「酔ってますね」
「これぐらいは酔いのうちには入りませんが」
「そういう時に誘われても信じないので」
「じゃあ、素面の時に口説きます」
「いや、もう会わないし」
「なんでそんなこと言うんですか」
「もう人に積極的に関わろうとは思わないよ」
「前の男も人間だったじゃないですか」
「…そうね」
「これが同種族でないならば諦めますよ、でもね、僕と同じ人間ならば話は別だ、なんであの男がよくて、僕ではダメなのか、教えてもらいたいんですが」
「そこまで言わなきゃならないの」
「言ってくださいよ」
「それなりに恋をして楽しかったのよ、まあ、向こうに好きな人が出来たからわかれたからいいんだけども」
「なんでそこで諦めるんですか?」
「まあ、流れる時間も違うし」
「森羅万象娘のどこが悪いんですか、相手がいなくなった後もずっと愛してくれる、そんなのが羨ましいぐらいだ」
「それは重いでしょ」
「愛は重たいぐらいがいい!」
「それは…そこで何もないからよ、ずいぶんあなたは…恋愛ごとに…」
そこで彼女が目の前の男の心を自然と見ようとすると…
「ごめんなさい」
「どうしました?」
「いえ、そういうのは見てはいけないから」
「いやいや、見てくださいよ、お互いを知るためには必要なことだ」
「ダメだよ、そういうのは、あなたの大切な記憶でもある、それを勝手に見てはいけない」
「あなたは優しい人だな、その力があっても奮うことはあまりない、他のやつならば俺様になってもおかしくないのに」
「そういうのは早いから」
「ああ、三日天下みたいな」
「そうそう、そういうのはね…」
「巨大な力を扱うのに溺れてはいけないってことですか」
「そうね、私はまだ溺れられない」
「辛くありません?」
「でも仕事だからね、今回も誰かが引き受けないと、全滅の可能性はあるから、それは困っちゃうでしょ」
「だから自分の身を、ちょっと今だって痛いでしょ?」
「でも取り返しのつく痛みよ、後悔よりはすっとマシ」
「俺はあなたを癒してあげたい」
「でも生活力が少しばかり…そのね…もう少し自分にも優しくしてあげて、人に気遣うのもわかるけども」
「そんなにダメですか?」
「なんで、そうなのかしら、もっと自分を愛してあげなさい」
「そんなつもりはありませんが…そう見えます
か?」
「見える、見える、しょうがない人だ」
「そんなしょうがない人、僕についてどう思いますか?」
「多少はこっちが引き受けてやるから、それで勘弁しなさいよ」
「え~もう一声」
「大分これでもまけてますよ、お兄さん」
「そこをなんとか、お願いしますよ。確かに自分の人生がかかっているのはわかりますが、あなたの方にまで何かが及ぶのは避けたいんです、なんであなたは?逃げようとすれば逃げれるのに」
「それでは可哀相じゃないか」
「えっ?」
「これから起こること、防げるかもしれないのに、見向きもしないなんて、どうかしている」
「人間は愚かなところがあります」
「知ってる」
「それでも諦めが悪いんですよ」
「しょーがねーなー」
彼女は最後に笑ってた。
平穏な日常が、朝が今日も来る。
ニュースでは悲惨な事件を悲痛な面持ちで、アナウンサーは語るのだが、なんかこう、ちょっと僕には遠い話。
「でも何か物足りないというか」
はてはて?
そんな気分である。
いつもの調子で通勤したら、信号に連続して引っ掛かった、もう信号はないから気分は取り直そうとしたら。
「ちょっと兄ちゃん、この辺の人?ここに行きたいんだけども…」
「ああ、ここですか?面倒くさいですよ」
「道なりに進めばいいんだろう」
「いや、ここからだと、逆に反対側の有名なラーメン屋さんから進んでくるとわかりやすいんですが」
「もうこっちにきてしまったから」
「そうですよね」
それでも道を教えて。
「ありがとう、お兄ちゃん。頑張って見つけるわ、お兄ちゃんの今日はすんごいラッキデー!」
「はっはっはっ、ありがとうございます」
陽気な人だったな。イントネーションからこったの人じゃないようだ。
その時…
思い出したように、どこかに連絡をする。
「あっ、もしもし、俺ですけども、覚えている?」
「なんでこの番号を、えっ?なんで、せっかく今日一日幸運なのに、この番号に全振りしているのよ」
「全振りしたら届くみたいってわかったから、全振りした」
「…」
「呆れてる?」
「ええ、かなり」
「良かった、本当に一瞬だけわかったんだ、そしてもう番号が記憶から失せ始めているから、チャンスはさっきのあの時だけだったみたいだし」
「それは賭けでは?」
「人生には時には賭けが必要じゃない?」
「あなたはギャンブラーにはなれないわよ」
「そうだね、そういうのはよくわからないよ」
「で、ご用件は?」
「また会って」
「嫌よ」
「そこをなんとかお願いします」
「後五分迷ってくれれば、繋がらなかったのに、わかったわよ」
「わーい」
「もうこういう形で使うのはやめなさいよ、人から少し離れてくる」
「うん、わかった、そういうときは君が教えてね」
「私がいること前提かよ」
「君は僕の味方だろう?」
「どこでそんな自信が…資格を失うまではそうだけどもさ」
「じゃあ、絶対それを失わない」
「それはそれで楽しみだ」
この時の言い合いの結果はどうなったかって、我慢比べは今も続いている。
だから僕の勝ちのままだ。
「何さ、いきなり」
「大事なことなんだよ、君にとってはさ」
知らない女はそういって席につかせる。
あれ?ここはどこだっけ?
「これから大変なことになるんだ、だからその前に君には選んでもらおうと思って」
「意味がわからないよ」
「わかるだろう?君にとっては何が大事かってことだし」
「選ばなかったものは?」
「さぁ、どうなるか、基本的には諦めた方がいいね」
「とんでもない話だな、あっ、これ飲んでいい?結構お酒には詳しいんだけども、このラベルは始めてみたな…セトゥ、フリュイ?」
「ちょっと向こうに借りがあってね、毎年一本こうして贈ってくる、今年も贈られてきたんだ」
「えっ?そんなの僕が手をつけていいわけ?」
「飲みたければ飲むといいよ」
「じゃあ、グラスは…君も飲むでしょ?」
「いや、私は…」
「せっかく君のためにと贈られてきたんだから、それは味わわないと、メゾンに申し訳はないよ」
「ああ、ではいただくよ」
なんか調子を、男の方に主導権をとられて困ってるようだった。
「あなたはいつもそうなの?」
「僕?そういえばそうだけども、そうじゃないといえばそうじゃない」
「優柔不断?」
「そう見えるらしいよ」
「そう」
「で?君はそんな僕に何か用?さっきの言い方だと、まるで僕の身にこれから何かが起こるみたいじゃないか」
「起こるんだよ」
その時ナイフで栓を抜いた。
「見た?結構きれいにやれたと思う。格好つけると上手く行かないから、今日は百点だね」
「あなたはいつもこうなの?」
「マイペースだね、いや君が焦っているみたいだから、僕のペースに合わせてもらっているって感じ」
「もう他人事のように」
「僕の身に何かが起きる、それは人生でよくあることだから、起こる前にどうする?って聞いてくれる君は優しいと思うよ、さぁ、どうぞ、いや~葡萄が薫るね、素晴らしい」
「ここで飲まないなら持って帰ってもらおうと思ってたの」
「なんで?」
「それなら忠告も信じるでしょ」
「では乾杯しよう」
チン!
「今日という出会いに」
「ええ、そうね」
「あれ?なんかご機嫌ナナメさんだね」
「いや、女性に優しすぎではないかと」
「そうかな」
「怖いわね」
「どういうところが」
「この姿で来るのは不味かったか」
「じゃあ、本当はどういう姿なの?」
「君の目じゃ、肉眼じゃわからない形をしているよ」
「想像がつかないし、逆に気になる」
「人の姿の方が話しやすいだろうと、いや、女性の姿を取ったのは失敗だった」
「ワインを分かち合うなら、その姿の方が僕は好き」
「もう酔ってない?」
「これ美味しいね、さっ、君も飲んでよ。このワインって何か逸話とかあるの?」
「あるわよ」
「教えてよ」
「特別なっていったでしょ、メゾンにとって、歴史に関わることに関わったからこそ、贈られる」
「へぇ、それってなに?」
「私の場合は単純に売り上げよ、面白くもない話よ」
「人でないもの、なんだっけこういうのを現す四字熟語があったと」
「森羅万象ね、まあ、ここには人以外がみんなってことだから、上も下も右も左もあるってことね」
ただ下といっても人間より下の存在というわけでもない。
「いや~美味しいね、圧倒間に僕の分は無くなっちゃった」
「ああ、それなら…」
「ダメ、それは君の分だ、きっちりボトルを半分づつにしよう」
「わかったわ」
そういって女性は飲み干す。
「ごちそうさまでした」
「良い飲みっぷりだ」
「普段は飲まないのよ」
「いつぶり?」
「結婚式以来かしら」
「友達の?」
「いえ自分の」
「えっ?既婚者!」
「別れたわよ」
「そうか」
「なんでホッとしているのよ」
「いや、なんか、なんかわからないけども、そうか~ってなった」
「なんで話をしに来たのに、全くといっていいほど進まないのよ」
「僕が君との時間を終わらせたくないからかもしれない」
「?」
「なんかそんな気がする」
「もう酔ってる?」
「いや、これそこまで度数が高くないというか…?」
「ああ、二日酔いはしないみたいよ、そういうのが従来のものよりかなり少ない作りで」
「へぇ~それはいいな」
「ただ作るのがその分大変ってやつよ」
「やっぱりそういうものなのか」
「話進めていい?」
「ちょっと嫌だけども」
「なんで嫌なの?」
「君との話が終わるのがね、久しぶりに誰かと話したというか、気を許せたというか、そんな感じの時間だからかもしれない」
「寂しい人ね」
「それは間違いなく」
「誰か共に生きる人を作りなさいよ」
「作らないままここに来て、もういないんじゃないかって」
「…」
「逆に君は?誰かと共に歩みたいとかはないの?」
「ないわね」
「じゃあ、そういうもの同士、こうしてたまに会わない?」
「会わないわよ」
「どうして?」
「役回り終わったら、お役ごめんにさっさとするわ」
「せっかく会ったのに」
「だってあなたの事は何も知らないもの」
「これから知っていけばいいよ、ワインはこういう感じで好き」
「そうなんだ、私は日本酒の方が好きかな、ただ日本酒でもワインよりというか、香りがあるものが好きだから」
「それはいいね、一緒に飲んでみたいな」
「あなたは人懐こい笑顔を見せているけども、私は人じゃないから、そんな顔を見せるのはやめなさいよ、他のにそれ見せたら、連れてかれるわよ」
「そしたら君が助けてくれそうだ」
「まあね」
「やっぱり」
「そういう意味では幸せものだと思うよ」
「なんかもう調子が…」
「はっはっ、お前も話しているとそうなるんだよとか、そういうやつなんだよなとか言われる、で?何が起きるの?」
「色々とよ、あなたが中心ではないけども、十中八九危ないから、だから三つのうちどれかは選んでねって」
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「君のおすすめは?」
「あなたにとって何が一番大事?」
「それは…」
「今思い浮かんだことでいいのよ」
「でもさ、そうじゃない、答えもあるんじゃないの?」
「あるわよ、でも失敗する確率が、いえ、出来ればそれは私は選びたくない」
「なんで」
「選択する前から血の味がするから、そのまま進めない方がいいかなって」
「君の血の味はどんな味がするの?」
「滴り落ちたら、苦い薬草でも芽吹くんじゃない」
「滋養強壮は間違いないね」
「あなたは本当に変わってる、そんなにずれているんじゃ、人の中では生きづらいんじゃないの」
「かもしれないけども、それでも生きてこれたよ」
「良い人生ね」
「ああ、たまらなくね」
「少しだけ頑張ってあげる」
「えっ?」
「選択をあなたがする前に頑張ってあげる、そうしたら選択肢もたぶん変わるから」
「また君に会える?」
「えっ?会わないわよ、私の好みの男ではないから」
「それは残念だな」
「じゃあね」
「でもこの夜の事は忘れないよ」
ピリッ
「なんであなたの方が干渉できるのよ」
「君に忘れてほしくはないからさ、なるほど君の男性の好みは、僕とはえらい違うんだな」
「そうよ」
「でも君って考え方で男に惚れるんだね」
「見えているのが怖い」
「なんでかな、ワインの力かな、君のことを知りたいと思ったら、少しわかるというか、なるほどね…」
「ちょっとどこまで見えているのよ」
「いや、それは色々と、なるほど、なるほど、これは女心の勉強になる」
「嘘でしょ」
「僕ってそんなおかしなことをしてる?」
「してるわよ、なんで一時的に場だけじゃなくて、能力の主導権も取ってるのよ」
「それは君が力があってもあまり使わないタイプだし、守護者なんだね、強すぎる力のブレーキを役割りを持ってる、酔いもちょうどよくなってるからこそ、わかる」
星の巡りが指し示したからこそやって来た。
「本来の姿というか、星天の下で、正装している姿は実際に見てみたいんですが」
「そこまで見えるのって、本当に人かしら」
「お酒の力ってすごいね」
「そのお酒にそこまではないはず…新しい命を宿す手伝いはできるけども」
「いいじゃないですか、それ、僕があなたと結婚して生まれる子には七果(ななか)とつけましょう」
さっきボトルを読んでいたが、セトゥフリュイはワイン名ではなく、使われている葡萄のことで、 7つ、果実から、七果らしい。
「呆れましたか?」
「少し」
「なんで?」
「人ってすごいなって、大抵は忠告に耳を貸さないで破滅するとか、がっかりすることになるのに」
役目的に言わなければならないので、またそうなるんだと思ったら、自分の意見言いまくる人間だった。
「あなたは幸せになりなさいよ」
「君がいれば幸せになれるよ」
「酔ってますね」
「これぐらいは酔いのうちには入りませんが」
「そういう時に誘われても信じないので」
「じゃあ、素面の時に口説きます」
「いや、もう会わないし」
「なんでそんなこと言うんですか」
「もう人に積極的に関わろうとは思わないよ」
「前の男も人間だったじゃないですか」
「…そうね」
「これが同種族でないならば諦めますよ、でもね、僕と同じ人間ならば話は別だ、なんであの男がよくて、僕ではダメなのか、教えてもらいたいんですが」
「そこまで言わなきゃならないの」
「言ってくださいよ」
「それなりに恋をして楽しかったのよ、まあ、向こうに好きな人が出来たからわかれたからいいんだけども」
「なんでそこで諦めるんですか?」
「まあ、流れる時間も違うし」
「森羅万象娘のどこが悪いんですか、相手がいなくなった後もずっと愛してくれる、そんなのが羨ましいぐらいだ」
「それは重いでしょ」
「愛は重たいぐらいがいい!」
「それは…そこで何もないからよ、ずいぶんあなたは…恋愛ごとに…」
そこで彼女が目の前の男の心を自然と見ようとすると…
「ごめんなさい」
「どうしました?」
「いえ、そういうのは見てはいけないから」
「いやいや、見てくださいよ、お互いを知るためには必要なことだ」
「ダメだよ、そういうのは、あなたの大切な記憶でもある、それを勝手に見てはいけない」
「あなたは優しい人だな、その力があっても奮うことはあまりない、他のやつならば俺様になってもおかしくないのに」
「そういうのは早いから」
「ああ、三日天下みたいな」
「そうそう、そういうのはね…」
「巨大な力を扱うのに溺れてはいけないってことですか」
「そうね、私はまだ溺れられない」
「辛くありません?」
「でも仕事だからね、今回も誰かが引き受けないと、全滅の可能性はあるから、それは困っちゃうでしょ」
「だから自分の身を、ちょっと今だって痛いでしょ?」
「でも取り返しのつく痛みよ、後悔よりはすっとマシ」
「俺はあなたを癒してあげたい」
「でも生活力が少しばかり…そのね…もう少し自分にも優しくしてあげて、人に気遣うのもわかるけども」
「そんなにダメですか?」
「なんで、そうなのかしら、もっと自分を愛してあげなさい」
「そんなつもりはありませんが…そう見えます
か?」
「見える、見える、しょうがない人だ」
「そんなしょうがない人、僕についてどう思いますか?」
「多少はこっちが引き受けてやるから、それで勘弁しなさいよ」
「え~もう一声」
「大分これでもまけてますよ、お兄さん」
「そこをなんとか、お願いしますよ。確かに自分の人生がかかっているのはわかりますが、あなたの方にまで何かが及ぶのは避けたいんです、なんであなたは?逃げようとすれば逃げれるのに」
「それでは可哀相じゃないか」
「えっ?」
「これから起こること、防げるかもしれないのに、見向きもしないなんて、どうかしている」
「人間は愚かなところがあります」
「知ってる」
「それでも諦めが悪いんですよ」
「しょーがねーなー」
彼女は最後に笑ってた。
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「でも何か物足りないというか」
はてはて?
そんな気分である。
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「道なりに進めばいいんだろう」
「いや、ここからだと、逆に反対側の有名なラーメン屋さんから進んでくるとわかりやすいんですが」
「もうこっちにきてしまったから」
「そうですよね」
それでも道を教えて。
「ありがとう、お兄ちゃん。頑張って見つけるわ、お兄ちゃんの今日はすんごいラッキデー!」
「はっはっはっ、ありがとうございます」
陽気な人だったな。イントネーションからこったの人じゃないようだ。
その時…
思い出したように、どこかに連絡をする。
「あっ、もしもし、俺ですけども、覚えている?」
「なんでこの番号を、えっ?なんで、せっかく今日一日幸運なのに、この番号に全振りしているのよ」
「全振りしたら届くみたいってわかったから、全振りした」
「…」
「呆れてる?」
「ええ、かなり」
「良かった、本当に一瞬だけわかったんだ、そしてもう番号が記憶から失せ始めているから、チャンスはさっきのあの時だけだったみたいだし」
「それは賭けでは?」
「人生には時には賭けが必要じゃない?」
「あなたはギャンブラーにはなれないわよ」
「そうだね、そういうのはよくわからないよ」
「で、ご用件は?」
「また会って」
「嫌よ」
「そこをなんとかお願いします」
「後五分迷ってくれれば、繋がらなかったのに、わかったわよ」
「わーい」
「もうこういう形で使うのはやめなさいよ、人から少し離れてくる」
「うん、わかった、そういうときは君が教えてね」
「私がいること前提かよ」
「君は僕の味方だろう?」
「どこでそんな自信が…資格を失うまではそうだけどもさ」
「じゃあ、絶対それを失わない」
「それはそれで楽しみだ」
この時の言い合いの結果はどうなったかって、我慢比べは今も続いている。
だから僕の勝ちのままだ。
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