浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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死神とすれ違った

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「明日はどうするんだ?」
「買い物、でもビックリした、本屋が無くなってて」
「それはここ数年だな」
「手帳を店頭で見たかったんだけどもね」
「でもまだ店はあるから、なんだ、明日はそこか?」
「そうだね」
「じゃあ、一緒に行くか」
「私は買い物長いよ」
「長くてもいいさ」
「こういう話を昔は付き合えなかったのに」
学園祭の買い物をふと思い出した。
「大人になったんだ」

待ち合わせをすると、背が高く、スタイルもいいし、顔も整っていることもあり、彼を見ている人が結構いた。
「お疲れ~」
この職場の同僚風の挨拶。
「ああ、早いな」
「そっちこそ早いんじゃない」
「俺はいいんだ」
「私の方は朝から出動してきたから」
「なんだそれならば別の日にした方が…」
「支部に熊が」
「大丈夫なのか、それは」
「ああ、そこは大丈夫」

「ダメでしょうが!」
「サッ…」
サメが叱られている。
「あれはどうしたんですか?」
「後ろのビニールシート見える?」
「何ですか?あれ?」
そこで風がちょうどよく吹いて、シートの下の掌が。
「…熊ですね」
「熊なんだ」
通勤途中に熊に襲われたので、はっはっはっ、サメに舐めた真似するなんてこうなるんだよ!と返り討ちにした。
ただこの熊どうしようなって、そのまま置いておくわけにはいかないなら。
「KCJに持ってきたらしくて」
見て見て、さっき熊に教われちゃった!結構大きいよ!
寝ぼけ眼の職員たちは急いで、片付けることになった。


「猫がネズミなんて話は聞くけども、さすがにサメが熊をなんてのはわからないじゃん」
でも他の職員は、結構サメはそういうことをするよだった。
こんなデカイ熊が人里に、それこそ街中に出てきては大変だから、KCJでは熊を退治したサメには優しいこともあり。
「サメの方も、熊を倒せば誉められるという感じで…」
今回はドーナッツを揚げてもらいました。
大きいお皿で運ばれてくるドーナッツ、他のサメたちも羨ましい顔をして…
「もちろん分けてはいるけどもね、まずは最初に熊を退治したサメくんにってことだよ」
「ああ、そうだ、手帳を買い物した後は、どっかで茶でも飲むか」
「そうだね、この辺は詳しいの?」
「知らん、ただまあ、観光客が来ないような所は旨いだろうからな」
「ああ、それは、それならばうちの同僚に良さそうな店を、もう聞いておくよ」
そこでこの辺で美味しい、カフェ、喫茶店はないものかと聞くと。
「洋食屋さんなんだけども、ケーキとかコーヒーが美味しい店があるって、昼時は混むけども、そうじゃないならゆっくり出来るしだってさ」
「んじゃ、そこにするか」
「ええ」
「そういえば手帳って昔はつけてたのか?」
「いえ、そうではないね」
「忙しいからか」
「そうじゃないんだ、向こうに行ってたじゃん?」
向こうは異世界のことだ。
「あっちは紙が高級品だった、手漉きのものがほとんどだから、当たりハズレがとても大きくと、こっちの学童用品というか、勉強で使っていたノートが懐かしくなったぐらいだ」
「それだけじゃないだろう」
「ああ、帰れるか、そのままかわからなかったからね、日記というかつけていた、まあ、最初の方は向こうでも生活は安定してないから、保管はできずに捨てることになってしまったけども、安定した段階では、早めにそこはキープしたんだ」
それは現在は貴重な資料になっている。何しろ、日本語でかかれた日記、あの世界での出来事なのだから。
「食事とかもね、あっちはあまり美味しくないし、水と脂で体を壊すっていう感じ、栄養もあまりだね。ありがたいことに、私と勇者君は予防接種してたから助かったこともあった」
死神とすれ違ったと言われる病で。
「麻疹か」
「そうそう、それ、このぐらいの手かがりで推測できるのは凄いよ。私と勇者くんは、こっちの世界に帰還したときに調べてもらったけども、抗体がそこそこあった、ただ減少傾向にあるみたいだからって、もう一回接種したけどもね」
「それは怖いな」
「こっちの世界とあまり交流はないところだったからね、下手すると私たちが死神と間違えられたんじゃないかな」
ただこの二人がいないところでも起きたので、そうではないのかもな~ぐらいでした。
ちょうど行政の無料接種のポスターが見えたので。
「異世界にいつ巻き込まれるかはわからないから、接種はしておいた方がいいよ」
なんて冗談をいいながら、商業施設にやってきた。
「うわ」
「どうした?」
「可愛い」
「そうか…」
雑誌屋に並べられているものを見て、心を奪われている。
「私がもしも冷静さを失っていたら止めてくれ、絶対に予算オーバーしてしまうから」
実は冒険の終盤よりも気合いが入ってた。
「なんかこういうお店も、こっちに来たって感じ」
「向こうではどうなんだ?」
「直接商品を手に取ることはできなかったりするんだ、そもそもお店が基本的には紹介で、しかもさ、同業には買い物できないとかもあるんだよ」
「それは気に入ってたものが他の店にある場合は?」
「基本的に諦めるね、そういうのが揉める原因になるから」
「本当に全部違うところにいたんだな、好きなだけ買ったらどうだ?」
「そうなると、書き込みが追い付かないよ」
「でも今は、KCJの社宅なんだろ?」
「そう静かなところがいいだろうから、って」
一軒家タイプに住んである。
「あっちってさ、宿も安全とはいいがたいからね」
コツコツと廊下の足音で目が覚めることがある。
「今はKCJの敷地内+ケットシーかサメがいるからな」
ケットシーとサメは自分の縄張りに知らない顔がやってくると、すぐに集まってくるし。うろうろしているうちは足音も静かなのであった。
「この辺は転移被害者でもよくなっちゃうみたい」
恐怖は人を変えてしまうのだ。
「お前は、毎日が怖いか?」
「多少ね、まだ体力や経験があるから、転移もう一回ぐらいならばいけるだろうけども、そらでも以前みたいに頑張っていきようとは思えないな」
「なんでだ?」
「刷りきれているのかな、ダメなんだけどもね、それじゃ」
「わかったから、さっさと立ち直れ」
「意外とスパルタだな」
「その方がいい」
「わかったってここで言えたら、格好いいんだろうが、そうもいかないものだよ」
「悲しい目にあったのだから、100倍ぐらい幸せにならばいいだろう」
「雑な計算だな」
手帳もこれかな、いや、やっぱりこっちも捨てがたいと、自分の中で最強手帳決定戦が開催され、接戦の末、来年の手帳が決まったのである。
「踏ん切りがつきましたので、トイレ行きたいです」
「じゃあ、行ってこい」
敬礼しながら何故かトイレに向かうのを見たら、ふと安心したのだが。
(あれ?)
トイレから戻ってきたときは、いつもの神経質な顔になっており、彼女の姿を見ると、向こうから近づいてきた。
「早くここから出たい」
「何がありましたの?」
「声かけられた」
「あ~わかった」
イケメンの苦しみはわからないが、本人が嫌そうにしているので、さっさと離れることにした。
まあ、雑貨屋なんて女性客が多いだろうから、それにしてもトイレに行ってる間、一人になったらこれというのも凄まじいものである。
商業施設を後にしてから。
「声をかけてきたの、お前と一緒にいたことを知ってても話しかけてきたからな」
「狙われてましたね」
「そうだよ、女連れなら遠慮しろ」
「向こうは、私、連れている女を見て、イケる!って思ったんだろうな」
「節穴め」
「旦那、そうですか?」
「そうだよ!」
「でも外見というのは人が視覚情報で頼っている限りは、無視できないからな」
9割ぐらいが視覚から。
「だから上手く行かないんだよ」
「それはそうだろうけどもさ、でもそこを言うとさ~」
「なんだ、お前は俺の顔は嫌いか」
「美形だよね、整っている」
「そうか」
「これからどんな年齢を重ねていくのか楽しみだし、あなたはその顔が無くなったとしても、素敵じゃないかね」
「よくわかってるな、褒め方が上手いな」
「どういたしまして」
自分が納得はできないが、人が羨む力は、色んなものを呼び込んでしまうところがある。
「お前は自分の容姿については?」
「あっしはそこらの石ころですから」
「磨けば光る石だしな」
「磨かなくてもいいですよ、でも体力と気力は毎朝100%から始めたいな」
「それが出来るならば苦労しないだろう」
「食事は結構そんな感じにはしているんですよね」
「普通の食事は俺と食べているだろう?」
「だからそうじゃないときですよ」
「ますます毎晩食事を共にしたくなった」
「そうですか?まあ、私のその考えもあまりよくない兆候ってはいってましたからね」
何のために食べるのかな?
「当たり前の食事をしなくなると、体調がだんだんと悪くなってしまうし、悪くなってしまうと、すぐに崩しやすくなってしまうんで、それこそ体力維持の延長ですね」
そんな彼女を慕うサメのメメミヤさんは、もしも異世界転移がもう一回起きたら、彼女と一緒に飛び込むか、見つけるために探し続けるとは言われる。
「それもあるんですよね。サメは強い、強いけども、異世界だと、サメは生きてはいけるでしょう、でも人は…というパターンの話も聞きましたからね」
遺品類持ち帰るまで、それはそれは長いこと生きてたそうだ。
「それは俺にはできないからな、一緒に落ちるはできるだろう、ただ一緒に生き延びるはな」
「そこはしょうがないさ、こちらの世界で生きている人が、転移して生き残る可能性は、転移被害者の数からすると少数だからね。そこに奪還チーム無しで帰ったとなると、かなりレアってやつだ」
「お帰り」
「ただいま…改めていうと、なんか変な感じだ」
「いいんだよ、帰ってきた感は大事だ」
「それはそうなんだけどもね、まだどっかで心は向こうにあるというか、音に反応することはあるよ」
「音?」
「電話の昔のベルタイプとかね、あれ向こうだと緊急時に鳴り響くやつでさ、寝ているやつみんな叩き起こせ、食べ物を狙いに来るぞってやつ、そこで食べ物守れなかったら、食事を取ることもないから、なんで起きなきゃならないんだろうかっていう、葛藤と戦うのが一番辛かったね」
「こういう話も、やがて尽きてくれば、忘れていくさ」
「それはそれで少し寂しい」
「あのな」
「わかってる、結構あっちにいた時間が長く、十年ではあるけども、本当に長く感じた、一日が過ぎるのが遅くてね、そういう大変さもあったのだ」
「お前の抱えているものがどのぐらい重いのかはよくわからん、知ろうとは思うがな」
「言葉で説明しても説明しきれるものではないさ」
「そこはわかる」
「ではなんだい?」
「前向きに何とかしようともがいているうちは、俺はお前の手を離したくはないさ」
「一緒にいると溺れちゃうよ」
「もう溺れているが?」
「??」
「そこら辺は遅いんだよって話だな、確かに10年は何もないわけではないよ。人生の計画として言い渡されていたことを、あっさりと覆させたわけだから」
「ああ~それは」
「でもお前のことがあったからな、もしもこれが俺にあれしかなかったらと思うと、俺とは何なんだろうか?というバカなことを考えていたんじゃないか」
「バカなことね、結構それは大事なことだよ」
「それを考えるには、人間の時間は限られているんだよ、もう100年生きるのならばわからない、でもそんなわけないからな」
「なるほど、そういう考えもあるのか」
「しかもこっちが関わりたくない、嫌いな人間の方から疎遠になるのならば、それでいいじゃないか」
「う~ん」
「なんだよ」
「そっか、仲良く出来ないのかって」
「はぁ?なんだ?お前は仲良くしたかったのか?」
「出来ればね。でもそれならばしょうがないか」
「お前のそういう考え、たぶんイライラして、敵を作るやつもいるだろうな、俺でさえ、そらはちょっとなと思ってしまう、慈愛なのかはわからないが」
「慈愛というより、打算だよ。敵は作らないのが一番いいし、それでもダメならば、またやり方を考えなきゃいけない」
「なんだろうな、こういうときのお前はイキイキしているな」
「なんかこう、生き延びなきゃってなるとね、でもそこが終わると、もういい、寝る、メメミヤさん、なんかあったら連絡くださいになるからな」
「むしろそういうときは俺に連絡くれ」
「そっちは仕事じゃん」
「今はセミリタイヤしようと画策しててな」
「有能な人は将来設計完璧だな」
そう彼女が笑い、彼も仕事にもう未練がなくなったといってるが、たぶんこれ彼女との時間を作るためのセミリタイヤじゃないですかね。
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