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生と死の欲動 4
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山本 太一は昨晩からの事情聴取の為か、随分と疲れた感じでゆっくりと、椅子の背にもたれる様にカタンと小さな音をたてて座った。前の乱れ髪を直すことなく、その顔は憔悴しきっていた。
大木はカメラに向かい目配せした後、項垂れる山本を見ながら話し始める。
「では、取り調べを始めます」
「……取り調べ……私は犯人扱いか……」
山本はほとんど口を動かさずに、ボソッと言った。
「はい。現段階では重要参考人から容疑者に移行しています。昨晩と聴取内容が重複すると思いますが、正直に答えて下さい」
「はぁ~……」
山本は深いため息をついた後、
「あ~私ではない。私は犯人ではない……これは間違っている。弁護士を、弁護士を呼んでくれ~」
と、半べそをかきながら訴えた。
「山本さん、取り調べに弁護士は介入出来ません。ただ、あなたには黙秘権を行使する権利がある。しかし、やっていないなら、それこそ正直に話して下さい」
「…………」
最初に形式に則ったかたちで、山本 太一の身元確認が行われた。
氏名 : 山本 太一
年齢 : 42歳
住所 : 静岡県富士市伝法○○○-1
職業 : 中古自動車販売兼修理整備業
(株)コスモスモータース代表取締役社長
「あなたは9月17日事件当夜、天野 礼子さんと一緒に三島市市民文化会館小ホールで行われたコンサートに行った事に間違えないですね」
「はい」
「当日待ち合わせの連絡にSMS、ショートメールサービスを利用していますね」
「はい」
「お互いがSMSを利用する以前ですが、天野さんとはどういう経緯で知り合ったのですか」
「……出会い系サイトです」
「なんという名前のサイトですか」
「マッチングメールというサイトです」
「親しくなったいきさつをお聞かせ下さい」
「富士署で何度も話しましたが……」
「確認の為です。お願いします」
「サイトの中に日記が書けるサービスがある。彼女はエロスというペンネームで写真付きの日記を書いていた。私は彼女の日記のファンで、よくそれにコメントを入れていました」
「日記と一緒に写真も投稿出来るのですね。どんな内容の日記と写真でしたか」
「……かなりアダルトな内容の、日記と写真でした」
「具体的には、性描写的なものですか」
「そうですね。ただ、サイト運営側の検閲があるのでそれほど過激ではないですが、下着とか、レオタード姿などです」
「このサイトの利用は長いのですか」
「私は半年ほど利用しています」
「天野さんはどうですか」
「解りませんが……、かなり前から利用していたのではないかな、日記の閲覧数は多かったし、コメントも凄かった。サイト内では女王のような存在だった」
「ほぅなるほど、女王ですか」
「私なんかからしてみれば、高嶺の花でした」
「そこにコメントを入れて仲良くなったんですね」
「はい、そうです。しかしコメントに返事が無いことの方が多かったかな」
「コメント以外にコミュニケーションはとれるのですか」
「コメントとは別にサイト内のメールサービスがあります。そのサイメで個人的なやりとりをするようになりました」
「そのサイメを利用して天野さんを誘ったんですか」
「そうですが、私としては本気で誘っていたわけではなく、まぁ会えたらラッキーかな程度に……」
「その調子で、SMSに移行したのですか」
「いや、私からではありません。彼女が連絡先を教えてくれたんです。今考えるとおかしな話ですが、それまでの誘いにはほとんど無視状態で、どちらかというと嫌われていると思っていました。それだけに嬉しくなってしまって……」
「そうなんですか、しかし、天野さんが出会い系サイトを脱会してしまったので、今となっては会話の履歴が確認できませんね」
大木はそれまでの穏やかな口調に、少しアクセントを付けて話した。
「あなたから強引に誘ったのではないのか」
「勘弁してください。そんなことはありません」
山本は泣き出しそうな顔をした。
大木はカメラに向かい目配せした後、項垂れる山本を見ながら話し始める。
「では、取り調べを始めます」
「……取り調べ……私は犯人扱いか……」
山本はほとんど口を動かさずに、ボソッと言った。
「はい。現段階では重要参考人から容疑者に移行しています。昨晩と聴取内容が重複すると思いますが、正直に答えて下さい」
「はぁ~……」
山本は深いため息をついた後、
「あ~私ではない。私は犯人ではない……これは間違っている。弁護士を、弁護士を呼んでくれ~」
と、半べそをかきながら訴えた。
「山本さん、取り調べに弁護士は介入出来ません。ただ、あなたには黙秘権を行使する権利がある。しかし、やっていないなら、それこそ正直に話して下さい」
「…………」
最初に形式に則ったかたちで、山本 太一の身元確認が行われた。
氏名 : 山本 太一
年齢 : 42歳
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「あなたは9月17日事件当夜、天野 礼子さんと一緒に三島市市民文化会館小ホールで行われたコンサートに行った事に間違えないですね」
「はい」
「当日待ち合わせの連絡にSMS、ショートメールサービスを利用していますね」
「はい」
「お互いがSMSを利用する以前ですが、天野さんとはどういう経緯で知り合ったのですか」
「……出会い系サイトです」
「なんという名前のサイトですか」
「マッチングメールというサイトです」
「親しくなったいきさつをお聞かせ下さい」
「富士署で何度も話しましたが……」
「確認の為です。お願いします」
「サイトの中に日記が書けるサービスがある。彼女はエロスというペンネームで写真付きの日記を書いていた。私は彼女の日記のファンで、よくそれにコメントを入れていました」
「日記と一緒に写真も投稿出来るのですね。どんな内容の日記と写真でしたか」
「……かなりアダルトな内容の、日記と写真でした」
「具体的には、性描写的なものですか」
「そうですね。ただ、サイト運営側の検閲があるのでそれほど過激ではないですが、下着とか、レオタード姿などです」
「このサイトの利用は長いのですか」
「私は半年ほど利用しています」
「天野さんはどうですか」
「解りませんが……、かなり前から利用していたのではないかな、日記の閲覧数は多かったし、コメントも凄かった。サイト内では女王のような存在だった」
「ほぅなるほど、女王ですか」
「私なんかからしてみれば、高嶺の花でした」
「そこにコメントを入れて仲良くなったんですね」
「はい、そうです。しかしコメントに返事が無いことの方が多かったかな」
「コメント以外にコミュニケーションはとれるのですか」
「コメントとは別にサイト内のメールサービスがあります。そのサイメで個人的なやりとりをするようになりました」
「そのサイメを利用して天野さんを誘ったんですか」
「そうですが、私としては本気で誘っていたわけではなく、まぁ会えたらラッキーかな程度に……」
「その調子で、SMSに移行したのですか」
「いや、私からではありません。彼女が連絡先を教えてくれたんです。今考えるとおかしな話ですが、それまでの誘いにはほとんど無視状態で、どちらかというと嫌われていると思っていました。それだけに嬉しくなってしまって……」
「そうなんですか、しかし、天野さんが出会い系サイトを脱会してしまったので、今となっては会話の履歴が確認できませんね」
大木はそれまでの穏やかな口調に、少しアクセントを付けて話した。
「あなたから強引に誘ったのではないのか」
「勘弁してください。そんなことはありません」
山本は泣き出しそうな顔をした。
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