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Day by day
居残り練I(1)
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次の日、全ての授業が終わり、タルクはサクに声をかけた。
「居残り練?」
「そう。俺、最近始めたんだけどさ、マイヤ先生にサクとやった方が良いって言われて――」
担任の言葉を相方に伝える。
強くなりたい。
いつも思っていて、いつも諦めていたその願い。それを声に絡ませて、必死に言葉を作り上げる。
「へぇ、マイヤ先生が……」
サクは思案顔になり、眼鏡の奥に視線を隠す。タルクは気が気ではなかった。
「いいよ」
「本当か?」
「本当だよ。魔闘祭も近いからペアを強化しなきゃとは思ってたしね」
「ありがとう。そっか、魔闘祭もうすぐだもんな」
魔闘祭は、年に一度の魔術戦闘の大会。ペア戦とその一か月後に行われるシングル戦の総称だ。
魔術関係の有力者も多く注目し、メダル授与の際には、滅多に表に出てこない学園長が来るという栄誉ある大会で、そのペア戦があと二か月後に迫っていた。
「そういえばサクってさ、マイヤ先生の言う事はよく聞くよな。なんで?」
「んー、一目置いてるからかな。魔術師であれ程の人はなかなか居ないよ。だから助言くらいはちゃんと聞いておこうと思って。まぁ、出力の事は微妙ではあるんだけどね」
「どう意味だよ?」
「私の出力は低い。でもこれで限界。多分もうほとんど上がらない」
なんでもないようにサクは笑う。自嘲気味でどこか楽しそうな、そんな笑み。
「そんな訳……」
反論しようとして彼は言葉を失った。
タルクはサクの事をよく知らない。
彼が知っているのは、彼女がウェアウルフを瞬殺していたという事実と、知られたら殺されるかもしれないという程の事情があるという事。
今まで彼は、サクが巨大な力を持ちながら隠しているのだと思っていた。だが違うのかもしれない。初めてそう思った。
「でも息を合わせるっていう意味では有効だよねー」
魔術使いとして致命的な欠陥を持ちながら彼女は笑う。
――なんだよ、俺。馬鹿みたいじゃん。
低い出力で頑張る少女を横目に見ながら、自分は落ちこぼれだと諦めていた。嫉妬していた。不甲斐なさが身に染みる。自分がサクのパートナーで本当に良いのか。そんな感情が湧いてくる。
「じゃあ、連携を中心に練習しようか。今度のペア戦では一回戦突破できるように」
「いや、二回戦も突破する。……俺、強くなるからさ」
少女は驚くように視線を上げ、タルクの意志を認めるように微笑んだ。いいパートナーに恵まれた。少年は決意を硬くする。
「居残り練?」
「そう。俺、最近始めたんだけどさ、マイヤ先生にサクとやった方が良いって言われて――」
担任の言葉を相方に伝える。
強くなりたい。
いつも思っていて、いつも諦めていたその願い。それを声に絡ませて、必死に言葉を作り上げる。
「へぇ、マイヤ先生が……」
サクは思案顔になり、眼鏡の奥に視線を隠す。タルクは気が気ではなかった。
「いいよ」
「本当か?」
「本当だよ。魔闘祭も近いからペアを強化しなきゃとは思ってたしね」
「ありがとう。そっか、魔闘祭もうすぐだもんな」
魔闘祭は、年に一度の魔術戦闘の大会。ペア戦とその一か月後に行われるシングル戦の総称だ。
魔術関係の有力者も多く注目し、メダル授与の際には、滅多に表に出てこない学園長が来るという栄誉ある大会で、そのペア戦があと二か月後に迫っていた。
「そういえばサクってさ、マイヤ先生の言う事はよく聞くよな。なんで?」
「んー、一目置いてるからかな。魔術師であれ程の人はなかなか居ないよ。だから助言くらいはちゃんと聞いておこうと思って。まぁ、出力の事は微妙ではあるんだけどね」
「どう意味だよ?」
「私の出力は低い。でもこれで限界。多分もうほとんど上がらない」
なんでもないようにサクは笑う。自嘲気味でどこか楽しそうな、そんな笑み。
「そんな訳……」
反論しようとして彼は言葉を失った。
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今まで彼は、サクが巨大な力を持ちながら隠しているのだと思っていた。だが違うのかもしれない。初めてそう思った。
「でも息を合わせるっていう意味では有効だよねー」
魔術使いとして致命的な欠陥を持ちながら彼女は笑う。
――なんだよ、俺。馬鹿みたいじゃん。
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