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盈月
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「へ?」
「だから、これから瑠璃の家に行くの。準備して」
巴はそのまま部屋から出て行ってしまった。
「……は?」
まったくもって意味が分からない。なんで西山の家? 今から行くのか? 何の為に?
頭の中はぐるぐるする。考えても意味は一向に見えてこない。だけど一つだけ確かな事はあった。
「待てよ、巴」
俺はひとりぼっちで女の子の部屋に取り残されたくない。
「で、説明しろよ」
「…………」
今、俺達は西山の家のそばの曲がり角で張り込むようにして隠れている。インターホンを押しても返事は返ってこず、何故だか今のように隠れる事となったのだ。
「なんでこんな事してんだよ。居ねぇなら帰ればいいじゃねぇか。西山に聞きたい事があるなら、メールでも電話でもすりゃあいいじゃねぇか。何が目的なんだよ」
巴の瞳は標的から動かない。光の無い目が静かに輝く。何を考えているか分からない。そんな表情を彼女はしていた。それに対して不安が募る。早くここから離れたい。巴の家ででもくだらない事して過ごしたい。そんな感情が鎌首をもたげる。
「なぁ……」
「一つ、賢太郎に言ってない情報がある」
顔はこちらを向かぬまま、声だけが俺を捉えた。ゆっくり包み込むように心配を煽っていく。
巴は一つ息を吸った。そして静かな声は言葉を紡ぐ。
「森本が退職になると思う」
「森本が? そうなのか……」
なおさら巴の言わんとしている事が分からなくなった。今は西山の話だろ? 確かに西山は森本に嫌われてる感じだったけど……。もしかして、森本が万引き写真に一枚噛んでるのか?
「森本はずっと女子生徒を脅して手を出してた。その現場を押さえた証拠写真が昨日の夜学校宛てに送りつけられてきたの。瑠璃の事と重なって学校はパニック。先生達がやたら右往左往してたのはその為。でも、写真の生徒も森本も事件を認めたみたいだし、多分森本は辞めさせられるんじゃないかな」
いつの間にかこちらを見ていた瞳。感情は無く、ニュースキャスターのように淡々と事実を述べる声が篠崎巴という存在を消していく。彼女と話しているという感覚は無くなって言葉だけが伝わってくる。
「それと、さっき家でツイッターとか漁ってて写真の発信源を見つけた」
「本当か? 誰だよ」
鼓動が速くなる。次の言葉を全神経を耳に集中させて待つ。主犯は一体誰なんだ?
「誰って訳じゃない。学年で中心的とか、噂好きとか言われてる人にフリーメールから送られてきたみたい。『こんなの送られてきた』みたいな感じで拡散され始めて『ウチにも来た』って広がってった。あと、どうやら校長とかたま子先生とか、生活指導の安村とか先生方にも送られてたらしい」
怒っているのか悲しんでいるのか、巴は言葉を刻みながら眉間のしわを増やしていく。段々と険しい顔になっていく。
「…………」
今の新事実からでは、俺は何も分からなかった。巴の頭の中でどう繋がってどこへ辿り着いたのか理解できない。でも、彼女が見ている先が良いものではないという事は分かる。
どうかそこまで悪い事態でないでくれ。願いながら耳を傾ける。それしか俺にはできなかった。
「だから、これから瑠璃の家に行くの。準備して」
巴はそのまま部屋から出て行ってしまった。
「……は?」
まったくもって意味が分からない。なんで西山の家? 今から行くのか? 何の為に?
頭の中はぐるぐるする。考えても意味は一向に見えてこない。だけど一つだけ確かな事はあった。
「待てよ、巴」
俺はひとりぼっちで女の子の部屋に取り残されたくない。
「で、説明しろよ」
「…………」
今、俺達は西山の家のそばの曲がり角で張り込むようにして隠れている。インターホンを押しても返事は返ってこず、何故だか今のように隠れる事となったのだ。
「なんでこんな事してんだよ。居ねぇなら帰ればいいじゃねぇか。西山に聞きたい事があるなら、メールでも電話でもすりゃあいいじゃねぇか。何が目的なんだよ」
巴の瞳は標的から動かない。光の無い目が静かに輝く。何を考えているか分からない。そんな表情を彼女はしていた。それに対して不安が募る。早くここから離れたい。巴の家ででもくだらない事して過ごしたい。そんな感情が鎌首をもたげる。
「なぁ……」
「一つ、賢太郎に言ってない情報がある」
顔はこちらを向かぬまま、声だけが俺を捉えた。ゆっくり包み込むように心配を煽っていく。
巴は一つ息を吸った。そして静かな声は言葉を紡ぐ。
「森本が退職になると思う」
「森本が? そうなのか……」
なおさら巴の言わんとしている事が分からなくなった。今は西山の話だろ? 確かに西山は森本に嫌われてる感じだったけど……。もしかして、森本が万引き写真に一枚噛んでるのか?
「森本はずっと女子生徒を脅して手を出してた。その現場を押さえた証拠写真が昨日の夜学校宛てに送りつけられてきたの。瑠璃の事と重なって学校はパニック。先生達がやたら右往左往してたのはその為。でも、写真の生徒も森本も事件を認めたみたいだし、多分森本は辞めさせられるんじゃないかな」
いつの間にかこちらを見ていた瞳。感情は無く、ニュースキャスターのように淡々と事実を述べる声が篠崎巴という存在を消していく。彼女と話しているという感覚は無くなって言葉だけが伝わってくる。
「それと、さっき家でツイッターとか漁ってて写真の発信源を見つけた」
「本当か? 誰だよ」
鼓動が速くなる。次の言葉を全神経を耳に集中させて待つ。主犯は一体誰なんだ?
「誰って訳じゃない。学年で中心的とか、噂好きとか言われてる人にフリーメールから送られてきたみたい。『こんなの送られてきた』みたいな感じで拡散され始めて『ウチにも来た』って広がってった。あと、どうやら校長とかたま子先生とか、生活指導の安村とか先生方にも送られてたらしい」
怒っているのか悲しんでいるのか、巴は言葉を刻みながら眉間のしわを増やしていく。段々と険しい顔になっていく。
「…………」
今の新事実からでは、俺は何も分からなかった。巴の頭の中でどう繋がってどこへ辿り着いたのか理解できない。でも、彼女が見ている先が良いものではないという事は分かる。
どうかそこまで悪い事態でないでくれ。願いながら耳を傾ける。それしか俺にはできなかった。
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