パンドラ

須桜蛍夜

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盈月

74

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「西山の事、大切なんだな」

ぽろりと洩れた言葉だった。

「そうだね……大切。友達だもん」

巴は一瞬驚いた顔を見せたがすぐに笑顔になる。さっきまでの怒りはもう見えない。いつもの笑みがそこにある。

俺はその微笑みにホッとし、悲しくなり、悔しくなった。

「瑠璃には確かに苛つくけど、それでも私はあの子が好き。だから今回の事件、放っておけない。なんとかしたい。真実が知りたい。ところでさ、写真について何か分かった?」

「え? ……いや、なんも分かんねぇ。おかしい所とか全然無ぇ」

「そっか。合成の可能性が一番高いと思ったんだけどな~」

突然問われて慌てる俺を見えないように扱って巴はぶつぶつ呟き始めた。

「…………」

俺はゆっくり視線を逸らす。こんな時は黙っているのが得策だ。俺は彼女の思考回路にはついていけないし、わざわざ邪魔する必要もない。

窓の外、遠くの雲。それらはゆっくり動いていて次第に見えなくなっていく。近くでさえずる鳥達は何をしたいのか電線から電線へと飛び回る。何も考えずに眺める景色。考えないように眺める景色。だけど、そういう時ほど余計に頭は動く。

ーー俺って何なんだろうな。

無駄な事を考え始める。止められない。俺は、一体……。

「賢太郎、ちょっと聞いて」

止めてくれたのは幼馴染の声だった。

「あぁ」

焦点合わぬままに少女を見つめる。呆けた視線と真面目な視線。対照的な二つの光が結び合い、静けさが満ちた空間で一つの言葉が告げられた。

「これから瑠璃の家に行こうと思うんだ」 
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