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盈月
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「私とあの子は似てる。色々な部分でそっくりだと思う。私はそれに気づいたから彼女に近づいた。友達になりたいと思った。だけどね、一緒に居るうちに分かったんだ。瑠璃の無関心と私の無関心は違うんだって」
巴は窓の外に目を向けると、遠くを見るようにして悲しそうとも楽しそうとも取れる表情で語り出した。
「私は人が信じられない。信用出来ない。だから避けて踏み込まないよう、踏み込ませないようにしてるうちに無関心みたいな状況に陥った。だけどね瑠璃は違ったの。本当に無関心なの。他人に、そして自分に……」
「自分に無関心?」
「賢太郎も覚えがあるでしょ? いくら傷ついても気にしない。何をされても動じない。表情ひとつ変えない」
脳裏に赤黒く染まって倒れる少女が浮かんだ。
「ある」
心がちくりと痛みを発する。自分の罪を直視する。それがすごく苦しい。
「あれさ、自分に興味が無いからだと思うんだ。
普通はみんな自分が大事。どんなに綺麗な言葉を並べようと、結局は自分本位で動いちゃうのが人間。
だけど瑠璃はその自分すらどうでもいいの。傷ついても侮辱されても他人事。『あ、わたしが傷ついてる。でも、どうでもいいや』ってね。だからあんな風に自分を無下にできる」
彼女は、今度ははっきりと悲しげな顔をしていた。どうしようもない友人を憂いていた。
「自分に興味が無い」
小声で呟く。それはとても奇妙な響きがした。
ーー本当にそんな事があり得るのか?
するりと言葉が頭に浮ぶ。
自分というのは良くも悪くも特別な存在だ。巴の言う通りに基本的には自分の事が一番大切だろうし、もし自己嫌悪から大嫌いなのだとしてもそれは自分を特別と思っているが故。興味の無い人がどれだけ嫌な部分を持っていたとしても気にはならないのだから。
だとしたら西山はーー。
「瑠璃はおかしいよ、絶対に。だから賢太郎が考えてるだろう事も分かる。自分に興味が無いなんて普通じゃない。"人形"ってのは言い得て妙な比喩なのかもしれない」
語り出した平坦な声に耳を傾ける。伏し目がちに話す巴の心の声が知りたかった。
「でもね、そんな人形でも好いてる人は居るんだよ。私にとって瑠璃は大切な友達なの。だから苛つく。今日も朝から苛ついてる。私が大切なあの子をあの子自身が大切にしないから」
語気が強まっていく言葉。仮面を被った少女は、今本気で怒っていた。
巴は窓の外に目を向けると、遠くを見るようにして悲しそうとも楽しそうとも取れる表情で語り出した。
「私は人が信じられない。信用出来ない。だから避けて踏み込まないよう、踏み込ませないようにしてるうちに無関心みたいな状況に陥った。だけどね瑠璃は違ったの。本当に無関心なの。他人に、そして自分に……」
「自分に無関心?」
「賢太郎も覚えがあるでしょ? いくら傷ついても気にしない。何をされても動じない。表情ひとつ変えない」
脳裏に赤黒く染まって倒れる少女が浮かんだ。
「ある」
心がちくりと痛みを発する。自分の罪を直視する。それがすごく苦しい。
「あれさ、自分に興味が無いからだと思うんだ。
普通はみんな自分が大事。どんなに綺麗な言葉を並べようと、結局は自分本位で動いちゃうのが人間。
だけど瑠璃はその自分すらどうでもいいの。傷ついても侮辱されても他人事。『あ、わたしが傷ついてる。でも、どうでもいいや』ってね。だからあんな風に自分を無下にできる」
彼女は、今度ははっきりと悲しげな顔をしていた。どうしようもない友人を憂いていた。
「自分に興味が無い」
小声で呟く。それはとても奇妙な響きがした。
ーー本当にそんな事があり得るのか?
するりと言葉が頭に浮ぶ。
自分というのは良くも悪くも特別な存在だ。巴の言う通りに基本的には自分の事が一番大切だろうし、もし自己嫌悪から大嫌いなのだとしてもそれは自分を特別と思っているが故。興味の無い人がどれだけ嫌な部分を持っていたとしても気にはならないのだから。
だとしたら西山はーー。
「瑠璃はおかしいよ、絶対に。だから賢太郎が考えてるだろう事も分かる。自分に興味が無いなんて普通じゃない。"人形"ってのは言い得て妙な比喩なのかもしれない」
語り出した平坦な声に耳を傾ける。伏し目がちに話す巴の心の声が知りたかった。
「でもね、そんな人形でも好いてる人は居るんだよ。私にとって瑠璃は大切な友達なの。だから苛つく。今日も朝から苛ついてる。私が大切なあの子をあの子自身が大切にしないから」
語気が強まっていく言葉。仮面を被った少女は、今本気で怒っていた。
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