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盈月
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二人でピンをつけ、店を後にする。私の気分は最高潮だった。
お揃い。瑠璃からのプレゼント。友情の証、友情か、友情ね……。ふふふ。
「ちょっと嬢ちゃん達」
だから、割り込んできた野太い声に私は不機嫌に振り返る。
「俺の作品見ていかないかい? 安くしとくよ」
そこに居たのはブルーシートの上に商品を並べた、いかにも職人って感じのオヤジだった。
「私、別に興味は無いんーー」
「見る」
乱暴に断ろうとした私の隣を通って、瑠璃がオヤジへと近づいた。私は面食らって動きを止める。その間も瑠璃は興味深げに商品を眺めている。
「やっぱ、私も見る」
居ても立ってもいられなくなってブルーシートへ向かう。並べてあるのは金属でできた花のブローチだった。
「へぇ~、綺麗……」
その内の一つを手に取ると、おじさんが嬉しそうに話しかけてくる。
「お嬢ちゃん、お目が高い。それは俺の自信作の一つだ。 安くしとくよ。どうだい? お望みであれば、オーダーメイドもやってるぜ。好きな花、なんでも作ってやるよ」
確かにブローチは綺麗だ。繊細な作りに、反射まで考えられた光沢。これがこのオヤジの手から生み出されたのかと驚くほどに素晴らしいクオリティ。
……しかし、それ相応に値段も高い。 特に必要性も感じていない私には買おうという気は起きなかった。
「オーダーメイド、頼んでいい?」
「お、いいぜ。なんでも言ってみろ」
しかし、友人は違ったようで、迷わずにそう言った。
「え、瑠璃買うの?」
オーダーメイドなんて並べてある商品よりもひとまわりお高い。彼女がブローチに興味あったというのも意外だが、ポンっとそんな値段を出せることも驚きだった。
「カランコエ。できる?」
「ほぉ、渋いとこいくねぇ。任せとけ」
聞いたことのない花の名前を告げる瑠璃。本当にこの子は何者なのか。花に詳しいなんてまったくもって彼女のイメージからかけ離れている。
『二、三時間でできるからまた寄ってくれ』
そんな言葉で私たちは彼の店から離れた。
ーーまたここに来なきゃいけないのか。計画変えなきゃな。
正直少しげんなりした。しかし、それを払拭できるくらいには"花好きの瑠璃"という新情報に興味があった。
「カランコエってどんな花なの? 私、聞いたことないんだけど」
「知らないんだ……。どんな花か……細々した花? 正直できるとは思ってなかった」
「ふーん、なんでそれにしたの?」
「なんとなく」
「そっか」
「ところで巴、そろそろ時間じゃない? 大丈夫?」
「え? あ、やばい。ごめん、また後で。三時間後に約束のバス停前で!」
時計を見て、慌てて走り出す。あと数十分後にこの近くで私の好きなバンドの路上ライブがある。いい場所を取るために少しでも早く着かなくては。
本来なら、自主研修の班はバラバラになってはいけないのだが、私はライブに行きたくて瑠璃はうなぴょんショップに行きたい。そして互いに興味が無い。それならば、バレないように分かれて好きな場所へ行くというのが一番効率的だ。そう言う訳でこの時間、瑠璃と私は別行動をすることにした。
ちらりと振り返ると、瑠璃が小さな路地へと消えていくのが見えた。きっと彼女もこれからの至福の時間にウキウキしているはずだ。
「よし、私も最大限盛り上がってやる」
大好きな曲を口ずさんで私は走る速度を上げた。
お揃い。瑠璃からのプレゼント。友情の証、友情か、友情ね……。ふふふ。
「ちょっと嬢ちゃん達」
だから、割り込んできた野太い声に私は不機嫌に振り返る。
「俺の作品見ていかないかい? 安くしとくよ」
そこに居たのはブルーシートの上に商品を並べた、いかにも職人って感じのオヤジだった。
「私、別に興味は無いんーー」
「見る」
乱暴に断ろうとした私の隣を通って、瑠璃がオヤジへと近づいた。私は面食らって動きを止める。その間も瑠璃は興味深げに商品を眺めている。
「やっぱ、私も見る」
居ても立ってもいられなくなってブルーシートへ向かう。並べてあるのは金属でできた花のブローチだった。
「へぇ~、綺麗……」
その内の一つを手に取ると、おじさんが嬉しそうに話しかけてくる。
「お嬢ちゃん、お目が高い。それは俺の自信作の一つだ。 安くしとくよ。どうだい? お望みであれば、オーダーメイドもやってるぜ。好きな花、なんでも作ってやるよ」
確かにブローチは綺麗だ。繊細な作りに、反射まで考えられた光沢。これがこのオヤジの手から生み出されたのかと驚くほどに素晴らしいクオリティ。
……しかし、それ相応に値段も高い。 特に必要性も感じていない私には買おうという気は起きなかった。
「オーダーメイド、頼んでいい?」
「お、いいぜ。なんでも言ってみろ」
しかし、友人は違ったようで、迷わずにそう言った。
「え、瑠璃買うの?」
オーダーメイドなんて並べてある商品よりもひとまわりお高い。彼女がブローチに興味あったというのも意外だが、ポンっとそんな値段を出せることも驚きだった。
「カランコエ。できる?」
「ほぉ、渋いとこいくねぇ。任せとけ」
聞いたことのない花の名前を告げる瑠璃。本当にこの子は何者なのか。花に詳しいなんてまったくもって彼女のイメージからかけ離れている。
『二、三時間でできるからまた寄ってくれ』
そんな言葉で私たちは彼の店から離れた。
ーーまたここに来なきゃいけないのか。計画変えなきゃな。
正直少しげんなりした。しかし、それを払拭できるくらいには"花好きの瑠璃"という新情報に興味があった。
「カランコエってどんな花なの? 私、聞いたことないんだけど」
「知らないんだ……。どんな花か……細々した花? 正直できるとは思ってなかった」
「ふーん、なんでそれにしたの?」
「なんとなく」
「そっか」
「ところで巴、そろそろ時間じゃない? 大丈夫?」
「え? あ、やばい。ごめん、また後で。三時間後に約束のバス停前で!」
時計を見て、慌てて走り出す。あと数十分後にこの近くで私の好きなバンドの路上ライブがある。いい場所を取るために少しでも早く着かなくては。
本来なら、自主研修の班はバラバラになってはいけないのだが、私はライブに行きたくて瑠璃はうなぴょんショップに行きたい。そして互いに興味が無い。それならば、バレないように分かれて好きな場所へ行くというのが一番効率的だ。そう言う訳でこの時間、瑠璃と私は別行動をすることにした。
ちらりと振り返ると、瑠璃が小さな路地へと消えていくのが見えた。きっと彼女もこれからの至福の時間にウキウキしているはずだ。
「よし、私も最大限盛り上がってやる」
大好きな曲を口ずさんで私は走る速度を上げた。
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