97 / 158
盈月
88
しおりを挟む空は晴れていた。眩しそうに瑠璃が目を細める。
「まず、何しよっか」
私はうきうきと言って駆け出す。楽しげにしている方が余計なことは考えなくて済む。楽しくしなきゃ折角の旅行がもったいない。
「なんでもいい。っていうか、一応計画は立ててるんでしょ」
「んー、でも、計画通りに進めてるかどうかなんて監視してる先生は居ないからね」
悪戯っぽく笑って、私は真っ直ぐ美味しいお菓子屋さんへと向かった。
「どう? 旅行ってのも楽しいでしょ」
「…………」
返事は無い。代わりにもぐもぐといった物を食べる音が返ってくる。
ホテルを飛び出してから、私たちはずっと計画ガン無視で街をぶらついていた。二人旅行は楽し過ぎて私は始終ニコニコしている。
真逆に無表情な少女が旅行を楽しんでいるのかはいまいち分からなかった。しかし、腹ペコキャラを最大限に発揮して食べ物を片っ端から購入しているところを見ると、それなりに楽しんではいるのだろう。
「あ、瑠璃。雑貨屋あるよ。入ろ!」
肉まん屋さんに目を向けていた彼女の袖を引っ張って強引に店へと引き込む。
こじんまりとしているがセンスの良い小物たち。雰囲気の良い空間。あれもこれもと欲しくなる程に私好みの品揃え。
私は瑠璃を離し、一人でそれらを見て回った。砂時計、オルゴール、置物……。これらを部屋に置いたらと思うと興奮するが、値札を見て現実に戻る。その無駄で楽しいサイクルを何度も何度も繰り返す。
「あ、瑠璃! こっちこっち」
ある物を見つけ、手招きで友人を呼び寄せた。退屈そうに招き猫の貯金箱を見ていた少女は、とことこと素直にこっちへやって来る。
「これ、どう?」
その頭に透明感のある青色の花の飾りがついたピンを付けた。
「うん、可愛い。それ買ってあげる。瑠璃はもっとオシャレしなきゃね」
白いトレーナーにジーパン。いつ見てもそんな簡素な格好をしている少女に一点の異様。それは妙に目立ってその服装すら可愛く見せる。良い感じに似合っていた。
瑠璃は気になるのかぐりぐりと何度もピンをいじくる。そして何を思ったのか唐突に同じ種類の緑のピンを手に取った。
「じゃ、わたしもこれ、巴に」
信じられない言葉。
「瑠璃が、何かをくれる日が来るなんて……」
「そんなこと言うならあげない」
目を丸くする私にジト目が冷たく言い放つ。
「え! やだ、欲しい」
慌ててピンを戻そうとした手に飛びついてそれを奪う。
「ありがと。お揃いだね。じゃあこれが、私たちの友情の証ってことで」
そして、自分の頭にもそれをつけてニカッと笑った。
0
あなたにおすすめの小説
はらぺこ令嬢は侯爵様を満たしたい
有栖
ファンタジー
エルヴィラはいつもお腹を空かせている子供だった。あまりに大食いするので心配した両親が医者に連れていくと、それは彼女が持つ魔力量のせいだとわかる。彼女は多すぎる魔力を維持するため、いつも疲れるほど食べ続けていなければならなかった。しかしひとつだけ、有り余る魔力を放出する方法があった。料理だ。彼女が作る料理には、魔力がたっぷりこめられているのである。そんな彼女の元へある日、知らせが訪れる。
※食事の描写は普通の日本のお料理になっています
幸せの賞味期限――妹が奪った夫は、甘く腐る
柴田はつみ
恋愛
幸せには「賞味期限」がある。
守る実力のない女から、甘い果実は腐っていく
甘いだけのダメンズ夫と、計算高い妹。
善意という名の「無能」を捨てたとき、リリアの前に現れたのは
氷の如き冷徹さと圧倒的な財力を持つ、本物の「男」だった――。
「お姉様のその『おっとり』、もう賞味期限切れよ。カイル様も飽き飽きしてるわ」
伯爵家の長女・リリアは、自分が作り上げた平穏な家庭が、音を立てて崩れるのをただ見つめるしかなかった。
信じていた妹・エレナの狡猾な指先が、夫・カイルの心の隙間に滑り込んでいく。
カイルは、優しくて美貌だが、自分の足で立つことのできない「甘い」男。彼はエレナの露骨な賞賛と刺激に溺れ、長年尽くしてきたリリアを「味のないスープ」と切り捨て、家から追い出してしまう
笑顔が苦手な元公爵令嬢ですが、路地裏のパン屋さんで人生やり直し中です。~「悪役」なんて、もう言わせない!~
虹湖🌈
ファンタジー
不器用だっていいじゃない。焼きたてのパンがあればきっと明日は笑えるから
「悪役令嬢」と蔑まれ、婚約者にも捨てられた公爵令嬢フィオナ。彼女の唯一の慰めは、前世でパン職人だった頃の淡い記憶。居場所を失くした彼女が選んだのは、華やかな貴族社会とは無縁の、小さなパン屋を開くことだった。
人付き合いは苦手、笑顔もぎこちない。おまけにパン作りは素人も同然。
「私に、できるのだろうか……」
それでも、彼女が心を込めて焼き上げるパンは、なぜか人の心を惹きつける。幼馴染のツッコミ、忠実な執事のサポート、そしてパンの師匠との出会い。少しずつ開いていくフィオナの心と、広がっていく温かい人の輪。
これは、どん底から立ち上がり、自分の「好き」を信じて一歩ずつ前に進む少女の物語。彼女の焼くパンのように、優しくて、ちょっぴり切なくて、心がじんわり温かくなるお話です。読後、きっとあなたも誰かのために何かを作りたくなるはず。
仮面王の花嫁
松雪
恋愛
婚約者を腹違いの妹に奪われ、新しい相手も見つからず修道院に行く覚悟を決めたルチア。修道女となるため髪を切った日の夜、王城から「国王がルチアを妻に望んでいる」という書簡を持った使者がやって来た。
しかし、従兄弟であり恋仲だったニールが国王のせいで死に至った過去を持つルチアは、国王からの求婚を喜べずーー。
私の人生に、おかえりなさい。――都合のいい「お姉ちゃん」は、もうどこにもいません
しょくぱん
恋愛
「お姉ちゃんなんだから」
――それは私を縛る呪いの言葉だった。
家族の醜い穢れを一身に吸い込み、妹の美しさの「身代わり」として生きてきた私。
痛みで感覚を失った手も、鏡に映らない存在も、全ては家族のためだと信じていた。
でも、、そんな私、私じゃない!!
―― 私は、もう逃げない。 失われた人生を取り戻した今、私は、私に告げるだろう。
「私の人生に、おかえりなさい。」
記憶をなくしても君は忘れない
水城ひさぎ
恋愛
本田光莉(ほんだひかり)、アメリカ・ロサンゼルス在住フォトグラファー、28歳。光莉には、松村理乃(まつむらりの)という同い年の異母姉がいる。行方不明になった理乃を探すため、日本へやってきた光莉は、高校時代の元カレ、月島拓海(つきしまたくみ)と再会する。しかし、彼は高校時代以降の記憶を喪失していた……。
結婚前夜に婚約破棄されたけど、おかげでポイントがたまって溺愛されて最高に幸せです❤
凪子
恋愛
私はローラ・クイーンズ、16歳。前世は喪女、現世はクイーンズ公爵家の公爵令嬢です。
幼いころからの婚約者・アレックス様との結婚間近……だったのだけど、従妹のアンナにあの手この手で奪われてしまい、婚約破棄になってしまいました。
でも、大丈夫。私には秘密の『ポイント帳』があるのです!
ポイントがたまると、『いいこと』がたくさん起こって……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる