パンドラ

須桜蛍夜

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盈月

114

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嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。

あの人の声を聞いてしまったら、もう何も誤魔化せなかった。鎖をがちゃがちゃと激しく鳴らす。

逃げたい。

それしか考えられない。痛いのは嫌だ。恐いのは嫌だ。近づかないで。

身体が自分の物なのか分からない。頭が混乱して周りが見えなくなっていく。

「もう逃げたりしないから、団長の言う通りにするから。だから、もう許してよ」

ぐるぐるとした景色に叫んだ。苦しい程の動悸が、足りない空気が恐怖に拍車をかけていく。

全てに耐えきれなくなったわたしは、見えない瞳を強く瞑った。




「西山さん落ち着いて、大丈夫だから!」

見えないはずの視界に白が映る。

ーー恐いよ、やだよ。

わたしは今、何されてるの。これからどんな苦痛があるの。

近くに人が居る。わたしの肩を押さえている。拘束している。

「やだ!」

右手を振って手を振り払った。簡単に現れた隙に身体を押し込んで、ベッドから転がり下りてその人物と距離を取る。

「大丈夫、何も怖くないから」

白衣を着た女性がこっちに手を伸ばす。捕まえる気が無いような無防備な姿。何が目的なの。

「大丈夫、おいで」

優しく見える笑顔がわたしを呼んでいる。わたしは呼ばれている。捕まりたくはない。何をされるか分からない。

でも、わたしはさっき、逃げない事を約束してしまった。 

恐怖がぶり返す。今、手を振り払ってしまったのは逃げた事に入るのか。
入らない訳がない。あの人は笑顔でお仕置きをするだろう。

「ぅぁ……」

泣き声のような声が漏れる。とんでもない事をしてしまった。わたしはーー。

「西山さん安心して、もう大丈夫だから」

白衣の女性の腕に抱かれた。一瞬身体を硬くするが、ゆっくり力を抜いていく。もう抵抗しちゃいけない。

「安心して」

優しく頭を撫でられた。意図は分からないが、わたしはそれを受け入れる。というよりも、二重の意味で抵抗ができなかった。力を抜いた辺りから、視界がぼやけてきている。身体に力が戻らない。

ーー知らない間に薬でも盛られたのかな。

「大丈夫だから、安心して眠りなさい」

その声を最後に、わたしは意識を手放した。






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