パンドラ

須桜蛍夜

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盈月

115

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「失礼します。瑠璃の様子はどうですか」

保健室に入ると、先生は真面目な目でおれを見た。そして、にっこりと微笑むと優しく言う。

「今はよく寝ていますよ」


瑠璃が倒れた時、心臓が止まるかと思った。このまま死んでしまったらと考えると、気が狂いそうだった。
保健室に駆け込んで、先生の診察を受けている間も、気が気ではなかった。

だけど、彼女はおれに優しく笑いかけて言ったのだ。

「大丈夫ですよ。ただの寝不足です。しばらく寝たら元気になりますよ」

「寝不足……?」

身体の力が抜けて崩れ落ちる。

ーーよかった。

また、たいせつなひとを失ってしまうかと思った。おれの?には涙が伝っていた。

それから、先生の、人が居ない方が静かに眠れるだろう。という助言にしたがって、おれと吉田さんは保健室をあとにしたのだ。



「寝顔見ても大丈夫ですか?」

許可を取ってベッドに向かう。瑠璃はそこで静かに寝息をたてていた。

「巴ちゃん達が頑張ってくれてるよ。瑠璃に優勝を届けるんだってさ」

頭に手を置き、撫でてやる。少し汗ばんだ額は、瑠璃が生きていると伝えてくれる。

不思議な感覚だった。眠りの浅い彼女は、近づくといつも起きてしまう。それなのに、今日はこんなにも近くに寝顔がある。

「瑠璃」

呼んでみる。きっと起きたら文句言われるだろうな。

「西山さん」

「はい!」

瑠璃に夢中になっていたおれは声に驚き、慌てて振り向く。 突然の事に、敬礼もしてしまっている。

「すみません。驚かせるつもりは無かったのですが」

「いえ、こちらこそすみません」

いつの間にか後ろに先生が居た。優しそうな笑い方をするいかにも保健医というような女性。彼女は、申し訳なさそうに口を開いた。

「すごく失礼な事をお聞きするのですが」

「はい」

「虐待……していたりしないですよね?」

「は?」

虐待? おれが?

「まさか。してないですよ。瑠璃を虐待なんてしたら、おれが酷くやり返されそうだ」

「…………ですよね」

真剣におれの目を見ていた彼女は戸惑うような、ホッとしたような表情で視線を逸らした。

「何かあったんですか?」

今度はおれが真剣に彼女を見つめる。

「実はーー」

先生は小さく語り出した。





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