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盈月
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カラオケは楽しかった。久々に歌ったし、西山とも色々と話した。
ーー俺は駄目な奴だな。
三人で過ごすのが楽しいと思ってしまった。あいつとの約束があるのに、罪滅ぼしをしなくてはならないのに、それを上回るほど楽しかったんだ。
「賢太郎、ちょっと待ってて。トイレ行ってくる」
「わたしも」
カラオケから出て待ちぼうけをくらった。
ーー出る前に行けばいいのに。
不満の視線を送ってから、そばにあったヘンテコな像を見上げる。題名は『天使の採択』らしい。
どこらへんが天使なのかよく分からないが、ずっと見ていると、かろうじて顔に見える部分が愚かな俺を嘲ているようにも、受け入れてくれているようにも思えてくる。
ーー俺は……。
夢遊病者のように像に一歩近づく。その白い塊が罪深い俺への答えを持っているような気がした。
「俺はどうすーーっ!」
人にぶつかった。
「あ、すみません」
向けた視線は二人組の男を捉える。
「痛ってぇな、何すんだよ!」
ぶつかった方の金髪の怒声に身体が固まった。
「腕折れたじゃねぇか、慰謝料払えよ」
典型的すぎるほどのチンピラだ。分かっている。なのに 恐怖は拭えない。過去に襲われる。こいつは俺にとっての強者だ。
「タカ、こいつ連れてこい。ここじゃ目立ち過ぎる」
子分のような黒髪が俺の肩を押す。周りの客はみんな見て見ぬ振りだ。
ーー嫌だよ。誰か助けてくれよ。
やっぱり俺は強くなんてなかった。恐くてたまらないんだ、助けを期待してしまうんだ。
ーーだれか……。
その時、俺は光を見つけた。人混みの中に西山が居た。
ーーこっちだ、助けてくれ!
絶望の中で見つけた希望にすがりつく。彼女ならばこんな奴ら簡単に倒せるはずだ。早く、助けてくれよ……。
震える足がもう限界だと言っている。恐くてたまらない。惨めでもなんでもいいから助かりたい。
だが西山はこちらを見る素振りも見せずに人の波へと消えていく。
「にしやっーー」
「声出すな!」
殴られた。それだけで俺は抵抗力を無くす。
ーー西山、気づいてくれよ……。
涙が落ちた視界の中で、俺は微かな希望に縋りついていた。
ーー俺は駄目な奴だな。
三人で過ごすのが楽しいと思ってしまった。あいつとの約束があるのに、罪滅ぼしをしなくてはならないのに、それを上回るほど楽しかったんだ。
「賢太郎、ちょっと待ってて。トイレ行ってくる」
「わたしも」
カラオケから出て待ちぼうけをくらった。
ーー出る前に行けばいいのに。
不満の視線を送ってから、そばにあったヘンテコな像を見上げる。題名は『天使の採択』らしい。
どこらへんが天使なのかよく分からないが、ずっと見ていると、かろうじて顔に見える部分が愚かな俺を嘲ているようにも、受け入れてくれているようにも思えてくる。
ーー俺は……。
夢遊病者のように像に一歩近づく。その白い塊が罪深い俺への答えを持っているような気がした。
「俺はどうすーーっ!」
人にぶつかった。
「あ、すみません」
向けた視線は二人組の男を捉える。
「痛ってぇな、何すんだよ!」
ぶつかった方の金髪の怒声に身体が固まった。
「腕折れたじゃねぇか、慰謝料払えよ」
典型的すぎるほどのチンピラだ。分かっている。なのに 恐怖は拭えない。過去に襲われる。こいつは俺にとっての強者だ。
「タカ、こいつ連れてこい。ここじゃ目立ち過ぎる」
子分のような黒髪が俺の肩を押す。周りの客はみんな見て見ぬ振りだ。
ーー嫌だよ。誰か助けてくれよ。
やっぱり俺は強くなんてなかった。恐くてたまらないんだ、助けを期待してしまうんだ。
ーーだれか……。
その時、俺は光を見つけた。人混みの中に西山が居た。
ーーこっちだ、助けてくれ!
絶望の中で見つけた希望にすがりつく。彼女ならばこんな奴ら簡単に倒せるはずだ。早く、助けてくれよ……。
震える足がもう限界だと言っている。恐くてたまらない。惨めでもなんでもいいから助かりたい。
だが西山はこちらを見る素振りも見せずに人の波へと消えていく。
「にしやっーー」
「声出すな!」
殴られた。それだけで俺は抵抗力を無くす。
ーー西山、気づいてくれよ……。
涙が落ちた視界の中で、俺は微かな希望に縋りついていた。
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