パンドラ

須桜蛍夜

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盈月

136

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「へぇ、あの頃のまんまなんだな」

二階の奥、兄貴の部屋だった場所で彼は感嘆を洩らした。そう、この部屋は兄貴が出て行った時から何も変わっていない。目を背けるようにして誰も触ろうとしなかったのだ。

「さて」

兄は私を放り投げるようにしてベッドに寝かせた。その手にはナイフが握られている。

「何する気?」

少し声が上擦った。虚勢は張れてもその銀の輝きが恐ろしくない訳はない。

「動くなよ、刺すぞ」

釘を刺され、硬直した身体の胸元で彼はナイフを動かす。

「ひゃっ」

服が切れた。肌色と、水色のブラが露わになる。

「やめっーー」

「今度こそ動くと刺さるぞ」

暴れようとしたタイミングに絶妙に言葉が刺さる。空気が直に触れ、心許ない身体に銀色が近づいていく。
鼓動が速くなった。息が詰まって全身に力が入る。

そして、兄貴は綺麗にブラを真ん中で二つに分けた。一気に軽くなる胸元に、頬上気していく。

「なかなか立派なもんだな」

丁寧にブラを剥ぎ取り、乳房を露出させる手と、注がれる視線に恥ずかしさが増していく。悪いことをしている錯覚に陥る。

「こんなことをしに来たの……?」

まだ虚勢は張れる。でも、声が微かに震えている。自分はこんなことには屈しないと思っていた。だけど、肌を露出させられただけでこんなにも脆くなった自分に背徳感と敗北感が募っていく。

「そうだな、俺を見捨てた親父たちの自慢の娘を犯すなんて楽しそうだよな」

おっぱいの間を兄貴の人差し指がなぞった。その冷たい感触に身体は震えて強張る。

怖い。

実感してしまった犯されるかもしれないという現実が肌をゆっくり舐め回す。

そんな私を兄貴はスマホのカメラで撮っていた。その状況に身体はどんどん恐怖に溺れていく。

「でも……そんなんじゃ、ない……んでしょ」

それでも絞り出した声に兄貴の眉が上がった。彼は知らない人間だとしても、こんなことのためだけに危険を侵す人物ではないと思う。





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