パンドラ

須桜蛍夜

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盈月

143

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体育の内容はバレーだ。
二人組で準備運動をし、チームに分かれて試合をする。

私は、瑠璃のチームがゲームを始めたのを見計らって待機組の沙羅に近づく。

「隣いい?」

声をかけると彼女はビクッと震えて顔を上げた。

「……巴ちゃん」

その表情にあるのは怯えだ。
そのまますぐに下を向いてしまった沙羅の様子を肯定と見て隣に腰を下ろす。

いつも子犬のようだった少女は私の方を見ようとしない。

ーーなんなの?

これは予想外だ。話せば全てが解決すると思っていた。

「沙羅ーー」

「……聞いたの? だから来たの?」

「え?」

怯えだ瞳が私を向く。

「西山瑠璃に聞いたから来たんでしょ」

その言葉は悲鳴だった。

「瑠璃がどうしたの?」

硬さを帯びた私の声に、沙羅がハッと正気を取り戻す。誤魔化すように視線が外されるが、逃がすつもりはない。

両目で捉えた沙羅の顔。まだ襲われたという痕跡は残っている。鼻の形は以前よりも歪だし、左の?には痣のように傷が残っている。確かに不憫だ。だが、今はそれどころではない。

「瑠璃に何かしたの?」

「あ……ぁ」

彼女は気づいた。自分の悪手に。もう逃げられないことに。

「答えられないの?」

焦りで語調が荒くなる。早くしないと試合が終わる。瑠璃のことなら残さず知りたい。

笑顔でにじり寄った。沙羅は瞳を揺らしたままぽつぽつと語り出した。

「宿泊研修で西山さんに襲われたのーー」




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