パンドラ

須桜蛍夜

文字の大きさ
153 / 158
盈月

144

しおりを挟む
彼女が言うには、自主研修で私と別れた瑠璃は沙羅達を裏路地に連れ込み、暴力を振るったのだという。

「瑠璃の方から殴りかかってきたってこと?」

「……沙羅達も少し…………嫌がらせとかもしてたから、そのーー」

報復ってこと? いや、瑠璃はそんなことをしないだろう。

そう考えて、その思いに完全には賛成できない自分に気づいた。

私は彼女の何を知っているのか。

確かに私は瑠璃が何かを守るために暴力を振るっているのしか見たことがない。でも、それが全てなの? じゃあなんで、闇街なんかに行ってるの?

ーーダメだ。止まれ。

理性が叫ぶ。それでも想像は加速する。

もし瑠璃が暴力に快感を覚える人種だったら?

一瞬、タカとアニキのことを思い出した。彼らを倒した瑠璃はいつもと違うように見えた。暴力を……楽しんでいるようだった。

私が止めなければ、彼女は戦意を無くした相手を再びナイフで刺していた。

喉が乾く。

軽くなりかけていた心に重りが載せられる。もう考えたくはない。だが止まらない。

でも、暴力を振るいたいなら、最初から賢太郎を助ければ良かった。そうすれば私が来る前に思う存分できたはず。

「一緒に居た地元の友達とかも、半身不随とかになっちゃってさ、沙羅、怖くてさ」

語り続ける声が嫌な思いを煽っていく。

沙羅の言葉が信用できないことなんて知っている。それでも、確かに彼女は怪我を負った。そして、瑠璃が強いことを知っている。

完全なる嘘ではない。それがなによりいやらしい。

「だからさ、巴ちゃんもあの子なんかと友達やめた方がいいよ」

やめて、その言葉を言うのは。私は瑠璃と友達でいたいんだから。

「そうしないと巴ちゃん、殺されちゃうかもよ」

沙羅の言葉が不思議とすんなり入ってくる。

「勝手に瑠璃のこと語らないで」

だからこそ、声を荒げた。沙羅は身体を震わせて言葉を止め、上目遣いに私を見てくる。
それを拒絶するように私はその場を離れた。

こんな時に沙羅の話なんて聞かなければよかった。そんなことを思っても、後の祭りだ。私の覚悟は揺らいでしまった。





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

「証拠なら全て記録してあります」——記録魔法しか取り柄がないと捨てられた令嬢、婚約破棄の場で三年分の不正を読み上げる

歩人
ファンタジー
伯爵令嬢アネットの唯一の魔法は『記録《レコード》』——見たもの聞いたものを 一字一句記憶する地味な能力。婚約者の侯爵子息ヴィクトルは「戦えない魔法など 無価値だ」と婚約破棄を宣言する。だがアネットは微笑んだ。「承知いたしました。 では最後に一つだけ——」。彼女が読み上げ始めたのは、ヴィクトルが三年間で横領した 軍事費の明細。日付、金額、共犯者の名前、密会の会話。全て『記録』済み。 満座の貴族が凍りつく中、王宮監察官が静かに立ち上がった。 「……続けてください、アネット嬢」。 婚約破棄の舞台は、そのまま公開裁判になった。

私の人生に、おかえりなさい。――都合のいい「お姉ちゃん」は、もうどこにもいません

しょくぱん
恋愛
「お姉ちゃんなんだから」 ――それは私を縛る呪いの言葉だった。 家族の醜い穢れを一身に吸い込み、妹の美しさの「身代わり」として生きてきた私。 痛みで感覚を失った手も、鏡に映らない存在も、全ては家族のためだと信じていた。 でも、、そんな私、私じゃない!! ―― 私は、もう逃げない。 失われた人生を取り戻した今、私は、私に告げるだろう。 「私の人生に、おかえりなさい。」

仮面王の花嫁

松雪
恋愛
婚約者を腹違いの妹に奪われ、新しい相手も見つからず修道院に行く覚悟を決めたルチア。修道女となるため髪を切った日の夜、王城から「国王がルチアを妻に望んでいる」という書簡を持った使者がやって来た。 しかし、従兄弟であり恋仲だったニールが国王のせいで死に至った過去を持つルチアは、国王からの求婚を喜べずーー。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

白苑後宮の薬膳女官

絹乃
キャラ文芸
白苑(はくえん)後宮には、先代の薬膳女官が侍女に毒を盛ったという疑惑が今も残っていた。先代は瑞雪(ルイシュエ)の叔母である。叔母の濡れ衣を晴らすため、瑞雪は偽名を使い新たな薬膳女官として働いていた。 ある日、幼帝は瑞雪に勅命を下した。「病弱な皇后候補の少女を薬膳で救え」と。瑞雪の相棒となるのは、幼帝の護衛である寡黙な武官、星宇(シンユィ)。だが、元気を取り戻しはじめた少女が毒に倒れる。再び薬膳女官への疑いが向けられる中、瑞雪は星宇の揺るぎない信頼を支えに、後宮に渦巻く陰謀へ踏み込んでいく。 薬膳と毒が導く真相、叔母にかけられた冤罪の影。 静かに心を近づける薬膳女官と武官が紡ぐ、後宮ミステリー。

完 弱虫のたたかい方 (番外編更新済み!!)

水鳥楓椛
恋愛
「お姉様、コレちょーだい」  無邪気な笑顔でオネガイする天使の皮を被った義妹のラテに、大好きなお人形も、ぬいぐるみも、おもちゃも、ドレスも、アクセサリーも、何もかもを譲って来た。  ラテの後ろでモカのことを蛇のような視線で睨みつける継母カプチーノの手前、譲らないなんていう選択肢なんて存在しなかった。  だからこそ、モカは今日も微笑んだ言う。 「———えぇ、いいわよ」 たとえ彼女が持っているものが愛しの婚約者であったとしても———、

記憶をなくしても君は忘れない

水城ひさぎ
恋愛
本田光莉(ほんだひかり)、アメリカ・ロサンゼルス在住フォトグラファー、28歳。光莉には、松村理乃(まつむらりの)という同い年の異母姉がいる。行方不明になった理乃を探すため、日本へやってきた光莉は、高校時代の元カレ、月島拓海(つきしまたくみ)と再会する。しかし、彼は高校時代以降の記憶を喪失していた……。

処刑を望んだ悪役令嬢ですが、幼なじみの騎士が手放してくれません

藤原遊
恋愛
「私は処刑される運命の悪役令嬢――そう信じて、死を望んでいた。 けれど、幼なじみの騎士は『この命に代えても守る』と離してくれなくて……?」 侯爵令嬢アメリアは、幼い頃から「悪役令嬢」として囁かれてきた。 その冷たい視線と噂の中で、彼女は静かに己の役目を受け入れていた――。 けれど、すべてを遠ざけようとする彼女の前に現れたのは、まっすぐに想いを示す幼なじみの騎士。 揺らぐ心と、重ねてきた日々。 運命に逆らえないはずの未来に、ほんの少しの希望が灯る。 切なく、温かく、甘やかに紡がれる悪役令嬢物語。 最後まで見届けていただければ幸いです。 ※ 攻略対象の叔母である悪役令嬢に転生したけれど、なぜか攻略対象の甥に激重に愛されてます にて、親世代の恋愛模様を描いてます。

処理中です...