パンドラ

須桜蛍夜

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盈月

147

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巴の部屋は思ったよりも可愛らしかった。

「どうしたの、キョロキョロして」

オレンジジュースとクッキーを持って巴が戻ってくる。

「くまのぬいぐるみとかあるとは思わなかった」

「あぁ。小学生の時に家族旅行に行って買ってもらったんだ。それだけは捨てられなくて」

「ふーん」

わたしは手に取ったぬいぐるみをベッドに戻す。そしてもう一つの気になることを聞いた。

「隣の部屋に誰が居るの?」

「……ぇ、あ、兄貴がね」

「へー、巴ってお兄さん居たんだ」

物音の理由が分かってすっきりしたので、わたしは本棚に手を伸ばした。巴らしく、センスの良さそうな小説が並んでいる。

「ねぇ、瑠璃。ちょっといい?」

「ん?」

中表紙を開いた指を止める。巴はテーブルの上にジュースとクッキーを並べて真っ正面からこちらを見ていた。

わたしは本棚に小説を戻して、巴の向かいに座った。そして、クッキーを食べる巴につられて手を伸ばす。思ったよりも甘い。

「なに?」

巴は迷っているように目を伏せている。わたしはその様子を見守ったまま、オレンジジュースに口をつける。

そこでゼリーを渡していないことに気づいて、壁際に置いた紙袋に手を伸ばす。

ーーあれ?

紙袋がひしゃげて見えた。手を支えられなくなって、そのまま地面に倒れる。

「な……に」

身体の異変に意識がついていかない。妙に頭が働かない。

「ごめん、瑠璃」

そんな呟きを聞いた気がした。だけど、それを確かめる暇もなく、わたしは白に飲まれて意識を失った。






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