31 / 158
盈月
23
しおりを挟む
「なんだ、今までと同じじゃないか」
おれは以前、彼女に伝えた"瑠璃を信じる"と。そして今まで、信じようとしてきた。だから……!
そこまで考えて気がついた。おれ自身の思い違いに。
「違う……。あの時、おれが言ったのは"瑠璃を信じる"じゃなくて、"瑠璃を信じてる"だ」
頭の中を流れた回想。確かにおれはそう言った『何故だか瑠璃を信じている』と
ーーおれ、恐怖で色々見失ってたみたいだな。
呆れ果てて笑いが洩れた。本当に情けない。おれは、あの時点で既に瑠璃を信じていたんだ。傀儡にすると言われても動じない位。おれは知っていた瑠璃がチカラを嫌っていると、瑠璃が人を蔑ろにする人間じゃないと。
「ちくしょう」
叫んで頬を思いっきり叩く。なんで忘れていたんだろう。なんで信じきれなかったんだろう。本が好きで、身体に似合わず大飯食らいで、光が苦手な少女。知らなかった事が少しずつ見えてきて、少しずつ距離が近づいてきている筈なのに。
「瑠璃」
名前を呼んでおれはゆっくり頭を上げた。だけど、彼女はそこには居ない。もう部屋に戻ったらしい。でもおれは言葉を紡ぐ。
「おれ、お前の事信じるから」
声が部屋の中をこだました。この言葉が彼女に届いているか分からない。でもいい、これは聞かせるための言葉じゃない。
「さてと、食べるか」
たっぷりとした沈黙を経て、おれは重い空気を払う声を上げた。軽くなった言葉はいつものおれ。その感覚に酔いながらフォークを刺してくるくると回す。重荷が取れた今なら、なんでもできそうな気すらした。
「……でも、さすがにこれは無理だよな」
苦笑する。持ち上げたフォークには、皿にあった全てのスパゲティが巻きついている。時間が経った為、固まってしまったらしい。
「オリーブオイルあったっけ……?」
腕を下ろして頭をかく。深く刻んだ決意の重さは、おれが発した間抜けな声に包まれすぐに薄れていった。
おれは以前、彼女に伝えた"瑠璃を信じる"と。そして今まで、信じようとしてきた。だから……!
そこまで考えて気がついた。おれ自身の思い違いに。
「違う……。あの時、おれが言ったのは"瑠璃を信じる"じゃなくて、"瑠璃を信じてる"だ」
頭の中を流れた回想。確かにおれはそう言った『何故だか瑠璃を信じている』と
ーーおれ、恐怖で色々見失ってたみたいだな。
呆れ果てて笑いが洩れた。本当に情けない。おれは、あの時点で既に瑠璃を信じていたんだ。傀儡にすると言われても動じない位。おれは知っていた瑠璃がチカラを嫌っていると、瑠璃が人を蔑ろにする人間じゃないと。
「ちくしょう」
叫んで頬を思いっきり叩く。なんで忘れていたんだろう。なんで信じきれなかったんだろう。本が好きで、身体に似合わず大飯食らいで、光が苦手な少女。知らなかった事が少しずつ見えてきて、少しずつ距離が近づいてきている筈なのに。
「瑠璃」
名前を呼んでおれはゆっくり頭を上げた。だけど、彼女はそこには居ない。もう部屋に戻ったらしい。でもおれは言葉を紡ぐ。
「おれ、お前の事信じるから」
声が部屋の中をこだました。この言葉が彼女に届いているか分からない。でもいい、これは聞かせるための言葉じゃない。
「さてと、食べるか」
たっぷりとした沈黙を経て、おれは重い空気を払う声を上げた。軽くなった言葉はいつものおれ。その感覚に酔いながらフォークを刺してくるくると回す。重荷が取れた今なら、なんでもできそうな気すらした。
「……でも、さすがにこれは無理だよな」
苦笑する。持ち上げたフォークには、皿にあった全てのスパゲティが巻きついている。時間が経った為、固まってしまったらしい。
「オリーブオイルあったっけ……?」
腕を下ろして頭をかく。深く刻んだ決意の重さは、おれが発した間抜けな声に包まれすぐに薄れていった。
0
あなたにおすすめの小説
「証拠なら全て記録してあります」——記録魔法しか取り柄がないと捨てられた令嬢、婚約破棄の場で三年分の不正を読み上げる
歩人
ファンタジー
伯爵令嬢アネットの唯一の魔法は『記録《レコード》』——見たもの聞いたものを
一字一句記憶する地味な能力。婚約者の侯爵子息ヴィクトルは「戦えない魔法など
無価値だ」と婚約破棄を宣言する。だがアネットは微笑んだ。「承知いたしました。
では最後に一つだけ——」。彼女が読み上げ始めたのは、ヴィクトルが三年間で横領した
軍事費の明細。日付、金額、共犯者の名前、密会の会話。全て『記録』済み。
満座の貴族が凍りつく中、王宮監察官が静かに立ち上がった。
「……続けてください、アネット嬢」。
婚約破棄の舞台は、そのまま公開裁判になった。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
私の人生に、おかえりなさい。――都合のいい「お姉ちゃん」は、もうどこにもいません
しょくぱん
恋愛
「お姉ちゃんなんだから」
――それは私を縛る呪いの言葉だった。
家族の醜い穢れを一身に吸い込み、妹の美しさの「身代わり」として生きてきた私。
痛みで感覚を失った手も、鏡に映らない存在も、全ては家族のためだと信じていた。
でも、、そんな私、私じゃない!!
―― 私は、もう逃げない。 失われた人生を取り戻した今、私は、私に告げるだろう。
「私の人生に、おかえりなさい。」
仮面王の花嫁
松雪
恋愛
婚約者を腹違いの妹に奪われ、新しい相手も見つからず修道院に行く覚悟を決めたルチア。修道女となるため髪を切った日の夜、王城から「国王がルチアを妻に望んでいる」という書簡を持った使者がやって来た。
しかし、従兄弟であり恋仲だったニールが国王のせいで死に至った過去を持つルチアは、国王からの求婚を喜べずーー。
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
記憶をなくしても君は忘れない
水城ひさぎ
恋愛
本田光莉(ほんだひかり)、アメリカ・ロサンゼルス在住フォトグラファー、28歳。光莉には、松村理乃(まつむらりの)という同い年の異母姉がいる。行方不明になった理乃を探すため、日本へやってきた光莉は、高校時代の元カレ、月島拓海(つきしまたくみ)と再会する。しかし、彼は高校時代以降の記憶を喪失していた……。
結婚前夜に婚約破棄されたけど、おかげでポイントがたまって溺愛されて最高に幸せです❤
凪子
恋愛
私はローラ・クイーンズ、16歳。前世は喪女、現世はクイーンズ公爵家の公爵令嬢です。
幼いころからの婚約者・アレックス様との結婚間近……だったのだけど、従妹のアンナにあの手この手で奪われてしまい、婚約破棄になってしまいました。
でも、大丈夫。私には秘密の『ポイント帳』があるのです!
ポイントがたまると、『いいこと』がたくさん起こって……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる