36 / 158
盈月
28
しおりを挟む
「よし、とうちゃ~く」
辿り着いたのは屋上への扉の前、生徒の立ち入りが禁止された私だけの秘密の場所。
「待ってて、今開けるから」
懐を探り、鍵を取り出す。
カチャ
軽快な音を立てて扉は開いた。
「さ、いこいこ」
止まったままの背中を押して外へと飛び出す。ぬるい風と皮膚を焼く太陽。あんまり歓迎すべき気候じゃないけど、解放感だけが格別だった。
「っ……」
「どうした?」
洩れた声が気になって、少女の前に回り込む。彼女は光を拒絶するように固く目を閉じ、腕でそれを覆っていた。
「なんでもない。眩しかっただけ」
……まぁ、そうなんだろうけど。あまりにも反応が過剰すぎない? 日光、苦手なのかな。なら、悪いことしたかな。いろんな言葉が頭の中で回る。
「なら、いいけど」
でも、特に何も言うことができず、逃げるように足を進めて腰を下ろす。後ろを見ると、西山さんは、薄目でも開けているのか、固く閉じられたように見える瞳のまま、一直線にこっちへ向かってきていた。
「パラソル?」
近くまでやってきた彼女は呟く。
「そ、無いと日焼けしちゃうじゃん。ほら、おいで」
日陰と涼しさをもたらしてくれる緑の大きな傘、そして、広く敷かれたブルーシート。これが快適な私の秘密基地。少女は少し警戒するようにそれらを観察してから腰を下ろした。
「気持ちいいでしょ、ここ。私の秘密の場所なんだ」
目を開け、心地よさそうに見える彼女に、自慢げに語りかける。
「そうだね」
彼女は本を横に置いて風に当たった。やっと小説に勝てた。嬉しくなる。
「じゃあ、その鍵ちょうだい」
しかし、喜びに浸る私にかかったのは、思いもよらない一言だった。
辿り着いたのは屋上への扉の前、生徒の立ち入りが禁止された私だけの秘密の場所。
「待ってて、今開けるから」
懐を探り、鍵を取り出す。
カチャ
軽快な音を立てて扉は開いた。
「さ、いこいこ」
止まったままの背中を押して外へと飛び出す。ぬるい風と皮膚を焼く太陽。あんまり歓迎すべき気候じゃないけど、解放感だけが格別だった。
「っ……」
「どうした?」
洩れた声が気になって、少女の前に回り込む。彼女は光を拒絶するように固く目を閉じ、腕でそれを覆っていた。
「なんでもない。眩しかっただけ」
……まぁ、そうなんだろうけど。あまりにも反応が過剰すぎない? 日光、苦手なのかな。なら、悪いことしたかな。いろんな言葉が頭の中で回る。
「なら、いいけど」
でも、特に何も言うことができず、逃げるように足を進めて腰を下ろす。後ろを見ると、西山さんは、薄目でも開けているのか、固く閉じられたように見える瞳のまま、一直線にこっちへ向かってきていた。
「パラソル?」
近くまでやってきた彼女は呟く。
「そ、無いと日焼けしちゃうじゃん。ほら、おいで」
日陰と涼しさをもたらしてくれる緑の大きな傘、そして、広く敷かれたブルーシート。これが快適な私の秘密基地。少女は少し警戒するようにそれらを観察してから腰を下ろした。
「気持ちいいでしょ、ここ。私の秘密の場所なんだ」
目を開け、心地よさそうに見える彼女に、自慢げに語りかける。
「そうだね」
彼女は本を横に置いて風に当たった。やっと小説に勝てた。嬉しくなる。
「じゃあ、その鍵ちょうだい」
しかし、喜びに浸る私にかかったのは、思いもよらない一言だった。
0
あなたにおすすめの小説
婚約破棄は誰が為の
瀬織董李
ファンタジー
学園の卒業パーティーで起こった婚約破棄。
宣言した王太子は気付いていなかった。
この婚約破棄を誰よりも望んでいたのが、目の前の令嬢であることを……
10話程度の予定。1話約千文字です
10/9日HOTランキング5位
10/10HOTランキング1位になりました!
ありがとうございます!!
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
白苑後宮の薬膳女官
絹乃
キャラ文芸
白苑(はくえん)後宮には、先代の薬膳女官が侍女に毒を盛ったという疑惑が今も残っていた。先代は瑞雪(ルイシュエ)の叔母である。叔母の濡れ衣を晴らすため、瑞雪は偽名を使い新たな薬膳女官として働いていた。
ある日、幼帝は瑞雪に勅命を下した。「病弱な皇后候補の少女を薬膳で救え」と。瑞雪の相棒となるのは、幼帝の護衛である寡黙な武官、星宇(シンユィ)。だが、元気を取り戻しはじめた少女が毒に倒れる。再び薬膳女官への疑いが向けられる中、瑞雪は星宇の揺るぎない信頼を支えに、後宮に渦巻く陰謀へ踏み込んでいく。
薬膳と毒が導く真相、叔母にかけられた冤罪の影。
静かに心を近づける薬膳女官と武官が紡ぐ、後宮ミステリー。
ある日、私は事故で死んだ───はずなのに、目が覚めたら事故の日の朝なんですけど!?
ねーさん
恋愛
アイリスは十六歳の誕生日の前の日に、姉ヴィクトリアと幼なじみジェイドと共に馬車で王宮に向かう途中、事故に遭い命を落とした───はずだったが、目覚めると何故か事故の日の朝に巻き戻っていた。
何度もその日を繰り返して、その度事故に遭って死んでしまうアイリス。
何度目の「今日」かもわからなくなった頃、目が覚めると、そこにはヴィクトリアの婚約者で第三王子ウォルターがいた。
「明日」が来たんだわ。私、十六歳になれたんだ…
処刑を望んだ悪役令嬢ですが、幼なじみの騎士が手放してくれません
藤原遊
恋愛
「私は処刑される運命の悪役令嬢――そう信じて、死を望んでいた。
けれど、幼なじみの騎士は『この命に代えても守る』と離してくれなくて……?」
侯爵令嬢アメリアは、幼い頃から「悪役令嬢」として囁かれてきた。
その冷たい視線と噂の中で、彼女は静かに己の役目を受け入れていた――。
けれど、すべてを遠ざけようとする彼女の前に現れたのは、まっすぐに想いを示す幼なじみの騎士。
揺らぐ心と、重ねてきた日々。
運命に逆らえないはずの未来に、ほんの少しの希望が灯る。
切なく、温かく、甘やかに紡がれる悪役令嬢物語。
最後まで見届けていただければ幸いです。
※ 攻略対象の叔母である悪役令嬢に転生したけれど、なぜか攻略対象の甥に激重に愛されてます
にて、親世代の恋愛模様を描いてます。
はらぺこ令嬢は侯爵様を満たしたい
有栖
ファンタジー
エルヴィラはいつもお腹を空かせている子供だった。あまりに大食いするので心配した両親が医者に連れていくと、それは彼女が持つ魔力量のせいだとわかる。彼女は多すぎる魔力を維持するため、いつも疲れるほど食べ続けていなければならなかった。しかしひとつだけ、有り余る魔力を放出する方法があった。料理だ。彼女が作る料理には、魔力がたっぷりこめられているのである。そんな彼女の元へある日、知らせが訪れる。
※食事の描写は普通の日本のお料理になっています
「証拠なら全て記録してあります」——記録魔法しか取り柄がないと捨てられた令嬢、婚約破棄の場で三年分の不正を読み上げる
歩人
ファンタジー
伯爵令嬢アネットの唯一の魔法は『記録《レコード》』——見たもの聞いたものを
一字一句記憶する地味な能力。婚約者の侯爵子息ヴィクトルは「戦えない魔法など
無価値だ」と婚約破棄を宣言する。だがアネットは微笑んだ。「承知いたしました。
では最後に一つだけ——」。彼女が読み上げ始めたのは、ヴィクトルが三年間で横領した
軍事費の明細。日付、金額、共犯者の名前、密会の会話。全て『記録』済み。
満座の貴族が凍りつく中、王宮監察官が静かに立ち上がった。
「……続けてください、アネット嬢」。
婚約破棄の舞台は、そのまま公開裁判になった。
私の存在
戒月冷音
恋愛
私は、一生懸命生きてきた。
何故か相手にされない親は、放置し姉に顎で使われてきた。
しかし15の時、小学生の事故現場に遭遇した結果、私の生が終わった。
しかし、別の世界で目覚め、前世の知識を元に私は生まれ変わる…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる