パンドラ

須桜蛍夜

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盈月

28

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「よし、とうちゃ~く」

辿り着いたのは屋上への扉の前、生徒の立ち入りが禁止された私だけの秘密の場所。

「待ってて、今開けるから」

懐を探り、鍵を取り出す。

カチャ

軽快な音を立てて扉は開いた。

「さ、いこいこ」

止まったままの背中を押して外へと飛び出す。ぬるい風と皮膚を焼く太陽。あんまり歓迎すべき気候じゃないけど、解放感だけが格別だった。

「っ……」

「どうした?」

洩れた声が気になって、少女の前に回り込む。彼女は光を拒絶するように固く目を閉じ、腕でそれを覆っていた。

「なんでもない。眩しかっただけ」

……まぁ、そうなんだろうけど。あまりにも反応が過剰すぎない? 日光、苦手なのかな。なら、悪いことしたかな。いろんな言葉が頭の中で回る。

「なら、いいけど」

でも、特に何も言うことができず、逃げるように足を進めて腰を下ろす。後ろを見ると、西山さんは、薄目でも開けているのか、固く閉じられたように見える瞳のまま、一直線にこっちへ向かってきていた。

 「パラソル?」

近くまでやってきた彼女は呟く。

「そ、無いと日焼けしちゃうじゃん。ほら、おいで」

日陰と涼しさをもたらしてくれる緑の大きな傘、そして、広く敷かれたブルーシート。これが快適な私の秘密基地。少女は少し警戒するようにそれらを観察してから腰を下ろした。

「気持ちいいでしょ、ここ。私の秘密の場所なんだ」

目を開け、心地よさそうに見える彼女に、自慢げに語りかける。

「そうだね」

彼女は本を横に置いて風に当たった。やっと小説に勝てた。嬉しくなる。

「じゃあ、その鍵ちょうだい」

しかし、喜びに浸る私にかかったのは、思いもよらない一言だった。
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