パンドラ

須桜蛍夜

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盈月

36

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***

「巴ちゃ~ん、おっはよー!」

教室に入った途端、沙羅が飛びついてきた。

「おはよ~」

「おはー」

「今日はちょっと遅かったね」

それに続いて次々に声をかけられ、私は笑顔で応えていく。


私は人気者だ。

クラスメートのほとんどは私を好いてくれている。人気NO.1だと言っても過言ではないと思う。それ位に私は地位を確立していた。

ーーで、多分このクラスでその対極にいるのが……。

窓側奥の席へと視線を向けた。

静かに本を読む少女。今日は殴られでもしたのか、制服が歪に乱れている。

事なかれ主義の先生達や頭の中お花畑のたま子先生が何も言わないので、彼女へのいじめは悪化しているようだった。段々と痕跡が目に見えるようになっている。


いじめの原因が自分だという事は分かっていた。私ならば止められるという事も分かっている。分かってはいるが、私は正直迷っていた。

"私の所為だ"

負い目はある。 

"止めなきゃいけない"

いっぱしの正義も持っているつもりだ。

でも、行動に移せなかった。西山さんと関わる事に抵抗があった。はっきりと自分が必要とされていない事が分かって、彼女を避けてしまう自分が居た。

彼女は私の助けなど期待していない。終わらせるなら、彼女自身でやる筈だ。

なら、わざわざ助ける必要はあるのか?

疑問は解けずに、私はまた、何もせずに彼女を見つめた。
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