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盈月
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「ここなら静かだろ」
俺の声もよく響く。ここは、コンピュータ室へと繋がる渡り廊下。滅多な事がない限り人が通る事はない。
俺に合わせて西山も止まった。視線は下を向き、何も言わない。それは正に人形のようでこの静寂がよく似合う無機物。
「で、なに?」
「っ……」
心臓が跳ねた。本来話すはずのない物が話しかけてきた。
ーー違うだろ。
思い直す。西山は人間で、俺はこいつに謝らなくてはいけない。せっかく時間を貰ったんだから、丁寧に、誠心誠意。
「…………」
しかし、いつの間にか、恐れも罪悪感もふらりと何処かに旅に行ってしまっていた。今は、感情的にはこいつにきちんと謝れない気がする。
「俺、西山に謝りたいんだ。殴った事、いじめた事、ベルトの事。本当にごめー」
「そんな事で呼び出したの?」
「え?」
静かな瞳が俺を捉えた。
「そんなの別に気にしてない。あなたの事は憎んでないし、なんとも思ってない。謝罪なんて必要ない」
言葉は自然に俺の中へと入ってきた。感情の無い声。起伏がなくて淡白。だけどこれはきっと、西山の本心。彼女は本当に俺の罪を意識に留めていない。
「じゃ、帰るね。もう用も済んだでしょ」
くるりと返る背中。ショートカットの髪の毛を揺らし、それは遠くなっていく。
「待てよ。まだ謝れてねぇ。まだーー」
「気にしてないって言ったでしょ。それに、どっちにしろ自分の意思じゃない謝罪なんていらない」
ーー俺の意思……。
心の奥に何かが刺さった。少女の姿は遠くへ消えた。
俺の声もよく響く。ここは、コンピュータ室へと繋がる渡り廊下。滅多な事がない限り人が通る事はない。
俺に合わせて西山も止まった。視線は下を向き、何も言わない。それは正に人形のようでこの静寂がよく似合う無機物。
「で、なに?」
「っ……」
心臓が跳ねた。本来話すはずのない物が話しかけてきた。
ーー違うだろ。
思い直す。西山は人間で、俺はこいつに謝らなくてはいけない。せっかく時間を貰ったんだから、丁寧に、誠心誠意。
「…………」
しかし、いつの間にか、恐れも罪悪感もふらりと何処かに旅に行ってしまっていた。今は、感情的にはこいつにきちんと謝れない気がする。
「俺、西山に謝りたいんだ。殴った事、いじめた事、ベルトの事。本当にごめー」
「そんな事で呼び出したの?」
「え?」
静かな瞳が俺を捉えた。
「そんなの別に気にしてない。あなたの事は憎んでないし、なんとも思ってない。謝罪なんて必要ない」
言葉は自然に俺の中へと入ってきた。感情の無い声。起伏がなくて淡白。だけどこれはきっと、西山の本心。彼女は本当に俺の罪を意識に留めていない。
「じゃ、帰るね。もう用も済んだでしょ」
くるりと返る背中。ショートカットの髪の毛を揺らし、それは遠くなっていく。
「待てよ。まだ謝れてねぇ。まだーー」
「気にしてないって言ったでしょ。それに、どっちにしろ自分の意思じゃない謝罪なんていらない」
ーー俺の意思……。
心の奥に何かが刺さった。少女の姿は遠くへ消えた。
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