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盈月
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***
「賢太郎の謝罪、受け入れなかったんだね」
思い切ったように言葉にした。それを帰り道を共に歩く友人は、「必要ないから」とふらりと流す。
「あー、やっぱり? 教室に戻ってきてからのあいつ、かなり落ち込んでたからさ、瑠璃にフラれたんだな~って……」
「それ、スルーした方がいいの?」
空を仰いで語った言葉に、割り込む声が綴られた。
黒いガラス玉が、片方だけで私を捉える。綺麗に自分がそこの中に映り込む。私はガラス玉の中に居る。
ーーそっか、気づいてたんだ。
逃れられない瞳を前に、自分の敗北を認識する。
「せっかく、忍者のように頑張ったんだけどな」
私は、あの場面をこの目で見ていた。見届けるために先回りして隠れていた。だから、全部知っている。賢太郎の謝罪も、瑠璃の返しも。
「じゃあ、踏み込んで聞くけどさ、自分の意思じゃないってのは……」
「巴も気づいてはいたでしょ。焚きつけた本人だろうから。あの子は巴に言われたから謝った。彼の意思じゃない。ただ貰い物の罪悪感を自分の物だと思っているだけ」
なるほどね。あいつはまだ逃げている真っ最中って訳だ。
「巴が望むなら、きちんと謝罪を受け入れるけど?」
瑠璃が友達のよしみを突きつけてくる。私はゆっくりと首を横に振る。
「いや、いいよ。瑠璃の好きにしてくれて構わない。これはあいつの弱さだし、弱いまま逃げ続けたとしても、それもまたあいつの選択だから」
「そう」
彼女はそっと視線を戻した。瑠璃的にはどうでもいいのだろう。あいつが弱いままに潰れようが、向き合って謝ってこようが。
私を捕らえたガラス玉は、彼の姿を映しはしないから。
「賢太郎の謝罪、受け入れなかったんだね」
思い切ったように言葉にした。それを帰り道を共に歩く友人は、「必要ないから」とふらりと流す。
「あー、やっぱり? 教室に戻ってきてからのあいつ、かなり落ち込んでたからさ、瑠璃にフラれたんだな~って……」
「それ、スルーした方がいいの?」
空を仰いで語った言葉に、割り込む声が綴られた。
黒いガラス玉が、片方だけで私を捉える。綺麗に自分がそこの中に映り込む。私はガラス玉の中に居る。
ーーそっか、気づいてたんだ。
逃れられない瞳を前に、自分の敗北を認識する。
「せっかく、忍者のように頑張ったんだけどな」
私は、あの場面をこの目で見ていた。見届けるために先回りして隠れていた。だから、全部知っている。賢太郎の謝罪も、瑠璃の返しも。
「じゃあ、踏み込んで聞くけどさ、自分の意思じゃないってのは……」
「巴も気づいてはいたでしょ。焚きつけた本人だろうから。あの子は巴に言われたから謝った。彼の意思じゃない。ただ貰い物の罪悪感を自分の物だと思っているだけ」
なるほどね。あいつはまだ逃げている真っ最中って訳だ。
「巴が望むなら、きちんと謝罪を受け入れるけど?」
瑠璃が友達のよしみを突きつけてくる。私はゆっくりと首を横に振る。
「いや、いいよ。瑠璃の好きにしてくれて構わない。これはあいつの弱さだし、弱いまま逃げ続けたとしても、それもまたあいつの選択だから」
「そう」
彼女はそっと視線を戻した。瑠璃的にはどうでもいいのだろう。あいつが弱いままに潰れようが、向き合って謝ってこようが。
私を捕らえたガラス玉は、彼の姿を映しはしないから。
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