パンドラ

須桜蛍夜

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盈月

59

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***

青い空に白い雲。屋上は絵に描いたような晴天に覆われている。私はそれをパラソルの隙間から見上げて呟く。

「あー、いい天気だね~」

「…………」

「瑠璃、見て! カラスが気持ちよさそうに飛んでるよ」

「…………」

「ホームルームでのたま子先生には笑ったよね。すっ転んでプリントぶちまけるわ、礼をしようとして教卓に頭ぶつけるわで腹筋崩壊するかと思ったよ」

「…………」

「…………」

ーーふん。

背中を向け、不貞腐れた。

瑠璃なんてもう知らない。どうせ私なんかより本の方がいいんでしょ。後で話しかけてきても答えてあげないから。

見えた空は綺麗だった。暖かい風が吹き抜けて、鳥がうるさいくらいによく鳴いている。ぽかぽか陽気眠気を誘い、気持ち穏やかに、コンクリートの床すら優しく見えてくる。

……って、ちょっとくらいは反応見せろよ。


ジト目気味に隣の少女を見た。こんなにもあからさまに"強がっているけど、本当は構って欲しいのよオーラ"を出しているのに、彼女は本から一切目を離さない。言葉を返してもくれない。彫像みたいに微動だにしない。

こういう時の瑠璃は、大抵、面白すぎる小説を読んでいるか、私の相手が面倒くさいかのどちらかである。

多分今は後者。

最近、彼女はこうして私をぞんざいに扱う事が増えてきた。気の置けない仲になるみたいで嬉しいし、出会った当初を思い返すと、パーティーを開催しても良いくらいに大歓迎の状態だけど……。

今の私はそんな喜びを差し引いてもお釣りがくるくらいに面白くない。

ーーどうにかして瑠璃の興味をこっちに向けなきゃ。

目を皿のようにして彼女が反応しそうな物を探す。

無骨なコンクリート、飛び降り防止の柵、ブルーシート、パラソル……。

ーーおっ!

瑠璃の携帯を発見。

私は、スリの達人のように無造作に置いてあったそれを手中に収めた。

ーースマホは恥の宝庫。勝手に覗いたりすれば、さすがの瑠璃でも無視したりは出来ないはず……。

って、なんでロックすらされてないのさ!?

なんなの、情報オープンなの? 私は恥ずかしい物とか入れてませんって? どうぞどうぞ覗いてくださいって? 余裕ぶっこいていられるのも今の内だよ。

横目に見えるは、相変わらずの涼しい顔。焦りの一つも見せやしない。 

……こうなったら、絶対に面白い物の一つや二つ、見つけてやる。

決意を胸に、私は白い端末を操作し始めた。

右上から順にアイコンを開いてゆき、一語一句見逃さないように視線を滑らせる。

開き、観察し、閉じ。開き、観察し、閉じ。開き、観察し、閉じ……。



ーー何も無い !!!


連絡帳は私と"弘さん"の二件。LINEのトークも無いに等しく、写真は0件。アプリは皆無。

これが女子高生の携帯電話か! と突っ込みたくなる中身だった。だけど、なんとも瑠璃らしすぎて文句すらも出てこない。

「は~ぁ」

諦めのため息をつき、手持ち無沙汰になった私は、何とは無しに一つのアプリを起動する。

ーーあれ? これって……。

「ねぇ」

声をかけても彫像には届かない。

「瑠璃ってさーー」

しかし、尋ねた途端に彫像は壊れ、珍しく血相を変えた彼女がこちらを見た。
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