パンドラ

須桜蛍夜

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盈月

81

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「じゃあ今度は私から聞きますね。瑠璃と西山さんはどうなんですか? 瑠璃の話を聞いてると仲良さそうですけど」

「仲良い……のかな? いまいちそんな感じはしないけど。会話とかも少ないし」

「そうなんですか? もっと仲良いのかと思ってました」

巴は本気で驚いたようだ。目をいつもより見開いていて、声も少し上ずっている。

「逆に瑠璃がおれのことなんて言ってるか知りたいな」

「うーん。西山さんのことを何か言っているというより、瑠璃の話に西山さん以外出てこないって感じですね」

「……なるほど。それはそれで嬉しいような悲しいような感じだね」

苦笑するように笑ってオレンジジュースを一飲みする。言葉とは裏腹にその態度は悲しそうだ。

「でも、まぁ、巴ちゃん達と会話してるってだけでも良しとするべきなのかな、うん。かなり気難しい子だけど、仲良くしてあげてね」

今度は優しく笑ってこっちを見てくる。本当に表情がころころと変わる人だ。

「はい、そのつもりです」

巴の元気な声。

「……はい」

それに続いた俺の声。誰が聞いても分かるほどに覇気は無い。俺はあいつと仲良くする権利なんて無いから。罪を償わなければ、そんなことは約束できない。

俺の様子が気になったのか、西山さんの視線を感じた。 だけど何も言ってこない。辛い沈黙が緩やかに流れていく。

聞いてくれればいいのに。

そんなことを思ってしまう。俺は本当に最低だ。

空間は静かに迫ってきた。巴の助け船も今度は出ない。俺は逃げちゃいけない。

「あの……」

ピロリロン♪

意を決すと同時に軽快な電子音が流れ始めた。

「あ、ごめん。おれの携帯だ」

我に返ったように西山さんは携帯を確かめる。

「…………」

決意は行き場を無くしてわだかまる。不完全燃焼が歯痒さを残していく。今度は、早く話して楽になりたい。でもーー。

「ただいま」

その思いは単調な声に覆い隠された。
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