パンドラ

須桜蛍夜

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盈月

80

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「じゃあ早速だけど、二人はどんなきっかけで瑠璃と友達になったの?」

西山さんは配り終えるとまさに早速という感じで問うてきた。それはそれは楽しそうに、恋バナをする女子みたいな顔で。

「えっと……」

答えを待つキラキラした目に触発されて声を洩らす。しかし、続けることは出来なかった。

ーーきっかけっていうと、あれだよな。俺が西山をいじめてたこと。でも、そんなこと……。

言えない。

この人が西山の親であるならば、言わなければいけない。謝らなければいけないはずだ。だけど……。

拳を固く握る。口が重い。身体が固い。空気が怖い。声を出すのが恐ろしい。

謝らなきゃ。

頭の中では何度もデモンストレーションしている。上手く声に出せている。なのに、現実では上手く言えない。西山さんになんと言われるか。恐ろしくてしょうがない。

「私が瑠璃と友達になりたくてアプローチかけたのが最初で、賢太郎は私と仲良かったので次第に三人で過ごす事が多くなっていって今の状態になった感じです」

「…………」

俯いていた頭を上げる。助け船を出した少女は、こちらには目もくれずニコニコと笑いかけている。

「へぇ~、そうなんだ。じゃあ、巴ちゃんはどうして瑠璃と友達になろうと思ったの?」

「うーん、なんでしょう。周りにあまり居ないタイプだし、興味が湧いたっていうのが理由ですかね」

「そっか。まぁ、あまり居そうなタイプでは無いね。でも、あの子かなり付き合いにくいでしょ。大変じゃない?」

「確かに付き合いやすくはないですね。何考えてるか分からないし、自分勝手だし。でも、一緒に居て楽しいですよ。私、瑠璃の前では正直で居られるし」

「良かった。心配してたんだ。瑠璃と嫌々付き合ってるんじゃないかって。いや~ 、ホッとした」

テンポ良く進んだ会話。西山さんの満面の笑みは俺の罪悪感をより深くさせた。西山にはこんなに心配してくれている人が居るのに、俺は……。

ドロドロとした物が心を満たし始めていた。



 
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