88 / 158
盈月
79
しおりを挟む
「まぁ、夕飯までにはきっと帰ってくると思うからゆっくりしてってよ。おれも瑠璃の友達に興味あるし」
そんな俺らを安心させるように西山さんは屈託なく笑った。
「私も西山さんと話してみたいです」
それに巴も乗じる。こっちの笑みも屈託なくは見えた。
「あ、お茶も出してなかったね。オレンジジュース飲める?」
「大丈夫です」
「そんな、お構いなく」
二つの声を背に受けて西山さんはキッチンへと向かっていく。言葉の違いは品格の違いかな。少し拗ねた気分になる。
「で、西山も居ないのに長居してていいのかよ?」
声を落としぶっきらぼうに問うた。ここで待っている時間があれば、何か別の事が出来る気がした。
「瑠璃が居なきゃ話が進まないんだからしょうがないでしょ。それに、私は"弘さん"に興味があるの」
「弘さん?」
「そう。瑠璃の口から度々出てきてたけど、すごく信頼されてるみたいだっ……」
「お待たせ~」
巴が言葉を切ったと同時に西山さんがオレンジジュースとゼリーを持ってきた。彼はいそいそとそれらを配ってくれる。
"ありがとうございます"
もごもごとお礼を言ってそれを受け取る。俺が貰ったのはぶどうゼリーだった。
ーーこの人が西山から信頼されてる?
ジュースを一口飲みながら目の前の青年をじっくりと観察する。背広の上着だけを脱いだような格好で、茶色の髪を掻きながらずっとへらへらと笑っている。正直言って頼りない。何一つ西山に好かれそうな要素は見つけられない。第一、西山が誰かを信頼するなんてあり得そうに思えない。
ーー巴の勘違いなんじゃねぇの?
そっちの方がありそうな気がした。
そんな俺らを安心させるように西山さんは屈託なく笑った。
「私も西山さんと話してみたいです」
それに巴も乗じる。こっちの笑みも屈託なくは見えた。
「あ、お茶も出してなかったね。オレンジジュース飲める?」
「大丈夫です」
「そんな、お構いなく」
二つの声を背に受けて西山さんはキッチンへと向かっていく。言葉の違いは品格の違いかな。少し拗ねた気分になる。
「で、西山も居ないのに長居してていいのかよ?」
声を落としぶっきらぼうに問うた。ここで待っている時間があれば、何か別の事が出来る気がした。
「瑠璃が居なきゃ話が進まないんだからしょうがないでしょ。それに、私は"弘さん"に興味があるの」
「弘さん?」
「そう。瑠璃の口から度々出てきてたけど、すごく信頼されてるみたいだっ……」
「お待たせ~」
巴が言葉を切ったと同時に西山さんがオレンジジュースとゼリーを持ってきた。彼はいそいそとそれらを配ってくれる。
"ありがとうございます"
もごもごとお礼を言ってそれを受け取る。俺が貰ったのはぶどうゼリーだった。
ーーこの人が西山から信頼されてる?
ジュースを一口飲みながら目の前の青年をじっくりと観察する。背広の上着だけを脱いだような格好で、茶色の髪を掻きながらずっとへらへらと笑っている。正直言って頼りない。何一つ西山に好かれそうな要素は見つけられない。第一、西山が誰かを信頼するなんてあり得そうに思えない。
ーー巴の勘違いなんじゃねぇの?
そっちの方がありそうな気がした。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】メルティは諦めない~立派なレディになったなら
すみ 小桜(sumitan)
恋愛
レドゼンツ伯爵家の次女メルティは、水面に映る未来を見る(予言)事ができた。ある日、父親が事故に遭う事を知りそれを止めた事によって、聖女となり第二王子と婚約する事になるが、なぜか姉であるクラリサがそれらを手にする事に――。51話で完結です。
「婚約破棄された転生令嬢ですが、王城のメイド五百人に慕われるメイド長になりました。なお元婚約者は私のメイドに土下座中です」
まさき
恋愛
社畜OLとして過労死した私は、異世界の令嬢・アリア・ヴェルナーに転生した。
目が覚めたら、婚約破棄されていた。
理由は「地味で面白みがない」から。
泣く暇もなかった。翌朝、王城のメイド採用面接に向かった。
最初は鼻で笑われた。雑用係からのスタートだった。
でも——前世で叩き込まれた仕事術と、一人ひとりの話を聞く姿勢で、少しずつメイドたちが集まってきた。
厨房が変わった。リネンが変わった。王城全体が変わっていった。
そして就任スピーチで宣言した。
「500人全員の名前を、覚えます」
冷酷と噂される王太子は、静かに見ていた。
悪役令嬢は妨害を仕掛けてきた。
元婚約者は——後悔し始めていた。
婚約破棄された令嬢が、500人に慕われるメイド長になるまでの物語。
なお元婚約者は、私のメイドたちの前で土下座中です。
はらぺこ令嬢は侯爵様を満たしたい
有栖
ファンタジー
エルヴィラはいつもお腹を空かせている子供だった。あまりに大食いするので心配した両親が医者に連れていくと、それは彼女が持つ魔力量のせいだとわかる。彼女は多すぎる魔力を維持するため、いつも疲れるほど食べ続けていなければならなかった。しかしひとつだけ、有り余る魔力を放出する方法があった。料理だ。彼女が作る料理には、魔力がたっぷりこめられているのである。そんな彼女の元へある日、知らせが訪れる。
※食事の描写は普通の日本のお料理になっています
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
ある日、私は事故で死んだ───はずなのに、目が覚めたら事故の日の朝なんですけど!?
ねーさん
恋愛
アイリスは十六歳の誕生日の前の日に、姉ヴィクトリアと幼なじみジェイドと共に馬車で王宮に向かう途中、事故に遭い命を落とした───はずだったが、目覚めると何故か事故の日の朝に巻き戻っていた。
何度もその日を繰り返して、その度事故に遭って死んでしまうアイリス。
何度目の「今日」かもわからなくなった頃、目が覚めると、そこにはヴィクトリアの婚約者で第三王子ウォルターがいた。
「明日」が来たんだわ。私、十六歳になれたんだ…
「証拠なら全て記録してあります」——記録魔法しか取り柄がないと捨てられた令嬢、婚約破棄の場で三年分の不正を読み上げる
歩人
ファンタジー
伯爵令嬢アネットの唯一の魔法は『記録《レコード》』——見たもの聞いたものを
一字一句記憶する地味な能力。婚約者の侯爵子息ヴィクトルは「戦えない魔法など
無価値だ」と婚約破棄を宣言する。だがアネットは微笑んだ。「承知いたしました。
では最後に一つだけ——」。彼女が読み上げ始めたのは、ヴィクトルが三年間で横領した
軍事費の明細。日付、金額、共犯者の名前、密会の会話。全て『記録』済み。
満座の貴族が凍りつく中、王宮監察官が静かに立ち上がった。
「……続けてください、アネット嬢」。
婚約破棄の舞台は、そのまま公開裁判になった。
処刑を望んだ悪役令嬢ですが、幼なじみの騎士が手放してくれません
藤原遊
恋愛
「私は処刑される運命の悪役令嬢――そう信じて、死を望んでいた。
けれど、幼なじみの騎士は『この命に代えても守る』と離してくれなくて……?」
侯爵令嬢アメリアは、幼い頃から「悪役令嬢」として囁かれてきた。
その冷たい視線と噂の中で、彼女は静かに己の役目を受け入れていた――。
けれど、すべてを遠ざけようとする彼女の前に現れたのは、まっすぐに想いを示す幼なじみの騎士。
揺らぐ心と、重ねてきた日々。
運命に逆らえないはずの未来に、ほんの少しの希望が灯る。
切なく、温かく、甘やかに紡がれる悪役令嬢物語。
最後まで見届けていただければ幸いです。
※ 攻略対象の叔母である悪役令嬢に転生したけれど、なぜか攻略対象の甥に激重に愛されてます
にて、親世代の恋愛模様を描いてます。
香死妃(かしひ)は香りに埋もれて謎を解く
液体猫
キャラ文芸
第8回キャラ文芸大賞にて奨励賞受賞しました(^_^)/
香を操り、死者の想いを知る一族がいる。そう囁かれたのは、ずっと昔の話だった。今ではその一族の生き残りすら見ず、誰もが彼ら、彼女たちの存在を忘れてしまっていた。
ある日のこと、一人の侍女が急死した。原因は不明で、解決されないまま月日が流れていき……
その事件を解決するために一人の青年が動き出す。その過程で出会った少女──香 麗然《コウ レイラン》──は、忘れ去られた一族の者だったと知った。
香 麗然《コウ レイラン》が後宮に現れた瞬間、事態は動いていく。
彼女は香りに秘められた事件を解決。ついでに、ぶっきらぼうな青年兵、幼い妃など。数多の人々を無自覚に誑かしていった。
テンパると田舎娘丸出しになる香 麗然《コウ レイラン》と謎だらけの青年兵がダッグを組み、数々の事件に挑んでいく。
後宮の闇、そして人々の想いを描く、後宮恋愛ミステリーです。
シリアス成分が少し多めとなっています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる