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不吉な予感
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「みちる、ほら、もっとこう、だっ」
みちるの細い腰を持つ星児の手に力が加わった。
「あぁっ!」
跳ねた白く細い躰は背中を弓なりに反らす。
「星児! ムリさせんじゃねぇって!」
みちるの反った背に腕を添え、空をさ迷う手を優しく握りしめた保は星児をたしなめる。
「ムリじゃなねぇよな?」
睨む保にはお構い無しに星児は口角を上げてみちるを見つめ、腰に添えていた手をスッと頬に移す。涙目で喘ぐような吐息を漏らすみちるの唇にキスをした。
「ん……」
保の手の中のみちるの細く小さな柔らかい手にキュッと力が籠る。保は愛しい白い手に唇を寄せた。
「星児さん、眠っちゃいました」
「ああ」
保がクスリと笑う。
「珍しいけど。最近、コイツは東奔西走、働き詰めだから、相当疲れが溜まってるんだろ。ずっと気も張ってるからな」
ずっと緊張してるんですね。
みちるはそっと星児に手を伸ばす。
狸寝入りをしていた星児に腕を掴まれ押し倒された事があった為、恐る恐るその頬に触れた。
今夜は触れても、ピクリとも反応はなかった。
「爆睡モードだな」
見ていた保が肩を竦めながらみちるに笑いかける。優しい笑顔に彼女の胸がキュン……と鳴った。
星児の頬に触れていたみちるの手をそっと掴んだ保は、みちるの躰を自分の方へ抱き寄せた。耳元に囁く。
「もう少し、いいか」
首筋に掛かる吐息にみちるは震えた。
保がみちるをこんなにはっきりと求めた事はなかった。まるで初めての時のようにみちるのトクトクと早くなる鼓動が耳に響く。
「はい……お願いします」
首を竦めながら恥ずかしそうにしながらもかしこまった返事をしたみちるに、保はプと吹いた。
「その反応は、萎えるな」
まぁいいや、と笑いながらみちるの頬に優しく手を添える。
「みちるにこうして触れられれば、俺はいいよ」
つるりとなめらかな肌を保は抱き締める。みちるは幸せそうに表情を緩めた。
保さんの胸は、気持ちがいいです。
「キスを」
互いを確認するようにゆっくりと唇を重ねる。
季節は移り、初夏を迎えていた。
みちるはストリップ劇場での地位を確実に変えつつあったが、気付けば彼等の間でストリップの話題は暗黙のタブーとなっていた。
「……んっ、たもつさ……ぁっ」
みちるの躰がピクンと震え、保の肩に添えられた手にキュッと力が入った。
「みちる……」
星児の瞳が澄んだ漆黒の寒色ならば、保の瞳は微かにブラウンが入った暖色だ。
優しさが滲む保の瞳にみちるは吸い込まれる。
「保さん……」
痺れを残すその躰のまま、唇を重ねた。
私達はこのままでいいのかな。どうしたらいいんだろうね、保さん。
「保、抜け駆けだな」
2人が唇をゆっくり離した時、みちるの腕を背後から星児が掴んだ。
「なんだよ星児、やっぱ狸かよ」
軽く睨んだ保に星児は、身をお越しながらクックと笑った。
「いや、マジで堕ちてた。今目ぇ覚めた……よっと」
「きゃっ」
星児は強引にみちるの上半身を抱き寄せ、唇に少し荒いキスをした。
†††
サラリーマンをしていた時は毎朝ちゃんと起きていたのにな。
リビングのカーテンを開けた保は、すっかり高くなった太陽を見て思う。今では起きるのは昼過ぎだ。
みちると星児はまだ夢の中だった。保はみちるにキスをしてひと足先に寝室から出、シャワーを浴びた。
キッチンに行き食器棚からグラスを出し、冷蔵庫から出したミネラルウォーターを注ぎ、一気に飲み干した。
グラス片手にキッチンから出てきた保がテレビのリモコンを手にした時だった。リビングの電話が鳴った。
「もしもし、兵藤さん、でしょうか」
聞いた事の無い女性の声だった。
誰だ?
保は警戒し身構えた。
「はい、そうですが、どなたでしょうか」
低く静かに尋ねた。
これは予感だ。〝どなた〟と聞きながらも、電話の向こうの相手が答える前に、ゾワリと何か嫌な予感に身の毛がよだった。
良くない事が起きる前触れだ。保は固唾を呑み込んでいた。
「私は、亀岡の家内です」
「亀岡さんの、奥さん? はじめまして、ですね」
「あ、すみません、はじめまして」
先に挨拶をされた彼女は慌てて応えたが、保は〝亀岡の妻〟とい事実に不吉な予感の的中に近付いている事を確信した。
以前、亀岡から妻は看護師、と聞いた事があった。声から、凛とした、しっかりとした女性像が伺えた。
「いえ、そんな事は気にしないでください。それより、どうして亀岡さんの奥さんが僕に電話を?」
保の問いに電話の向こうの亀岡の妻は、言葉を詰まらせたようだった。保が静かに答えを待っていると、深呼吸した彼女はゆっくりと話しを始めた。
「実は主人、亡くなりまして」
言葉が出なかった。
亡くなった。亀岡さんが。
電話の向こうの彼女は毅然とした声で続ける。
「主人の遺品を整理しておりましたら、自分に何かがあったら兵藤さんに連絡を、と書かれたものが見つかって、こちらの番号が書かれていたものですから」
†††
みちるの細い腰を持つ星児の手に力が加わった。
「あぁっ!」
跳ねた白く細い躰は背中を弓なりに反らす。
「星児! ムリさせんじゃねぇって!」
みちるの反った背に腕を添え、空をさ迷う手を優しく握りしめた保は星児をたしなめる。
「ムリじゃなねぇよな?」
睨む保にはお構い無しに星児は口角を上げてみちるを見つめ、腰に添えていた手をスッと頬に移す。涙目で喘ぐような吐息を漏らすみちるの唇にキスをした。
「ん……」
保の手の中のみちるの細く小さな柔らかい手にキュッと力が籠る。保は愛しい白い手に唇を寄せた。
「星児さん、眠っちゃいました」
「ああ」
保がクスリと笑う。
「珍しいけど。最近、コイツは東奔西走、働き詰めだから、相当疲れが溜まってるんだろ。ずっと気も張ってるからな」
ずっと緊張してるんですね。
みちるはそっと星児に手を伸ばす。
狸寝入りをしていた星児に腕を掴まれ押し倒された事があった為、恐る恐るその頬に触れた。
今夜は触れても、ピクリとも反応はなかった。
「爆睡モードだな」
見ていた保が肩を竦めながらみちるに笑いかける。優しい笑顔に彼女の胸がキュン……と鳴った。
星児の頬に触れていたみちるの手をそっと掴んだ保は、みちるの躰を自分の方へ抱き寄せた。耳元に囁く。
「もう少し、いいか」
首筋に掛かる吐息にみちるは震えた。
保がみちるをこんなにはっきりと求めた事はなかった。まるで初めての時のようにみちるのトクトクと早くなる鼓動が耳に響く。
「はい……お願いします」
首を竦めながら恥ずかしそうにしながらもかしこまった返事をしたみちるに、保はプと吹いた。
「その反応は、萎えるな」
まぁいいや、と笑いながらみちるの頬に優しく手を添える。
「みちるにこうして触れられれば、俺はいいよ」
つるりとなめらかな肌を保は抱き締める。みちるは幸せそうに表情を緩めた。
保さんの胸は、気持ちがいいです。
「キスを」
互いを確認するようにゆっくりと唇を重ねる。
季節は移り、初夏を迎えていた。
みちるはストリップ劇場での地位を確実に変えつつあったが、気付けば彼等の間でストリップの話題は暗黙のタブーとなっていた。
「……んっ、たもつさ……ぁっ」
みちるの躰がピクンと震え、保の肩に添えられた手にキュッと力が入った。
「みちる……」
星児の瞳が澄んだ漆黒の寒色ならば、保の瞳は微かにブラウンが入った暖色だ。
優しさが滲む保の瞳にみちるは吸い込まれる。
「保さん……」
痺れを残すその躰のまま、唇を重ねた。
私達はこのままでいいのかな。どうしたらいいんだろうね、保さん。
「保、抜け駆けだな」
2人が唇をゆっくり離した時、みちるの腕を背後から星児が掴んだ。
「なんだよ星児、やっぱ狸かよ」
軽く睨んだ保に星児は、身をお越しながらクックと笑った。
「いや、マジで堕ちてた。今目ぇ覚めた……よっと」
「きゃっ」
星児は強引にみちるの上半身を抱き寄せ、唇に少し荒いキスをした。
†††
サラリーマンをしていた時は毎朝ちゃんと起きていたのにな。
リビングのカーテンを開けた保は、すっかり高くなった太陽を見て思う。今では起きるのは昼過ぎだ。
みちると星児はまだ夢の中だった。保はみちるにキスをしてひと足先に寝室から出、シャワーを浴びた。
キッチンに行き食器棚からグラスを出し、冷蔵庫から出したミネラルウォーターを注ぎ、一気に飲み干した。
グラス片手にキッチンから出てきた保がテレビのリモコンを手にした時だった。リビングの電話が鳴った。
「もしもし、兵藤さん、でしょうか」
聞いた事の無い女性の声だった。
誰だ?
保は警戒し身構えた。
「はい、そうですが、どなたでしょうか」
低く静かに尋ねた。
これは予感だ。〝どなた〟と聞きながらも、電話の向こうの相手が答える前に、ゾワリと何か嫌な予感に身の毛がよだった。
良くない事が起きる前触れだ。保は固唾を呑み込んでいた。
「私は、亀岡の家内です」
「亀岡さんの、奥さん? はじめまして、ですね」
「あ、すみません、はじめまして」
先に挨拶をされた彼女は慌てて応えたが、保は〝亀岡の妻〟とい事実に不吉な予感の的中に近付いている事を確信した。
以前、亀岡から妻は看護師、と聞いた事があった。声から、凛とした、しっかりとした女性像が伺えた。
「いえ、そんな事は気にしないでください。それより、どうして亀岡さんの奥さんが僕に電話を?」
保の問いに電話の向こうの亀岡の妻は、言葉を詰まらせたようだった。保が静かに答えを待っていると、深呼吸した彼女はゆっくりと話しを始めた。
「実は主人、亡くなりまして」
言葉が出なかった。
亡くなった。亀岡さんが。
電話の向こうの彼女は毅然とした声で続ける。
「主人の遺品を整理しておりましたら、自分に何かがあったら兵藤さんに連絡を、と書かれたものが見つかって、こちらの番号が書かれていたものですから」
†††
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