mammy【完結】

深智

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 麗らかな春の陽光が幾何学模様を描くステンドグラスを通り、チャペルの床をカラフルに彩っていた。

 天井の高いカテドラルは自然光を取り入れて明るい。整然と並ぶ椅子の間を縫って祭壇まで続く道が式の際にヴァージンロードとなる景色がわたしの目の前に拡がった。想像に胸が躍る。

「いかがですか。わが社の結婚式場が自信を持ってご紹介するチャペルとなっております」

 ウェディングプランナーの女性が、わたしと彼を見て誇らしげな笑みを浮かべていた。

「いいわ、すごくいい! わたし、ここで式を挙げたい!」

 ドーム型天井を見上げたわたしは、興奮気味に彼に言った。

「茉実に気に入ってもらえてよかったよ。じゃあ、ここで決めていいな」
「ええ!」

 優しくて、素敵な彼と、わたしはここで結婚式を挙げる。

「夢みたい……」

 プランナーさんも、嬉しそうに頷いていた。

「弊社は兼ねてから、新郎様から是非にとお話しを伺っておりまして。今日お越しいただいた新婦様に気に入っていただけて何よりでございます」

 兼ねてから? 何故かその言葉に微かな引っかかりを覚えた。でも。

「俺は、茉実が絶対に気に入ると思っていたから」

 彼の、わたしを虜にした笑顔を見たら、小さな引っかかりなんて吹き飛んでしまった。

 そうよ、大丈夫。わたし達はここで式を挙げて、幸せな夫婦になるのだから。

 結婚には、夢と幻想の狭間に生まれる小さな不安が付いて回るもの。その不安を払拭してくれるものは何だろうなんて考え始めると、あれこれと良くないものが際限なく湧いてきて、自分で自分を窮地に追い込んでいきかねない。あまり考えない方が賢明なのだ、きっと。

 プランナーさんの話しを聞いていた時、視界にチカッと青い光が映り込んでわたしは顔を上げた。

 視線の正面にはステンドグラスがあり、幾何学模様の中に美しい聖母マリアの絵がはめ込まれていた。

 幼子イエスを抱く聖母マリア。青い光はマリア様が着ている服を太陽光が通ってわたしの元に届いたものだった。

 マリア様の部分を通ってきた陽光がちょうどわたしの顔に当たっている。眩しさに目を細めながら絵を見つめていると、少し不思議な気持ちになった。

 マリア様の、我が子を見つめる温かな、何もかも包み込む眼差しを見たわたしは、ふと、普遍の関係は無償の愛と同義語になるのかもしれない、と思った。



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