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二十歳
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「お風呂、気持ち良かったです。お先にありがとうございました」
淡い若草色に、ピンク色のクレマチスが描かれた浴衣姿のみちるが星児と保の前に恥ずかしそうに現れた。若い女性に喜んで貰う為のサービスで、このホテルの浴衣は色柄が選べるようになっていた。
「似合うじゃん」
星児に誉められ、風呂上がりの上気したみちるの頬がより染まる。
長い髪を巻いてアップにし、白い肌と浴衣が絶妙にマッチしたみちるの姿に保は、はにかむような笑みを見せた。
「保、照れんなよ」
「うるせぇ」
タバコの煙を吐き出した星児が茶化すように言い、保はタバコをくわえたままそっぽを向いた。
二人は窓の前に置かれた一人がけソファーに各々座りくつろいでいた。二人のそばにあったスツールにちょこんと座ったみちるはベランダの向こうに広がる海を眺めた。
「お風呂、壁一面が窓で、オーシャンビュー独り占めなの。気持ち良かったですよ。お部屋に贅沢なお風呂付いてるなんて……その……」
みちるは口ごもりながら遠慮がちに聞く。
「高かった、んじゃ、ないですか?」
その最高のロケーションの贅沢なお風呂に、一番最初に入らせもらった、と恐縮しきりのみちるに保が笑った。
「そんな事、みちるが気にする事じゃない。それだけ俺たちの稼ぎがベースアップしてるって事」
「保さんたら……」
星児と保に頭をクシャっと撫でられ、くすぐったそうに笑ったみちるに保は続ける。
「あと、内風呂じゃねーとダメな決定的な理由があるんだ」
「内風呂じゃないとダメな理由?」
みちるが首を傾げると、星児がある時代劇の真似をするかのように、浴衣の右肩を脱いで見せた。
「ひかえおろー」
「あっ!」
星児の右腕には豪華なドラゴンのタトゥー。
「これで、大浴場は無理ってワケ」
ああ、と納得するみちるに保はタバコの煙を吐き、ボソッと言う。
「『ひかえおろー』は違うな」
「忘れたよ。別にそこはどうでもいいんだよ」
星児は浴衣を直す事なくそのままタバコを吸う。みちるはアハハと笑い、そのまま二人のそばで窓の外を眺めた。
地平線の彼方まで続く海が、夕日に染まる。
「みちる、もう少しゆっくり入って来ても良かったんだぞ。俺らなんかは長風呂苦手だから浴びるだけで充分だし」
保がタバコを消しながら、みちるに優しく話しかけた。
みちるは苦笑いと共に肩を竦めた。
「あのね、実は、日焼けが痛くて」
「日焼け?」
星児と保はタバコを消しながら顔を見合わせた。星児は立ち上がりみちるの傍に行くと前に屈み顎に指を掛けクイッと上げた。
「顔は殆ど焼けてねーけど?」
みちるの心臓が跳ねる。一瞬、フラッシュのようにパッとあの日のキスが過った。
「えと、顔はちゃんと日焼け止め、たくさん塗った、もん。肩、肩、油断してて」
加速していく鼓動を必死に隠し、みちるはしどろもどろに答える。
みちるの胸の内を知ってか知らずか、星児はフッと優しく笑った。
「みちる、ローションとかちゃんと塗ったか?」
ううんと首を振ったみちるに星児は言う。
「そのままにしといたらダメだ。保、俺のデイバッグからアレ取ってくれ」
「あー、ハイハイ」
保は、俺は執事じゃねぇぞ、と言いながらも即座に反応し、星児のバッグからローションのボトルを出し「ほらよ」と投げて渡した。
保は何時だって、星児の指示が例え抽象的な一言でも的確に理解し、時には指示以上の動きをする。
みちるの傍に座った保は優しく声を掛けた。
「みちる、肩、見せられるか?」
「うん……」
二人に背中を向けたみちるはゆっくりと浴衣の胸元を緩め、細い肩を露にした。
白く艶かしいうなじから背中へのラインが、眼を見張るほど美しかった。
二人はみちるの手を取り、腰を抱く。
「……ふぁ……っ」
みちるは、両の肩に感じた感触にフルッと震え、微かな声を洩らした。
星児と保は見せられたみちるの赤くなってしまった白い肩に口づけをせずにはいられなかった。
堕ちていく、痺れていく躰。そんな甘い感触に、浴衣の胸元を押さえるみちるの手に力が加わる。
保の唇は、そっと腕の方へ下りて行き、星児の唇は、首筋へと上って行く。
「……ぁあ……ふ……ぁ……」
みちるは躰をフルリと震わせ、微かに背中を反らせた。
頭が、真っ白になる、ダメーー!
「せ、せいじさん……っ、たもつ……さんっ」
抜けて行きそうだった自分の意識を寸でのところで掴み引き戻した彼女は、掠れた声を絞り出した。
ハッと我に返った保は、「ごめん」と言いながらパッとみちるの腕を離したが、星児はみちるの腰を抱いたまま、クッと笑った。
「みちる、感度良すぎだ」
「せいじっっっ!」
保がグーで星児の頭を殴る。みちるは真っ赤になって両手で顔を覆った。
「いっって」
星児はみちるの腰を抱いていた腕を離し、殴られた頭に手をやった。
「なにも殴るこたぁねぇだろっ!」
「お前の言葉にはデリカシー無さすぎなんだよっっ!」
保の内面では心臓の早打ちが止まらない。しかし必死に平静を装った。拳で星児を思い切り殴ったのも、その動揺を隠す為だった。
意識下のブレーキをかける自分が、突然いなくなったのだ。みちるの肩を、その白い肌を見た瞬間、意識が飛んでいた。
保にとって、いつも身近である程度は触れ合っている筈なのに、今は高鳴る鼓動、込み上げる衝動を押さえきれなかった。
みちるを、自分のモノにしてしまえば星児はみちるをどうする事も、出来なくなるだろうか。
一瞬脳裏を過った考えを、保は即座に打ち消した。
それは、出来ない。彼女を傷つける訳にはいかない。
みちるには、自分で前を見据えてる力をつけてやりたい。自らの生きる道を自分でしっかり選べる力をつけさせてやらなければいけない!
「だいたい星児は……!」
「た、保さん、いいよー、もう」
星児に喰ってかかろうとする保を、浴衣の胸元を押さえるみちるがあたふたと制する。
眉尻を下げた困った顔で保を見ていたみちるは、少し首を傾げ星児の方に手を出すとニコッと笑った。
「自分で塗れますから、貸してください」
「俺が塗ってやるから」
「俺が塗ってやる!」
男二人の言葉が見事にシンクロした。目を丸くしたみちるは次の瞬間、キャハハハハ! と笑った。
星児は笑い、保はばつが悪い顔をする。そんな二人にみちるが言う。
「じゃあ、お願いします」
肩を竦め、みちるは続けた。
「さっきのは、もうダメだよ」
星児と保は顔を見合わせ、ハハハと笑う。
「ひぁあっ」
抱き締められたみちるが声をあげた。
†
「ビールは苦いです」
「ハハハ、じゃあこっち」
保が気泡が立つ透明な液体が入ったワイングラスをみちるに渡した。
ホテルラウンジのカウンターにみちるを挟み三人は並んで座っていた。
日付が変わり、みちるは20になった。
保がみちるにワイングラスを渡した瞬間、星児が何かをその中に落とした。
え?
チ……ン……と優しい音が鳴り、ワイングラスの底にキラリと光る何かが沈んだ。
グラスを目線の高さにし、中を見たみちるは「あ」と声をあげた。
グラスの底にオープンハートから翼の生えたデザインの、小さなリングだった。
「20、おめでとう。これは、俺達から」
みちるの顔が、わぁあっ、と一気に明るくなった。
初めてのアルコールに微かに上気していた頬がより染まる。心地よい酔いで涙腺が緩くなっていた。
涙が滲むみちるの肩を保が抱く。
「おめでとう。泣かなくていいから」
「うん、うん」
みちるが目元を指で拭った時、頬杖をつき優しく見詰めていた星児が言う。
「呑み込むなよ」
「呑み込めませんっ」
保がみちるの左隣でクスクスと笑っていた。
†
「かわいい」
指輪、ペンダントトップとしてチェーンに通しても良さそうだった。
自宅に帰ってみちるは早速自分の胸元にかかる天使のペンダントを外し、チェーンに翼のリングを通した。
キュートな天使に、もう一つの翼。
みちるはうっとりと眺め、小さなため息をついた。
天使と翼を手のひらに収め、優しく握ると胸元に当てた。
宝物がまた一つ増えた。
この旅は、一生忘れない。両肩に触れた、あの唇の感触と共に。
淡い若草色に、ピンク色のクレマチスが描かれた浴衣姿のみちるが星児と保の前に恥ずかしそうに現れた。若い女性に喜んで貰う為のサービスで、このホテルの浴衣は色柄が選べるようになっていた。
「似合うじゃん」
星児に誉められ、風呂上がりの上気したみちるの頬がより染まる。
長い髪を巻いてアップにし、白い肌と浴衣が絶妙にマッチしたみちるの姿に保は、はにかむような笑みを見せた。
「保、照れんなよ」
「うるせぇ」
タバコの煙を吐き出した星児が茶化すように言い、保はタバコをくわえたままそっぽを向いた。
二人は窓の前に置かれた一人がけソファーに各々座りくつろいでいた。二人のそばにあったスツールにちょこんと座ったみちるはベランダの向こうに広がる海を眺めた。
「お風呂、壁一面が窓で、オーシャンビュー独り占めなの。気持ち良かったですよ。お部屋に贅沢なお風呂付いてるなんて……その……」
みちるは口ごもりながら遠慮がちに聞く。
「高かった、んじゃ、ないですか?」
その最高のロケーションの贅沢なお風呂に、一番最初に入らせもらった、と恐縮しきりのみちるに保が笑った。
「そんな事、みちるが気にする事じゃない。それだけ俺たちの稼ぎがベースアップしてるって事」
「保さんたら……」
星児と保に頭をクシャっと撫でられ、くすぐったそうに笑ったみちるに保は続ける。
「あと、内風呂じゃねーとダメな決定的な理由があるんだ」
「内風呂じゃないとダメな理由?」
みちるが首を傾げると、星児がある時代劇の真似をするかのように、浴衣の右肩を脱いで見せた。
「ひかえおろー」
「あっ!」
星児の右腕には豪華なドラゴンのタトゥー。
「これで、大浴場は無理ってワケ」
ああ、と納得するみちるに保はタバコの煙を吐き、ボソッと言う。
「『ひかえおろー』は違うな」
「忘れたよ。別にそこはどうでもいいんだよ」
星児は浴衣を直す事なくそのままタバコを吸う。みちるはアハハと笑い、そのまま二人のそばで窓の外を眺めた。
地平線の彼方まで続く海が、夕日に染まる。
「みちる、もう少しゆっくり入って来ても良かったんだぞ。俺らなんかは長風呂苦手だから浴びるだけで充分だし」
保がタバコを消しながら、みちるに優しく話しかけた。
みちるは苦笑いと共に肩を竦めた。
「あのね、実は、日焼けが痛くて」
「日焼け?」
星児と保はタバコを消しながら顔を見合わせた。星児は立ち上がりみちるの傍に行くと前に屈み顎に指を掛けクイッと上げた。
「顔は殆ど焼けてねーけど?」
みちるの心臓が跳ねる。一瞬、フラッシュのようにパッとあの日のキスが過った。
「えと、顔はちゃんと日焼け止め、たくさん塗った、もん。肩、肩、油断してて」
加速していく鼓動を必死に隠し、みちるはしどろもどろに答える。
みちるの胸の内を知ってか知らずか、星児はフッと優しく笑った。
「みちる、ローションとかちゃんと塗ったか?」
ううんと首を振ったみちるに星児は言う。
「そのままにしといたらダメだ。保、俺のデイバッグからアレ取ってくれ」
「あー、ハイハイ」
保は、俺は執事じゃねぇぞ、と言いながらも即座に反応し、星児のバッグからローションのボトルを出し「ほらよ」と投げて渡した。
保は何時だって、星児の指示が例え抽象的な一言でも的確に理解し、時には指示以上の動きをする。
みちるの傍に座った保は優しく声を掛けた。
「みちる、肩、見せられるか?」
「うん……」
二人に背中を向けたみちるはゆっくりと浴衣の胸元を緩め、細い肩を露にした。
白く艶かしいうなじから背中へのラインが、眼を見張るほど美しかった。
二人はみちるの手を取り、腰を抱く。
「……ふぁ……っ」
みちるは、両の肩に感じた感触にフルッと震え、微かな声を洩らした。
星児と保は見せられたみちるの赤くなってしまった白い肩に口づけをせずにはいられなかった。
堕ちていく、痺れていく躰。そんな甘い感触に、浴衣の胸元を押さえるみちるの手に力が加わる。
保の唇は、そっと腕の方へ下りて行き、星児の唇は、首筋へと上って行く。
「……ぁあ……ふ……ぁ……」
みちるは躰をフルリと震わせ、微かに背中を反らせた。
頭が、真っ白になる、ダメーー!
「せ、せいじさん……っ、たもつ……さんっ」
抜けて行きそうだった自分の意識を寸でのところで掴み引き戻した彼女は、掠れた声を絞り出した。
ハッと我に返った保は、「ごめん」と言いながらパッとみちるの腕を離したが、星児はみちるの腰を抱いたまま、クッと笑った。
「みちる、感度良すぎだ」
「せいじっっっ!」
保がグーで星児の頭を殴る。みちるは真っ赤になって両手で顔を覆った。
「いっって」
星児はみちるの腰を抱いていた腕を離し、殴られた頭に手をやった。
「なにも殴るこたぁねぇだろっ!」
「お前の言葉にはデリカシー無さすぎなんだよっっ!」
保の内面では心臓の早打ちが止まらない。しかし必死に平静を装った。拳で星児を思い切り殴ったのも、その動揺を隠す為だった。
意識下のブレーキをかける自分が、突然いなくなったのだ。みちるの肩を、その白い肌を見た瞬間、意識が飛んでいた。
保にとって、いつも身近である程度は触れ合っている筈なのに、今は高鳴る鼓動、込み上げる衝動を押さえきれなかった。
みちるを、自分のモノにしてしまえば星児はみちるをどうする事も、出来なくなるだろうか。
一瞬脳裏を過った考えを、保は即座に打ち消した。
それは、出来ない。彼女を傷つける訳にはいかない。
みちるには、自分で前を見据えてる力をつけてやりたい。自らの生きる道を自分でしっかり選べる力をつけさせてやらなければいけない!
「だいたい星児は……!」
「た、保さん、いいよー、もう」
星児に喰ってかかろうとする保を、浴衣の胸元を押さえるみちるがあたふたと制する。
眉尻を下げた困った顔で保を見ていたみちるは、少し首を傾げ星児の方に手を出すとニコッと笑った。
「自分で塗れますから、貸してください」
「俺が塗ってやるから」
「俺が塗ってやる!」
男二人の言葉が見事にシンクロした。目を丸くしたみちるは次の瞬間、キャハハハハ! と笑った。
星児は笑い、保はばつが悪い顔をする。そんな二人にみちるが言う。
「じゃあ、お願いします」
肩を竦め、みちるは続けた。
「さっきのは、もうダメだよ」
星児と保は顔を見合わせ、ハハハと笑う。
「ひぁあっ」
抱き締められたみちるが声をあげた。
†
「ビールは苦いです」
「ハハハ、じゃあこっち」
保が気泡が立つ透明な液体が入ったワイングラスをみちるに渡した。
ホテルラウンジのカウンターにみちるを挟み三人は並んで座っていた。
日付が変わり、みちるは20になった。
保がみちるにワイングラスを渡した瞬間、星児が何かをその中に落とした。
え?
チ……ン……と優しい音が鳴り、ワイングラスの底にキラリと光る何かが沈んだ。
グラスを目線の高さにし、中を見たみちるは「あ」と声をあげた。
グラスの底にオープンハートから翼の生えたデザインの、小さなリングだった。
「20、おめでとう。これは、俺達から」
みちるの顔が、わぁあっ、と一気に明るくなった。
初めてのアルコールに微かに上気していた頬がより染まる。心地よい酔いで涙腺が緩くなっていた。
涙が滲むみちるの肩を保が抱く。
「おめでとう。泣かなくていいから」
「うん、うん」
みちるが目元を指で拭った時、頬杖をつき優しく見詰めていた星児が言う。
「呑み込むなよ」
「呑み込めませんっ」
保がみちるの左隣でクスクスと笑っていた。
†
「かわいい」
指輪、ペンダントトップとしてチェーンに通しても良さそうだった。
自宅に帰ってみちるは早速自分の胸元にかかる天使のペンダントを外し、チェーンに翼のリングを通した。
キュートな天使に、もう一つの翼。
みちるはうっとりと眺め、小さなため息をついた。
天使と翼を手のひらに収め、優しく握ると胸元に当てた。
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