東京ブラッディ・ムーン

鴨居ダンテ

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第1話 - A part

ドロップ・アウト - Ⅳ(ミコト)

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 そのとき、思考が冷たい何かを感じる。

 鋭利な刃物のように脳を突き刺す痛みと絶対零度の炎に襲われ、心臓の音が加速して高鳴る。沈黙のなかで、自分の息遣いだけがやけに荒々しく聞こえてくる。均衡を保つ恐怖と平静の天秤に、ひとつまたひとつと重石が加えられていく。もちろん、恐怖の側に。

 それが殺気だと気付くのに、さほど時間はかからなかった。しかし、身体は動くことなく、ただ呆然と立ち尽くすだけだ。

 少女がワンピースの裾をひらりとさせながら、くるりとこちらを振り向く。ミコトの視線がまっさきに焦点を結んだのは少女の眼だった。ミコトは青く閉ざされた世界をその内に見る。凍てつくような冷たさを感じ、恐怖を覚える。

 しかし、先ほど感じたものとは少し違った。刺し殺すような恐怖でも押し潰すような恐怖でもない。そう、彼女の瞳のように青く、冷たく、重い恐怖。だけど、これはーー恐怖じゃない? 僕の内側にあるモノじゃないんだ。

 これは、この恐怖はおそらくーー。

 そんなことを考えながらも、ミコトは彼女の視線が一瞬微かに揺らいだのを見逃さなかった。表情に変わりはない。しかし、眼は語っていた、彼女の瞬間的な変化を。

 そして、彼女が小さく呟く。

「了解。標的を排除」

 そのときだった、ミコトのなかで恐怖と恐怖がせめぎ合いを始めたのは。二つの恐怖。それは二つの殺気によってもたらされたモノ。

「背後か!」

 ミコトの心がそう叫ぶより早く、少女の姿が消える。背後から斬撃の衝撃を感じ、遅れて甲高い金属音が彼の鼓膜をつん裂く。一回、二回、三回、彼が振り向くまでに計三回の斬撃音が聞こえた。

 そこにいるのは、二人の少女だ。ワンピースの少女と、赤いボディ・スーツに身を通した黒髪の少女。彼女は右手に短刀、左手に小型の銃を持っている。

 その顔に浮かんだ不気味な笑みが、人間離れした斬撃戦を象徴するかのように、凛と咲いていた。彼女は戦いを楽しんでいるのだ、ミコトはそう思い、戦いから離れるように一歩だけ後ずさる。

 裏路地に鳴り響く金属と金属のぶつかり合い。

 しかしながら、人間離れした運動能力を持つ二人の少女に、ミコトは不思議と恐怖を抱いてはいなかった。

 彼女たちが自分の「同族」のように思えてならなかったのだ。

 社会に捨てられた屑という「同族」に。


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戦闘シーンの躍動感をどう表現すればいいか。
悩み。。。今日はここまで

(2016年6月18日)
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