弟を 雅な公爵令嬢に育てようと思う。

ママさん看護師

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享年39歳の看護師が転生しました。前前前世と前前世と前(あの)世の記憶持ちです。

ちなみに、記憶持ちなのであの世も前世にカウントしてます。

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ーーー…ドボン!。ボチャン!。

すぐ隣で、水飛沫があがる。
驚いて隣を見ると、赤ん坊が河の中で溺れていた。

「!?」

助けなきゃ。
と、慌てて手を伸ばすも、頭と同じ長さしかない短い手では届かない。
解ってはいるけど、何とか助けようとして短い手を伸ばし、プルプル震わせて頑張った。

が。

ーーー…ドボン!。ボチャン!。
ーーー…ボチャン!。ビチャン!。

「ちょっ…!。えっ?。えぇぇーっっ!?」

集まっていた何百人もの魂は、大人の姿から赤ん坊の姿に変わり、次々に河に飛び込んで行く。

驚いてその光景を見ていると、河に飛び込まずに居る子供達が河原を裸足で逃げ回っていた。

ーーー…ひょいっ。

「ふぇ?。」

脇の下に手を入れられて、体が持ち上がる。

思わず振り向くと、柔和なお地蔵様みたいな、坊主頭な人が私を持ち上げていた。

…いや、多分、お地蔵様の一人だ。
以前にサイノカワラで仕事していた時に、お地蔵様に何人か出会ったが、皆、同じ様に額にボコッとした部分びゃくごうがあった。

その人が、にこりと笑う。
条件反射で、私もにこりと笑った。

「いってらっしゃい!!」
「ふぎゃあぁぁぁーーー…っっ!!?」

容赦なく川に、ぶん投げられた。

ーーー…ドッボン!。

水面に叩きつけられる寸前で、目を閉じて鼻と口を塞ぐ。
一旦沈み込んだが、ブクブクとした気泡と共に小さな体は水面へと持ちあげられた。

水面から顔を出して、水を飲まないように気を付けながら周りを見渡す。

赤ん坊達が、泣き叫んでいた。


ある赤ん坊は、苦しくてもがき。
ある赤ん坊は、輪廻したくないとあがき。
ある赤ん坊は、穏やかな顔で静かにしずんでいく…。

どうやら水を飲まされるのではなく、飲んだ者から転生するようだ。

昔話は間違っていなかった。
間違ってはいなかったが…、

私は、空を見た。

…それって、どうよ…。






切り立った崖の上。
真っ暗な夜空には、やたらと大きな満月が顔を出していた。

そういえば息子達が小さかったころ。
上の息子は月をとても怖がって、下の息子はやたらと丸い蛍光灯を指差していたな…。

…もしかしたら原因は、これだったのかも…。

ぬるい、まるで羊水の様な川の水にプカプカ浮きながら、さて、どうするかと考えを巡らす。

どうやら、水を飲んだら沈むらしく、飲んでない私は浮くだけで沈む気配が全く無い。そのせいか(さっきはちょっと驚いてしまったが)、今は意外と冷静に考えを巡らすことができそうだ。

さてさて。
どうやったら、沈む事ができるのかな?。

深呼吸の要領で、口から思いっきり水を吸い込んだらどうだろう…?。

いやいや。
それじゃ口に入るから、意識が無くなったときに飲み込む可能性がある。

それなら、鼻?。
鼻で水を吸い込む…?。

「…痛そう…」

肉体がなかったせいで五感が全く感じなかった今までと違い、なんせ、今は五感があるのだ。
ぬるい水の感触と、鼻と口をつまむ手の感触がある。

鼻から水を吸い込んだりしたら、絶対痛い。

などと色々考えていたら、いつの間にかに辺りが静かになっていた。


川面には、ざっと見て100人程の赤ん坊がプカプカ浮いている。

それを、川岸に居る坊主達が困った様に見ていた。

すると、その坊主の後ろから鬼が出てきた。
ー…あ、ヤバい。サイノカワラに居たヤツだ。

その鬼は、ザブン!。っと川に入ると、坊主達が持っている錫杖と同じもので赤ん坊達を、容赦なく沈め出した。


途端に始まる、阿鼻叫喚。


鬼と、目があった。
私は、覚悟を決めた。

深く息を吐き出して、鼻で大きく水を吸い込んだ。
ーーー…グゥ…!!。

反射的にせりそうになるが、える。

生ぬるい水が、気管を通るのが分かる。
二つある肺が、ズッシリと重くなった。

今まで浮いていたはずの体が、どんどんと川底に沈んでいく。


河の中はとても静で薄暗く、月明かりに照らされてキラキラしている。


そのたゆたう月明かりの中。
私は、意識を手放した。



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