6 / 34
享年39歳の看護師が転生しました。前前前世と前前世と前(あの)世の記憶持ちです。
ちなみに、記憶持ちなのであの世も前世にカウントしてます。
しおりを挟む
ーーー…ドボン!。ボチャン!。
すぐ隣で、水飛沫があがる。
驚いて隣を見ると、赤ん坊が河の中で溺れていた。
「!?」
助けなきゃ。
と、慌てて手を伸ばすも、頭と同じ長さしかない短い手では届かない。
解ってはいるけど、何とか助けようとして短い手を伸ばし、プルプル震わせて頑張った。
が。
ーーー…ドボン!。ボチャン!。
ーーー…ボチャン!。ビチャン!。
「ちょっ…!。えっ?。えぇぇーっっ!?」
集まっていた何百人もの魂は、大人の姿から赤ん坊の姿に変わり、次々に河に飛び込んで行く。
驚いてその光景を見ていると、河に飛び込まずに居る子供達が河原を裸足で逃げ回っていた。
ーーー…ひょいっ。
「ふぇ?。」
脇の下に手を入れられて、体が持ち上がる。
思わず振り向くと、柔和なお地蔵様みたいな、坊主頭な人が私を持ち上げていた。
…いや、多分、お地蔵様の一人だ。
以前にサイノカワラで仕事していた時に、お地蔵様に何人か出会ったが、皆、同じ様に額にボコッとした部分があった。
その人が、にこりと笑う。
条件反射で、私もにこりと笑った。
「いってらっしゃい!!」
「ふぎゃあぁぁぁーーー…っっ!!?」
容赦なく川に、ぶん投げられた。
ーーー…ドッボン!。
水面に叩きつけられる寸前で、目を閉じて鼻と口を塞ぐ。
一旦沈み込んだが、ブクブクとした気泡と共に小さな体は水面へと持ちあげられた。
水面から顔を出して、水を飲まないように気を付けながら周りを見渡す。
赤ん坊達が、泣き叫んでいた。
ある赤ん坊は、苦しくてもがき。
ある赤ん坊は、輪廻したくないとあがき。
ある赤ん坊は、穏やかな顔で静かにしずんでいく…。
どうやら水を飲まされるのではなく、飲んだ者から転生するようだ。
昔話は間違っていなかった。
間違ってはいなかったが…、
私は、空を見た。
…それって、どうよ…。
切り立った崖の上。
真っ暗な夜空には、やたらと大きな満月が顔を出していた。
そういえば息子達が小さかったころ。
上の息子は月をとても怖がって、下の息子はやたらと丸い蛍光灯を指差していたな…。
…もしかしたら原因は、これだったのかも…。
ぬるい、まるで羊水の様な川の水にプカプカ浮きながら、さて、どうするかと考えを巡らす。
どうやら、水を飲んだら沈むらしく、飲んでない私は浮くだけで沈む気配が全く無い。そのせいか(さっきはちょっと驚いてしまったが)、今は意外と冷静に考えを巡らすことができそうだ。
さてさて。
どうやったら、沈む事ができるのかな?。
深呼吸の要領で、口から思いっきり水を吸い込んだらどうだろう…?。
いやいや。
それじゃ口に入るから、意識が無くなったときに飲み込む可能性がある。
それなら、鼻?。
鼻で水を吸い込む…?。
「…痛そう…」
肉体がなかったせいで五感が全く感じなかった今までと違い、なんせ、今は五感があるのだ。
ぬるい水の感触と、鼻と口をつまむ手の感触がある。
鼻から水を吸い込んだりしたら、絶対痛い。
などと色々考えていたら、いつの間にかに辺りが静かになっていた。
川面には、ざっと見て100人程の赤ん坊がプカプカ浮いている。
それを、川岸に居る坊主達が困った様に見ていた。
すると、その坊主の後ろから鬼が出てきた。
ー…あ、ヤバい。サイノカワラに居た鬼だ。
その鬼は、ザブン!。っと川に入ると、坊主達が持っている錫杖と同じもので赤ん坊達を、容赦なく沈め出した。
途端に始まる、阿鼻叫喚。
鬼と、目があった。
私は、覚悟を決めた。
深く息を吐き出して、鼻で大きく水を吸い込んだ。
ーーー…グゥ…!!。
反射的に噎せりそうになるが、耐える。
生ぬるい水が、気管を通るのが分かる。
二つある肺が、ズッシリと重くなった。
今まで浮いていたはずの体が、どんどんと川底に沈んでいく。
河の中はとても静で薄暗く、月明かりに照らされてキラキラしている。
そのたゆたう月明かりの中。
私は、意識を手放した。
すぐ隣で、水飛沫があがる。
驚いて隣を見ると、赤ん坊が河の中で溺れていた。
「!?」
助けなきゃ。
と、慌てて手を伸ばすも、頭と同じ長さしかない短い手では届かない。
解ってはいるけど、何とか助けようとして短い手を伸ばし、プルプル震わせて頑張った。
が。
ーーー…ドボン!。ボチャン!。
ーーー…ボチャン!。ビチャン!。
「ちょっ…!。えっ?。えぇぇーっっ!?」
集まっていた何百人もの魂は、大人の姿から赤ん坊の姿に変わり、次々に河に飛び込んで行く。
驚いてその光景を見ていると、河に飛び込まずに居る子供達が河原を裸足で逃げ回っていた。
ーーー…ひょいっ。
「ふぇ?。」
脇の下に手を入れられて、体が持ち上がる。
思わず振り向くと、柔和なお地蔵様みたいな、坊主頭な人が私を持ち上げていた。
…いや、多分、お地蔵様の一人だ。
以前にサイノカワラで仕事していた時に、お地蔵様に何人か出会ったが、皆、同じ様に額にボコッとした部分があった。
その人が、にこりと笑う。
条件反射で、私もにこりと笑った。
「いってらっしゃい!!」
「ふぎゃあぁぁぁーーー…っっ!!?」
容赦なく川に、ぶん投げられた。
ーーー…ドッボン!。
水面に叩きつけられる寸前で、目を閉じて鼻と口を塞ぐ。
一旦沈み込んだが、ブクブクとした気泡と共に小さな体は水面へと持ちあげられた。
水面から顔を出して、水を飲まないように気を付けながら周りを見渡す。
赤ん坊達が、泣き叫んでいた。
ある赤ん坊は、苦しくてもがき。
ある赤ん坊は、輪廻したくないとあがき。
ある赤ん坊は、穏やかな顔で静かにしずんでいく…。
どうやら水を飲まされるのではなく、飲んだ者から転生するようだ。
昔話は間違っていなかった。
間違ってはいなかったが…、
私は、空を見た。
…それって、どうよ…。
切り立った崖の上。
真っ暗な夜空には、やたらと大きな満月が顔を出していた。
そういえば息子達が小さかったころ。
上の息子は月をとても怖がって、下の息子はやたらと丸い蛍光灯を指差していたな…。
…もしかしたら原因は、これだったのかも…。
ぬるい、まるで羊水の様な川の水にプカプカ浮きながら、さて、どうするかと考えを巡らす。
どうやら、水を飲んだら沈むらしく、飲んでない私は浮くだけで沈む気配が全く無い。そのせいか(さっきはちょっと驚いてしまったが)、今は意外と冷静に考えを巡らすことができそうだ。
さてさて。
どうやったら、沈む事ができるのかな?。
深呼吸の要領で、口から思いっきり水を吸い込んだらどうだろう…?。
いやいや。
それじゃ口に入るから、意識が無くなったときに飲み込む可能性がある。
それなら、鼻?。
鼻で水を吸い込む…?。
「…痛そう…」
肉体がなかったせいで五感が全く感じなかった今までと違い、なんせ、今は五感があるのだ。
ぬるい水の感触と、鼻と口をつまむ手の感触がある。
鼻から水を吸い込んだりしたら、絶対痛い。
などと色々考えていたら、いつの間にかに辺りが静かになっていた。
川面には、ざっと見て100人程の赤ん坊がプカプカ浮いている。
それを、川岸に居る坊主達が困った様に見ていた。
すると、その坊主の後ろから鬼が出てきた。
ー…あ、ヤバい。サイノカワラに居た鬼だ。
その鬼は、ザブン!。っと川に入ると、坊主達が持っている錫杖と同じもので赤ん坊達を、容赦なく沈め出した。
途端に始まる、阿鼻叫喚。
鬼と、目があった。
私は、覚悟を決めた。
深く息を吐き出して、鼻で大きく水を吸い込んだ。
ーーー…グゥ…!!。
反射的に噎せりそうになるが、耐える。
生ぬるい水が、気管を通るのが分かる。
二つある肺が、ズッシリと重くなった。
今まで浮いていたはずの体が、どんどんと川底に沈んでいく。
河の中はとても静で薄暗く、月明かりに照らされてキラキラしている。
そのたゆたう月明かりの中。
私は、意識を手放した。
0
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。
【本編完結】転生令嬢は自覚なしに無双する
ベル
ファンタジー
ふと目を開けると、私は7歳くらいの女の子の姿になっていた。
きらびやかな装飾が施された部屋に、ふかふかのベット。忠実な使用人に溺愛する両親と兄。
私は戸惑いながら鏡に映る顔に驚愕することになる。
この顔って、マルスティア伯爵令嬢の幼少期じゃない?
私さっきまで確か映画館にいたはずなんだけど、どうして見ていた映画の中の脇役になってしまっているの?!
映画化された漫画の物語の中に転生してしまった女の子が、実はとてつもない魔力を隠し持った裏ボスキャラであることを自覚しないまま、どんどん怪物を倒して無双していくお話。
設定はゆるいです
白いもふもふ好きの僕が転生したらフェンリルになっていた!!
ろき
ファンタジー
ブラック企業で消耗する社畜・白瀬陸空(しらせりくう)の唯一の癒し。それは「白いもふもふ」だった。 ある日、白い子犬を助けて命を落とした彼は、異世界で目を覚ます。
ふと水面を覗き込むと、そこに映っていたのは―― 伝説の神獣【フェンリル】になった自分自身!?
「どうせ転生するなら、テイマーになって、もふもふパラダイスを作りたかった!」 「なんで俺自身がもふもふの神獣になってるんだよ!」
理想と真逆の姿に絶望する陸空。 だが、彼には規格外の魔力と、前世の異常なまでの「もふもふへの執着」が変化した、とある謎のスキルが備わっていた。
これは、最強の神獣になってしまった男が、ただひたすらに「もふもふ」を愛でようとした結果、周囲の人間(とくにエルフ)に崇拝され、勘違いが勘違いを呼んで国を動かしてしまう、予測不能な異世界もふもふライフ!
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる