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看護師の知識を使って、看護過程を展開していきます。

【情報収集】先生からの名言に、こんなのがあった

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ひとまず、リーディングにて分かった所までをアナムネに記入し、マリー、ラナン、ナスターに事の次第を話して、父の口裏合わせアリバイをお願いし(新患は、みたことのない重篤な病態を呈している為、面会謝絶。聖者とマリー達が付き添うことになったので、他の方々は感染病棟立ち入り禁止って事にした)、夜勤帯の看護師に申し送りをしてから、私は領主邸宅の自室に戻った。

戻った私は、父によけいな恥を掻かせる事が無いように、完璧な辺境伯爵令嬢を演じる。


…そういや、看護学生の時に、
先生に『白衣を着たら、女優になれ!!』
って、いっつも言われていたっけなぁ…。

地獄でしかない看護実習中、ついて行けなくてどんどん脱落退学していく仲間を見送り、蓄積されていく疲労とストレスで笑顔の絶えていく生徒達に、先生がかけた言葉だ。

ナースウェアと、ナースキャップを身に付けたら、理想とする看護師の仮面を被り、私生活でどんな事があったとしても、その日一日を看護のプロフェッショナルとして、看護師という役柄を演じきれ…って意味だ。

看護学校卒業して就職してからも、その教えは、えげつない女だらけの階級社会の職場で、かなり役にたった。


…ので、ここでも私は、長い地毛のかつらを被ったら、気が進まなくても完璧な辺境伯爵令嬢になりきる事にしている。

清潔感のあるシンプルな町娘のエプロン服から、部屋着用の仕立ての良いふんわりしたドレスに着替える。
一応、部屋の隅にメイドが二人、待機しているのだが、今は下がってもらっている。
ガッチガチのコルセットを身に付ける訳じゃないんだ。
このくらい、一人でさせて欲しい。
けれど、メイドにとってはそうもいかない。
彼女らの仕事は、私の身の回りの世話なのだから。
今の私は、彼女らの仕事を奪っている様なものだ。
が、子供は、自分の事は自分でやらせないと神経回路の発達が不十分、指の動かしかたや体の使い方が上手く出来ない不器用な子供になってしまう。
いくら頭の中が大人でも、体はまだまだ発達途中の未熟な子供なのだ。
成長させるべき所は、しっかり成長させてあげたい。
なんたって、老衰で亡くなるまで使わなきゃならない、私の大切な体なんだから。

身支度の最後に、鏡で全身チェックする。
鏡の中には、腰まで流れるハチミツの様な髪にクリクリのややツリ目で、おしゃまそうな女の子がにっこりと笑っていた。

…よし、私、可愛ぞ!。

可愛ものは、大好きだ。
やっぱり、可愛い女の子は可愛い格好をさせなきゃ損だよね!。

と、少しテンションを上げ…様としたが、ダメだ。

夕食後に乳母が私の部屋にやってくると、メイドを介して知らせてきた。

あ~。
や~だ~なぁ~。
面倒くさいよ~。


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