弟を 雅な公爵令嬢に育てようと思う。

ママさん看護師

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看護師の知識を使って、看護過程を展開していきます。

【情報収集】悪いコはいねがーっ!!

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「…お父様!。お父様、このお面を着けて行って来て!!」

「えっ、何それ?。…って、うっわ、気持ち悪!!。え~っ…それって…」

父が、珍しく引いている。

私が渡そうとしたのは、ナマハゲの赤いお面だ。

前に、イタズラをする子供達に、ホトホト手を焼いていたスタッフから相談を受けた際に、作ってみた物だった。

ナマハゲとは「悪い子はいねがー!」「泣ぐ子はいねがー」と奇声を発しながら家に押し入り、イタズラする子供達や怠け者を脅して改心させる秋田県の鬼だ。

ちなみに、お酒をあげると帰っていくらしい。

それを思い出し、木を削って作ってみたのだ。



大分前に、このナマハゲのお面をかぶり、簑を着て、片手に出刃包丁を持って、もう片手に手提げ桶を持って、ノリノリで、

「うおぉぉぉぉぉ!!悪い子はいねがー!!」

と、奇声を発しながら、小児科病棟に押し入った。

そしたら、

「「「「「ぎいぃぃぃ~やあぁぁぁ~ー…っっっ!!!」」」」」

効果は、絶大だった…。

…いや、はっきり言って、絶大過ぎた…。

泣き出し逃げ惑う子供たちの他に、事前打ち合わせをしていたにも関わらず、スタッフ達までが、本物のナマハゲだと思って泣きながら逃げ出す始末。

辺境警備隊まで出動して、あわや殺されそうになった(返り撃ちにしちゃったけどね)。

あまりにも効果絶大過ぎて、その日からイタズラは激減したが、夜中泣き出す子供がいれば、熱を出したり、オネショをし出す子供が続出。

そして私は、関係スタッフ一同から、正座で三時間ほど説教を食らった。

どうやらこちらでは、ナマハゲは"人喰い亜人"ってやつにソックリらしい。

…知らなかったんだもん!仕方ないじゃないのさっ!!。

と、責任転嫁を試みるも、悪ノリした悪い子は私です。
はい、ごめんなさい。




「う~わぁ…。気持ち悪い程リアルだね…。
え~…やだなぁ…。
ねぇ、他にはないの?」

「ありません」

と、言いながら、お面とみの、刃を潰したドデカイ出刃包丁を渡す。

「え~…」

父は嫌そうにそれらを受けとると、嫌々ながらに身に付けた。

「着たよ。…どう?」

「完璧。どっからどうみても、人喰い亜人ナマハゲだよ!」

「うぅ…っ。嬉しくない…」

「しゃんとしてよ、お父様!。
猫背の魔物なんて、恐さが半減するじゃないの。
それから…、」

空を見た。
太陽が、だいぶ西に傾いてきている。

「もうすぐ、日が暮れる時間ね。
なるべく人目に付かない様に、暗闇に乗じて行動してね。
あと、これも持って行って」

と言いながら、蓋付の手提げ桶を渡した。

「コレは?」

「豚の血」

「血ぃ!?」

「うん。そう。
マリア婦人を見つけたら、その部屋にその血をぶちまけて。
あと、これをばらまいて」

「これは…、髪の毛?」

「うん。あの少年の髪の毛だよ。
マリア婦人と同じ色でしょう?」

「…そうか!。
あたかも、人喰い亜人に襲われて、喰われたかのように見せるんだね!!」

「そう!。
そうすれば、お父様がマリア婦人を連れ去ったとは、誰も思わないでしょう?。
状況証拠をみて、喰い殺されたと疑わない周りの人達も、マリア婦人を探そうとはしないはずだし。
追っては、免れるはずだよ!。
それに、喰い殺されたとなれば、死亡届けが国に受理されて、アーデルハイドは改めてネメシスって人の正妻になれる訳だし、労せず万事解決でしょ!」

「成る程!ハイド、あったま良い~!!」

「ふっふ~ん♪」

「じゃあ、いってくるね!」

「は~い、行ってらっしゃーい!」

スキップしながら暗闇に紛れ行く姿ナマハゲを見ながら、私は思った。

「…なーんてね。
そう、上手く行ければ良いんだけどねー」

父を見送った私は、テンションを元にもどすと、何事も無かったかのように感染病棟に戻りながらそう呟き、ペロッと舌を出した。

物事は、そう、上手く行かないのが世の中の常なのだ。

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