ゲイの俺が、同性愛という概念がない世界に勇者として召還されました

うましか

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クウガ+α 知り合いに会う

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「ーーあっ、悪い。突然だったな。オレはステン。ティムっていうのはオレの甥っ子で、さっき王都に侵入したギュレットの友達なんだ」

 ステンの声が耳に届く。


 どうする、俺。振り返るのか? 振り返られるのか?

 俺は深く息を吸う。
 考えろ。考えろ。でも時間をかけるな。怪しまれる。

 気配は消すな。絶対に。
 この人は、気配を察知するのに長けている。週に何日も気配の修練を積んでもらっていたんだ。下手に隠そうとすれば、この人には気づかれる。
 そういうことをずっとやってきたんだ。

 ならば、どうする。俺は何をすればいい。

 ーーそんなの、決まっているだろう。


「あっ、そうなんですかぁ~。そういえばさっきの男の子もそんなこと言ってた気がしなくもないようなぁ~」


 思いっきり演技ぶりっこすることしかない。

(※クウガが話しかけられて返答するまでかかった時間 0.2秒)

 あ、シャンケがドン引きしてる。凄い顔でこっちを見てる。
 声には出してないが表情が言っている。「気持ち悪いっぺ」と。
 お前、絶対後でぶん殴る。

 振り返ったら、やはりステンがいた。
 ギョッとする顔で俺を見ていた。

「でもあたし~、さっきまで街に買い物してたからよくわからないんです~」

 無駄に語尾を伸ばしながら、シャンケに向かって「ねぇ~」と首をかしげた。

 何故こんなぶりっこ風にしたのか。
 今までただの敬語で話してたんだから、普通の敬語だとバレる可能性高いからだよ。

 もうあえて違和感ゴリゴリの言い方にしてやらあ。

「あ、そ、そうか」

 ステンまでちょっと引いてる。
 くそう、死にたい。

「あたしたちも今から王都の方に帰るので、そのときに探してみますねぇ~」
「ちょっと待ってくれ」

 引き留めるなよ。帰らせてくれよ。
 俺もこの口調しんどいんだよ。のどが辛いというより、精神がしんどい。
 だがそんなこと思っていると感づかれてはならない。

「はい、なんでしょうかぁ~」

 ああああああああ、もうヤケじゃ。このキャラで通す!
 ウザイと思われるくらいが、ちょうどいいわ!

 するとステンは2枚の紙切れを渡してきた。
 シャンケがそれを受け取り、中身に目を通す。俺もそれを覗き込めば、そこにはティムとギダンの似顔絵が描かれていた。

「その2人組、オレの甥っ子とその友達。見つけたら街まで連れてきてくれないか? その、できたらの話でだ」

 ステンが申し訳なさそうに頭を下げた。だが微かに顔色が悪い。
 そりゃそうだ。ステンにとって数少ない家族が王都に不法侵入してしまっているんだ。こう言ってはあれだが、ステン自身が王都に忍び込んでもまったく不思議ではない。本能のままに動くときあるしなぁ。

「まだ陽が出ている内は、さすがのオレもどうしようもないしな」

 いや、違う。この人、王都に忍び込むつもり満々だ。
 暗くなったら侵入する気満々だ。

 ・・・・・・ティム、頼むから早く帰ってやれ。お前の兄ちゃん(実際はおじさん)が不法侵入しちゃうから。

「わかりました。王都に入ったら注意して見てみます」

 シャンケがステンにそう告げる。
 するとステンが安心したように息を吐いた。

 そして何故か俺の方を見て、考え込むような仕草をしている。
 な、なななな何だよ。バレたのか。いやいやいや、落ち着け空閑海人。まだそうだと決まったわけじゃねぇだろ。

「お兄さん、どうしたんですか~。あんまりジロジロ見られると、あたし照れちゃう~」

 キャハ、とハートマークを飛ばす勢いで甲高い声をあげた。
 するとシャンケが俺の腕を掴んで引っ張った。
 そしてステンから少し離れると、耳のそばで話しかけた。

「マジでオメー、それやめろ。キモイっぺ。見ろ、この鳥肌を」
「うるせーよ。俺だって、この袖の下鳥肌になってるわ。こっちはガチで命かけてんだよ」
「ぶりっこは命がけですることじゃねぇっぺな!? その気概があんならせめて、オラたちのもとから逃亡するとか、そういうことに使えっぺ」
「安心しろよ、そういうつもりは一切ねぇからよ」

 アトランさんから逃げられるとは思ってねぇし。
 それに俺の能力のことを知っているシャンケがいるんだから、逃げるのは難しいだろう。

 ってか、そろそろ帰らないとマズいだろ。
 アトランが帰ってくるまでに、買い物を済ませないと。
 これ以上時間かけるわけにはいかない。
 ステンには悪いが、そろそろ別れの言葉を。

「あのさ」

 そう思っていたらステンが話しかけてきて体が固まった。
 ステンの指が俺を指している。

「その荷物、重くないのか?」

 そして口にした内容に、ステンが指しているのが俺ではなく俺の持っている荷物だということに気づいた。
 ・・・・・・うん。ぶりっこ女子の両腕に、大量の荷物の入った袋があればそりゃ目立つわな。

「いいえぇ~。ちょっと重いけどぉ、あたしがんばりますからぁ~」

 だから気にせず帰らせてくれ。実際そんなに重くねぇんだよ。
 俺の言葉にステンがふっ、と笑いかける。

「あまり、無茶するなよ」

 その言葉は、ステンのそばで修行していたときによくかけられていたものに似ていた。
 出会った頃は怖い印象だったステンだが、接していく内に1番俺の身を心配してくれた。唯一教えるときに回復魔法を使用しなかったからかもしれない。教えてもらった日々が遙か昔に思えてしまった。
 そんな感傷にふけてしまったからか、心臓がチリッとした。

「ーーありがとうございます」

 だから無意識に言葉が漏れ出てしまった。
 俺の声を聞いたステンが目を丸くする。

 そんなステンの反応に、俺はハッとした。
 ヤッベ! 普通に素の声が出ちまった!

「あの、あの、その、し、失礼しますねぇ~」

 そう言って慌てて逃げ去った。
 マズい。限りなくマズい。バレたかもしれない。
 両腕の荷物がガサガサと音がしているが気にする余裕などなかった。

 背後から誰かが追いかけてくる気配がして振り返れば、シャンケが必死の形相で俺を追いかけていた。
 ステンが追いかけてこないことを確認するとスピードを落としていく。いつの間にかあまり人目につきにくそうな場所にたどり着いていた。
 追いついたシャンケは荷物を地面に置いて荒くなった息を整えていた。

「オ、オメー、ひとりで、勝手に、行っ、てんじゃ、ねっぺ」
「悪い。思わず逃げちゃった」
「思わずじゃ、ねぇっぺよ」
「ごめーん☆」
「可愛い子ぶっても無意味どころか、怒りが増すだけっぺが」

 シャンケがにらみつけてきた。
 なんだよ。せっかくサービスしてやったのに。

 それより、今のはバレたかなあ。微妙なラインであると信じたい。

 もう帰ろう。本当に帰ろう。これ以上街にいるのはマズい。





「おい」

 呼びかけられた声に「ひいっ」と小さな悲鳴をあげてしまう。
 そしてその方を見れば、見慣れた姿がそこにあった。


 ロッドである。


 何でこう久しぶりに外出すると、知り合いばっかに会うんかねぇ。
 俺、何か悪いことしたのか? それとも前世に悪いことしたのか?

「さっきギュレットって子供と街に入ったってのはあんたたちでいいのか?」

 何でこう話しかけられるかな? ギュレット助けたのは間違いだってのかよ。
 もう失言したくなくて、顔をそらして無言を貫く。対応はすべてシャンケに任せた。

 だがロッドは何を思ったのか、俺の顔を凝視して口を開く。

「ーーもしかして、クウガか?」

 その言葉を理解するのに、数秒かかった。そして異様な物を見るような目でロッドを見る。
 ロッドも俺の姿に目を見張ったが、すぐに心底イヤそうな顔つきになる。

「お前、なんつう格好してんだよ。男が好きって、つまりそういうことなのか?」
「違ぇよ。うるせぇよ。好きで着てんじゃねぇよ」

 キッとにらみつける。
 バレたのなら演じる必要はない。俺が出せる低音で脅すが、ロッドに効くはずはない。ロッドは怯むことなく、「うーわー」と俺の姿を頭のてっぺんから足先まで見つめた。

「正直、似合いすぎて何の面白味もねぇな」
「悪かったな。笑いもとれなくて」
「まぁ、お前の今の姿なら、この国と帝国の男なら惚れそうだよな」
「それちょっと前に、そこの男に言われたわ」

 そう言ってシャンケを指す。
 ロッドが俺の指す方を見ると、シャンケが恐怖に声をあげた。

「あ”ぁ。テメェ、何もしてねぇのに悲鳴あげてんじゃねぇよ。周囲に勘違いされるだろうが」

 シャンケの反応が気にくわなかったのだろう。ドスのきいた声を発しながらシャンケをにらみつけている。

「し、ししし、しかしですね。そっちの、ガ、ガラが悪いんじゃないんですか?」

 ブルブルと震えるシャンケだったが、居丈高に言い返していた。
 シャンケの言葉にロッドの機嫌がさらに下降して雰囲気が悪くなる。シャンケは俺の肩を掴むと俺の背中に隠れた。しかし俺よりずっと高身長なので隠れきれていない。
 そんなシャンケの姿に呆れたのだろう。会話の矛先を俺に向けた。

「おい、こいつ何なんだよ」
「魔導師のシャンケ。今俺がお世話になってる人たちの1人」
「やっぱりな。何か無性に腹立つと思ったら魔導師かよ」

 ロッドは鋭い視線をシャンケに向けるが、シャンケは俺に隠れているのでその視線を受け止めることはなかった。
 そうだった。騎士と魔導師、それと神官って相性最悪だった。
 ロッドとサヴェルナも口喧嘩してたしな。シャンケはサヴェルナに一方的に惚れてるけども。

「ってか、お前にもいろいろと言いたいことがあるんだよ。むしろいろいろと言いたいことがありすぎて、何から言えばわかんねぇ」

 そしてロッドは俺を見る。

「まず、何だよその姿は」

 それから聞くんだな。そりゃ気になるだろうけども。
 俺はヅラがずれない程度に頭を指でかいた。

「俺だってやりたくてやってるわけじゃねぇって。アトランさんーー俺を引き取った魔導師の人が不在中の間、他の魔導師の人たちが面白がって俺を女装させて買い物に行かせたんだよ」
「魔導師の連中の思考回路、どうなってんだ?」
「現状に関しての話なら、俺もそれに同意する」

 いや、本当。何で俺女装させられてんだろう。
 そもそも俺を出すのって本当にマズいんじゃねぇの。アトランにバレたらマズいんじゃねぇの。キュルブと女魔導師たち、普通に楽しんでたけどさ。
 何度も言うようだけど、ゲイでも女装はしない派のゲイだからな。

「わかったよ。とりあえずこの件はいったんここまでな」

 俺の気持ちをどう汲み取ったのかは知らないが、ロッドはそれに関してこれ以上話を進める気はなさそうだ。
 ただ俺の雰囲気からして、心底嫌がっているのは把握してくれたんだろう。
 だがロッドは眉間にしわを寄せながら、俺を見下ろしている。




「お前さ、何で魔導師の連中のところに行っちまったんだよ」

 その言葉に苛立ちが込められている。その視線が俺を責めている。問いただしているとかじゃない。一度だけ俺を殴りかかったときに近い怒りが放たれている。

「お前が決めたらしいじゃねぇか。お前が魔導師の連中に着いていくって決めたんだってな。ちょっと勝手すぎるんじゃねぇか?」

 これは、ガチでキレている。
 わかってる。今まで散々迷惑かけ続け、それなのにゲイだってバレた途端、アトランのところへ逃げてしまった。
 ロッドみたいに怒るのが当然だろう。

「わかってるよ。だから、もし会うことがあったら謝るつもりだよ。ゲイだってこともちゃんと自分の口から伝えて、それでも嫌われたらそのときだって」
「だからっ、それが勝手だって言ってんだよ!」

 とうとうロッドが怒鳴り散らした。シャンケが怖がって俺から距離をとる。
 そしてロッドは俺の両肩を掴んだ。掴まれた痛みに荷物を落としてしまう。

「謝るだ? 嫌われたらだ? お前はいつもいつも自分だけで考えやがって。ふざけんなよ。ムカつくんだよ。良い子ちゃんぶってんじゃねぇぞ」
「じゃあ、どうすりゃ良かったんだよ」

 痛みと向けられた怒りに、俺も思わずロッドをにらみつける。
 勝手なのはそっちだろうが。同性愛者っていう悩み、ロッドにわかるわけないだろうが。家族にも言えずに隠し続けた気持ちなんてわからねぇだろううが。

「知るか!!」

 だが俺の問いに、ロッドはそう言い放つ。
 この野郎、そっちから振ってきたくせに。

「知るか、だ? じゃあ言わせてもらうけど、今のロッドの怒りも俺にとっては知るかなんだけど。人のやることに口出しするほど偉いのかよ」
「じゃあ言い返すが、お前の行動でどれだけの人が心配してると思ってんだ。ーーああ、そうか。お前は偉いからいいのか。勇者サマだもんなぁ」

 ロッドの発言に俺のこめかみがひくついた。

「ロッド、お前俺を怒らせてどうしたいわけ?」
「別にどうもしねぇよ。言いたいことがあるから言わせてもらうだけだ。安心しろよ。本気で怒ってんのは俺だけだ。サヴェルナもガキたちも不満ではあるが、どっちかっていうとお前が心配故に苛立ってるだけだ。お前に教えていた人たちなんかは心配しかしてねぇよ。むしろ自分を責めてる。だから俺はお前を心配なんかしてやらねぇ。怒りしか湧いてこねぇよ」

 しかしロッドが発言の中で他者の話があがったとき、俺の怒りは萎んでいく。
 怒ってるのは、ロッドだけ? まさか。
 そりゃ心配かけたとは思っているけど、自分を責めるとかそんなバカな。だって俺が悪いのに。あの人たち、何も悪いことしてないのに。
 でもロッドの表情に嘘をついている様子は微塵も感じられなかった。

「そりゃ最終的に決めるのは自分だぜ。でも何もかも自分だけでやろうってすんのがおかしいだろ」
「自分だけって。俺、いろんな人に迷惑かけて」
「迷惑なら今だってかかってんだよ。現にギダンとティムが王都に入っちまったんだろうが。お前が心配で、会いたくて入ったんだよ」
「それは・・・・・・」
「なっちまったのは仕方ねぇけどさ。ってかギダンたちの件はあいつらが無鉄砲すぎるだけだけどよ」

 そう言ってロッドはため息をつく。若干、肩を掴む力が弱まった。

「クウガさ、俺よりほんのちょっと年下なんだろ。なら年上に甘えたっていいんじゃねぇの? ってかお前年上好きってことは、甘えたいって意味じゃねぇの? 甘えてわがまま言っていいんじゃねぇか? あ、俺は別としてな。お前に甘えられるのは気持ちが悪い」

 最後の言葉はいらなかったんじゃねぇの?
 心配しなくても、ロッドに甘えるとか無理だから。

 ん? 甘える?

 ちょっと待って。
 え、俺甘えたかったの? 確かに年上好きだけど、それは頼りがいのあるような姿形とか、年上特有の色気に惹かれたからじゃ。ちょ、ちょっと混乱してきたぞ。
 俺ってば確かに弟だけど。兄ちゃんが頼りなくて。だから頼りがいのある男に憧れて・・・・・・え、俺、甘えたいの?






「ロッド!! お前は何やってんだ!!!」

 突如響いた大声に、俺たちはビクッとする。
 悲しきかな。聞いたことある声パート3である。

「隊長!?」
「女相手に手、上げてんじゃねぇぞ。しかもその子、彼氏連れだろうが」
「はああああ? 違いますよ、勘違いしないでください!」

 ロッドが俺の肩から手を離し、声のした方に体を向ける。
 その先にいたのは、案の定ダグマルだった。
 ダグマルは俺とシャンケを見るなり首を傾げた。

「見ない顔だな。ギュレットを連れてきたっていう2人組って、もしかしてお前たちか?」

 ・・・・・・ダグマル、気づいてないのか?
 それじゃ、何でロッドは気づいたんだ?

「え、隊長気づいてないんすか?」

 ロッドも驚いてダグマルを見ていた。
 ダグマルは訝しんだ目でロッドを見る。

「ロッド。お前は女相手に暴力振るってどうするんだ」
「はああああああ? 女じゃないっすよ!」
「失礼なこと言ってんな」

 ダグマルは呆れながらロッドの頭を殴りつける。凄くいい音が響き、ロッドが痛みに頭を押さえてうずくまる。

「悪かったな。いつもはこんな乱暴なやつじゃねぇんだ。ちょっと虫の居所が悪くてな」

 そう言ってダグマルは俺とロッドを引き離した。
 このとき俺に一切触れずに誘導させるところなんかは、さすがだなとは思っている。
 紳士的ってこういう感じなんだな。

 そしてダグマルは俺が落とした荷物を拾い手渡してきた。
 俺は笑って、その荷物を受け取ろうと手を伸ばす。そしてダグマルの手と触れたときだった。

 ダグマルの目がピクリと動く。
 手渡されようとしていた荷物を受け取った瞬間に手をとられた。
 そしてその手のひらをマジマジと見つめられる。

 しまったと気づいたときには、遅かった。
 手のひらにあるタコの跡。ナイフや弓でできたものもあるが、1番多いのは剣でできたものだった。
 剣を教えてくれたダグマルが、気づかないわけがないのだ。



「クウガ、だよな?」

 ダグマルは真剣に俺を見つめていた。
 疑問符をつけているが、それは確信している言い方だった。



「・・・・・・・・・・・・はい」

 そう答えた俺の声は、とても弱々しいものだった。



+++

(ステンside)


 オレは頭を抱えた。
 さっきの少女の声と表情がクウガと被ったからだ。

「どんだけクウガに飢えてんだよ」

 思わずこぼしてしまった言葉に自己嫌悪が増していく。
 クウガが王都に行ってしまい、まったく会えない日々が続いていた。街に行くと、無意識に王都の方に視線を向けてしまうことが増えた。
 そしてオレはため息を吐くことが多くなったらしい。姉さんとティムから指摘された。

 情けないことこの上ない。好きなやつに会えないからってウジウジ考えこみやがって。そんなんだからティムが王都に忍び込んじまったんだろうが。
 ティムの運動神経なら王都で何かあったとしても問題ないだろうが、こんなこと姉に知られたらオレは半殺しに遭うのは確定だ。
 いや、今度こそ姉に殺されるかもしれない。



 オレはまたため息をついてしまった。
 さっきの女の子。背丈はクウガと同じくらいか。男としては小さいが、女ならばあの身長のやつなんていっぱいいる。なのにあの女の子の背中を見たとき、何故かクウガを思い出した。
 そして感謝の言葉を言われたとき、クウガの声を思い出した。

「オレ、もう末期なのかもしれない」

 姉がここにいたらオレの後頭部に跳び蹴りしていただろう。
 それより前の段階で姉に殺されているかもしれないが。

 ああもう、ティムをどうにか連れ戻さないといけないのに邪念が混じる。

「会いたい、んだよな」

 オレいつからこんな女々しくなっちまったんだろ。



 とりあえず陽が落ちるまでオレは何もできない。王都に忍び込むのは暗くなってからだ。
 さすがに今回のことに関してはティムを叱らなくてはいけない。


 でも。
 王都に入ったらクウガを見つけられるかもしれない。
 そう考えてしまう時点で、オレはいろいろダメなんだろう。
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